時計塔の告発
俺たちはすべての証拠を先生に提出したあと、見つけたこと、聞いたこと、そして真実を世間に出した。後日証拠は警察に渡された。先生が旧校舎を見回っていたところ見つけたということになったらしい。時計塔に侵入したりしたことはまだバレていない。
次のニュースです。
私立常聖学園中学高等学校で殺人事件がありました。逮捕されたのは樋口双葉容疑者です。殺害されたのは化学教師の牧村幸一さんです。高血圧による脳卒中だと考えられていましたが、監視カメラの映像から被害者の弁当箱や水筒に塩を入れる様子が確認され、殺人罪として逮捕されました。また、過去の事件にもかかわっているとの通報も確認されました。被害者は藤澤美咲さんで時計塔から転落し、死亡したと判断されていましたが、容疑者により、数人の人物が関わっているとの証言、そして学校関係者からの証拠提示、そして学園の運営費の横領など、新たな真実が明かされました。容疑者は”横領に気づかれて殺した。被害者も関わっていたが、それを世間に出そうとして殺した。高血圧を利用して殺せばバレないと思っていた。”と証言しています。続いてのニュースは…
「終わったな。」
「終わりましたねー。」
「まさか、こんな大事になるとは思ってなかったわ。」
「でも、結局あの手紙は誰からなんだ?」
「多分、有馬さんよね。」
「でも、どうやって届けたのでしょうか。」
「それは…」
「ありがとう。宏太。手紙を届けてくれて。」
「どういたしまして。でも、おじさんはまだ藤澤さんのこと好きなの?」
「ああ。一生大切にするって約束したからな。」
「恋っていうのはそういうものなのか。まあ、またね。」
「ああ。ありがとう。また。」
電話を切り、テレビをつける。丁度、あのニュースの時間だ。
美咲が殺されてから、何年も彼女のことばかり考えてきた。事件のことについて調べたり、彼女の言動、行動、すべてを思い出しながら。美咲が死んですぐのこと、誰かに背中を押され、事故にあい、失明した。ただただ泣いた。彼女の写真を見ることすらできない。彼女の残した手紙を読むことも、その筆跡を見ることも、事件を解決することもできない。私の兄の子、宏太が私の母校に入学したと聞いて、チャンスだと思った。私はもう事件を解決することができない。すべてを託そうと思った。しばらくして、近所の探偵の子が後輩になり、仲良くなったと聞かされた。4人で探偵組というものを組んでいるらしいではないか。宏太を通じて、その4人に手紙を渡してもらった。無事、事件は解決した。学校関係者からの証拠提示。表向きは教師が発見したものとなっているが、おそらく探偵組とやらのおかげだろうな。感謝しないといけないな。私の代わりに事件を解決してくれてありがとう。
彼女の意思を継いでくれてありがとう。
そして、私の復讐を果たしてくれて。
テレビを消し、夜ご飯を食べる。その日の夜、私が唯一使える機械、タイプライターで遺書を書く。感謝と謝罪の言葉。そして、縄を天井を支える柱に結び付け、先を輪のようにして、そこに首を通す。大丈夫。美咲、すべてが終わったよ。何年もかかったけれど、告発することができた。私の心残りはもうない。すぐにそちらに行くからね。
「それでな~」
「うそ~?陽斗それほんと?」
「それ、とっても面白そうですね。」
「今度みんなで行こう!」
いつもの通学路。西日が純白のシャツを、肌を、オレンジに輝かせている。仲良く話しながら歩いて帰る、4人の姿が窓の外に見える。