10.勉強会
「改めて紹介するよ、B組のエリオット」
「よろしく」
緊張してるエリオットくんを見て私は気づく。エリオットくんからミネアに矢印が見えたからだ。思わずエリオットくんを凝視してしまった。
ジオが片眉を上げて声をかける。
「なんだ、ラーラはエリオットみたいなマジメな感じが好みだったのか?」
「そうじゃなくて……」
「いつものが見えたの?」
小声でミネアがいうので小さく頷いた。
「いつか、教えてくれるんだよな」
圧のある声で言われた。
「……えるの……」
「え?」
「私、人の好感度が見えるの! 誰が好きか矢印で見えるの……」
とたんにエリオットくんが真っ赤になった。ジオは驚いた顔をしたあと、思い出して納得したようだった。
「俺の矢印は……」
「見えないわよ!」
「そうだったな」
笑っていた。ジオは笑ったがエリオットくんは笑えないだろうなぁ。とりあえず、あまり人には言わないでほしいと口止めした。恥ずかしいから!
それから気を取り直して、勉強会をした。エリオットくんは見た目に違わず、どの科目も得意なようだった。
今日は魔法歴史学とエール語を教えてもらった。薬学まではたどり着かなかった。と言っても、あれのテスト対策は殆どがレシピをひたすら覚えるだけだ。頭がパンクしそう。
「オマエら、よくこの学園に入学できたなぁ」
「平均くらいよ! あなた達の頭がいいだけじゃない」
ジオは、貴族なだけあって入学前にほとんどの勉強を終えたらしい。体術と剣術もやったとか。のんびり生きてきた私とは大違い。
エリオットくんは、首都オーピリアの中にある商家の出身で。特に数学と経営学に興味があるけど、勤勉でどの科目もしっかり勉強しているそうだ。
12歳としては、私達の方が普通だと思うけどなぁ。ミネアは6月生まれだから13歳だけど。
楽しかったなと思いながら、寮に戻った。夕食は寮の食堂で、皆同じものを食べる。今日は生姜焼きだった。東の国の料理を取り入れたのだったと思うけど、甘くて少しピリッとした風味のあるお肉がとても美味しい。
ミネアとお茶を飲んでいるとアレクシアがやってきた。
「家から連絡があったの。アシュワース様からの警告はあったけれど、フランネル様との婚約は継続しているわ。言わないでくれてありがとう。私が悪かったわ、ごめんなさい」
驚いた。根っからのお嬢様なんだな、と思った。
「特に怪我をしたとかじゃないから、気にしていないわ」
最近じゃミネア以外に声をかけてくれる人はいなかったので、ちょっと嬉しくなった。
「この機会に仲良くしてくれると嬉しいわ。私は平民だけど」
頷いた笑顔のアレクシアが可愛かった。




