12.冬休み
冬休みになった。特別に頼んでいる子以外は食事が出なくなるので、大抵の子は家に帰る。
私はトランクを抱え女子寮の入り口にいた。私の他にも待ち人がいる人が立っていたから、ほどなくして男子生徒達がやってきた。
荷物を持ってあげる男の子の矢印は女の子に向いてなかったりする。これがお貴族様なんだなぁと苦い気持ちになった。
ぼんやりと人の頭をながめていたら、ジオが行くぞと荷物を持ち上げた。学園の入口付近に馬車がいるらしい。そう言えばジオの家ってどこだったかしら。首都にはあるわよね?
「迷ったんだけど、ランチは途中で食べないか? その方が気が楽だろ」
そうして着いたのは、首都でも郊外の閑静なところにある小さなお店だった。
「んんー! 美味しい」
鶏肉の香草焼きにナイフを入れる。
「ここは、叔父がやってる予約でしか食べられない店なんだ。急に来たから、鶏肉しかなかったらしいけど口にあって良かったよ」
「こんなに美味しいの食べたことないよ」
そんな話をしていたらコックコートを着たシェフがやってきた。
「フェルジオードの叔父でオーナーシェフをしてます。今日は来てくれてありがとう」
「おじさん、急なお願いを聞いてくれてありがとう」
「それにしても、可愛いお嬢さんといっしょとは隅に置けないな。これから家に帰るのかい?」
「うん、連れて行く予定だよ」
「ふぅん」
叔父さんは意味深に笑って、雑談を少し交わしたあと、鼻歌を歌うように厨房に戻っていった。
「やさしい雰囲気の叔父さんね」
「父さんの2番目の弟なんだ」
「要するに三男?」
「そう、俺と同じでね。父さんが家を継ぐときに平民になったんだ」
「なるほど?」
前に卒業したら平民になるとかジオも言ってたなと思い出した。と言っても貴族よりお金持ちな人も増えた昨今では、爵位を継ぐことでどんな仕事があったり、恩恵があったりするか私はわからない。
「平民なら好きな人と一緒になれていいじゃない。そりゃ自分で身を立てるってのは大変かも知れないけど」
「ラーラはそう考えるんだな」
「学園から出るとき見えたんだよね。婚約者を迎えに来た男の子たちの矢印が、ぜんぜん違う方向へ向かってたりしたんだよね」
「まあ、そういうこともあるかもね」
相槌を打つジオも寂しそうだった。
美味しいお料理を堪能したあと、私達はジオの家に行った。オーピリアの中心から少し離れているものの、お城のような大きなお屋敷に圧倒されるしかなかった。
ワンピースを買ってもらっていて良かったと思わずにはいられなかった。




