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1.ハートの行方

「うわぁ、えげつなーい」

 

 視線の先では、魔法のバトルが行われていた。アビリティドリンクという景品をかけた争奪戦。年に数回行われるソレは、希望者が参加して行われるもので、私はいつも2階にある手すりにもたれながら、単眼鏡を持って高みの見物だ。

 

「あの銀髪の子、赤髪の子のことめっちゃ殴るんやん。好きな子だとやり返せないよね〜」

「それか、殴られるのが癖だったりして。いやーん」


 ひとりで実況しながら見ている。いつ見ても人間模様はドラマティックで面白い。

 

 実は私、ラーラ・ミレミアスには、人の好感度が見えている。さっきの赤い髪の男の子から銀髪の女の子に向けての好感度が、矢印とハートマークで見えるのだ。

 

 その能力を得たのは、7ヶ月前のサクラの季節、この学園――オリュンピアス魔法学園に入学した日に遡る。


 出生時に魔力の素質ありとされた者は、中学に上がる12歳で、マインズと呼ばれる能力を覚醒させるドリンクを飲む。マインズでは素質由来の能力が覚醒すると言われていて、アビリティドリンクでは確定のサブアビリティが得られる。


 私は、なんとエリートが通うオリュンピアス魔法学園に合格した。

 そして入学式のあと、個室に呼ばれてマインズを飲んだのだ。飲んですぐはなんの能力かわからなかったけれど、メイド姿の職員さんの頭上から、書紀をしていた男性に向かう矢印が見え、思わず言ってしまった。


「先生はあちらの男性が好きなのですか?」


 それからは大騒ぎ。すっ飛んできたメイドさんが私の口を塞ぎ涙目になっていた。


「あなたの能力は鑑定ですが、とても危険です!

 いえ、殺傷力はないんですけど、ダメージが強いといいますか、あの……」


 涙目のメイドさんは気の毒なほど狼狽えていた。


 今にしてみれば笑えるのだけれど、当時は一緒に慌てちゃったわ。

 私はまた遠くを眺めて、面白そうな矢印を探す。


「あらやだ、あの黒髪の子と金髪の子ってほんとにデキてるの? 特殊な性癖の女の子たちがいつも騒いでたけどタッグを組んで両想いだなんて……ふぐぐ」


「なんか面白そうな事言ってるなオマエ」


「ひょえっ!!!」


 急に耳元でかすれた声が聞こえた。


「びっくりするじゃない!?」


 振り向くと、そこには黒髪を後ろで結んだ、エメラルドを嵌めたような瞳の男の子が、したり顔で立っていた。


 イケメンだけど、チャラそうだわっ!

 私は普通に鑑定した。


 のだけど、ハートの矢印どころかほとんど何も見えなくて、目をぱちくり、口はあんぐりとアホ面を晒すことになったのだ。

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