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歯医者は痛いよ、どこまでも  作者: 双鶴


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4/6

4話

保健の授業は、いつも退屈だった。

でも今日は違った。先生が言ったのだ。


「今日は、歯の健康についての映像を見てもらいます」


その瞬間、教室がざわついた。

男子校の中学1年生たちは、“映像”という言葉に敏感だった。

戦争映画か?人体の不思議か?恋愛ドラマか?


いや、違った。


スクリーンに映ったのは、歯。

どアップの歯。

そして、その歯にこびりついた、灰色の何か。


「これは歯石です」


先生の声が、妙に冷静だった。

タケルは、息を飲んだ。


(これ…ホラーじゃん)


映像は、歯石を削る様子を淡々と映していた。

器具が歯に当たり、ガリガリと音を立てる。

歯茎から、うっすら血がにじむ。


「うわ…」

「えぐ…」

「これ、昼休み前に見せるやつじゃないだろ…」


教室のあちこちから声が漏れる。

でも、先生は止めない。

むしろ、誇らしげだった。


「歯石は、放っておくと歯周病の原因になります」


タケルは、スクリーンを見ながら思った。

(俺の歯にも、あれ、あるのかな…)

(てか、あれ、どうやってできるの?)

(俺、昨日ポテチ食べて歯磨きサボったけど…)


不安と嫌悪と、なぜかちょっとした罪悪感が混ざって、胸がざわつく。


映像は、さらに進む。

歯石が削られ、歯が白くなっていく。

でも、その過程が、どうしても“痛そう”に見える。


タケルは、目をそらした。

でも、耳は音を拾ってしまう。

ガリガリ。ガリガリ。


(俺、もう歯医者行くしかないかもしれない…)


その瞬間、隣の席の友達がつぶやいた。

「俺、歯石除去されたとき、涙出た」


タケルは、思った。

(それ、痛み?羞恥?それとも…なんか、人生の後悔?)


授業が終わる頃には、教室全体が沈黙していた。

誰もが、自分の口の中に小さな恐怖を感じていた。


タケルは、帰り道で決意した。

(俺、クリーニング行こう。彼女ができる前に、口臭で終わるのは嫌だ)


でも、歯医者の予約を取るのは、やっぱりちょっと怖かった。


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