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14.出生の秘密

 鏡の中の私はメイクによって別人のようになっていた。そもそも普段はすっぴんだから、少しのメイクで印象が変わるのかも知れない。地味なラーラはいなかった。


 髪には良い香りのオイルが塗られ、半分おろしつつもサイドは編み込むという複雑で可愛い髪型になっていた。


「ドレス、似合ってるよ」


 迎えに来たジオが言った。

 

「こうなるとわかっていたのね」

 

 複雑な気持ちで睨むと、

 

「セオドア兄さんが言ったことは想定してなかったんだ、ホントだよ。ごめん」

「実は俺も混乱してる」


 セオドア様が部屋から出ないのは、一度に多くの人と会わないためだと理解した。晩餐には侯爵様のほかにセオドア様と上のお兄さんもいた。


 目にも美しく、美味しいはずの料理の味はわからなかった。


「決めたんだな」


 侯爵様がジオに尋ねた。侯爵様は口数が少ない人らしい。ジオが頷き、口を開いた。


「俺はラーラと生きていきたいと思うし、卒業したら平民になるつもりだ」


「!!!!!!」


 ジオの方を見る。何も聞いてない! でも、どうとってくれても構わないと言ってた。え? そういうことなの? 早すぎない?

 ジオは私と目が合うとバツが悪そうな顔をした。


「平民ね、そううまく事が運ぶかな」

 

 侯爵様がニヤリとジオに笑いかけた。こういう顔はジオとよく似ている。

 

「まあ、いいさ。公爵とは私の方で話しておくよ。

 彼もそろそろ娘と仲直りしてもいいはずだ」


 セオドア様を見ると全力で首を横に振っていた。


「簡単なことだよ。息子の付き合ってる女性なら調べるだろう。もちろん、驚いたがね」


(侯爵家コワイ)


「侯爵様は、私の両親をご存知なのですか?」

「君の母君なら少しね。詳しくはご両親に聞くといい。ペンドルトン公爵はいまだに養子を取っていないからね。とっくに許していたんだと思うよ」


 恐そうなのに、優しい口調で泣きそうになった。鑑定した侯爵様の情報には不器用、子供思いとあった。ジオがどう思っているか知らないけれど。


 デザートはいちごタルトで、少し気持ちが落ち着いたので、とても美味しくいただけて幸せだ。


 今日は泊まって行くといいという侯爵様の言葉には素直に甘えることにした。トランクは手元にないし、馬車だって自分で手配出来ないし。全てが仕組まれたようで釈然としないけど仕方ない。


 それに、お父さんとお母さんに聞くことが増えてしまった。今日はゆっくり考えたい。

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