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13.アシュワース侯爵家

 ジオに連れられて、奥へと進む。トランクは使用人が持っていったんだけど、どこへ!? 頭の中は混乱している。


「あの……ジオさんや」

「なにそれ」

「どこに向かってるの……?」


 ジオが吹き出した。


「2番目の兄貴を紹介しようと思って。俺の部屋の方がいいかな?」

「ジオ……の、部屋!?」

「はは、赤くなって、おもしれぇやつ」


 2階の角の部屋にたどり着いた。ジオがノックする。

 

「セオドア兄さん、いる? ジオだけど」


 ドアが薄く開けられた。

 

「前に話したラーラだ。部屋に入ってもいいかな」


 ジオがドアを開けるが、拒む感じはなかった。応接スペースに進んだ。セオドア様はじっと私を見たあと、手を差し出した。


 聞いていたけど、触れてもいいのか気になって、ジオの顔を見たら小さく頷いた。


 握手をしたら、セオドア様は小さく笑った。


「君はジオとお菓子のことしか考えてないんだね」

「な!! そんなはずは!」

「さあ、座って」


 椅子を勧められてジオと隣り合わせで座るけれど、恥ずかしくて顔が熱い。セオドア様には何が聞こえたんだろう。そして何が見えるんだろう。


「ジオからは平民って聞いていたんだけど」


 言いづらそうにセオドア様が私に目を向ける。平民が何かいけないの? そう思った時だった。


「君、ペンドルトン公爵家ゆかりの人だよね? ……もう少し詳しく言えば現公爵の孫だ」

「はぁ〜〜〜????」


 ジオも驚いた顔をしている。私の声はお茶を持ってきたメイドさんを驚かせ、茶器が割れる音が聞こえた。


 それから、ちょっと落ち着こうって言われて、別のメイドさんに『侯爵様からの晩餐のお誘い』を伝えられて、さらにパニックになったところに、


「父さんが在宅してるかわからなかったから伝えなくてごめん、ドレスはあるから着替えてきて」


 と、ジオに言われてもう頭が真っ白になった。また別のメイドさんが来て別室に連れられると、されるがままにドレスを着せられ、メイクもされた。

 ドレスのサイズはピッタリで、色は私の瞳のような明るい水色だった。


 私はセオドア様と話したり鑑定したりしに来たんじゃなかったの? 鏡を睨みつけるように鑑定をかけたけど、自分の情報は見ることが出来なかった。鏡越しじゃだめなの? 今まで試したことがなかったけど、がっくりと落ち込んだ。


 ちなみにセオドア様のアビリティ情報としては、『視界に入ったものの情報が見える』『接触したものの思考が聞こえる』とあって、いつでも見えるなら視界の邪魔だし、人がたくさんいるところだと鬱陶しいだろうなぁと思った。世界に情報があふれている。


 部屋の調度品の数が少なめなのはそのせいなのかも知れないと、回復してきた頭で思い至った。

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