第6.5話 閑話休題
ミサキ達が次の島にたどり着いた時には、もう日は傾き、西の水平線へと沈みゆく所であった。それにしても今度の島はずいぶんと大きい。シオ爺曰く「この凪浦群島で一番大きい島じゃよ」との事だった。
ここには島守以外にも住人が暮らしており(凪浦の町ほどではないものの)小規模な港と集落もあるという。
「ようこそ、いらっしゃいました」
ミサキが舟を降りると、桟橋で待っていた若い女性が言った。おそらく彼女がここの島守なのだろう。それともここの住人だろうか。……ふとそんな疑問が頭をかすめたが、ミサキにはひとまずそれより先に解消したい問題があった……。
「……あのぉ、上陸早々すいませんが……お手洗い、どこですか?」
実は彼女、少し前から催していたのだった。しかし小舟の上だしシオ爺もいるしで、どうしようもなかった。
「ああ……!」
この様な事態には慣れているのか、島守の女性はすぐに察して、ある方向を指し示して言った。
「……あちらです。ご案内いたしますね……」
……その晩、島めぐりの旅人用宿舎で、ミサキは昨夜にも増して夕食をたらふくご馳走になり、良い気分で眠りに就いたのだった……。
― ― ― ― ―
……ぐっすり眠って、さてその翌朝、妙に喉の渇きを覚えて目覚めた。
「……うわっ!? 何これ……一体どうなってんのぉ……っ!?」
……驚いた。なぜか有り得ないほど大量の寝汗をかいていたのだ。ちょっと大袈裟に言うと、まるで水に落ちたぐらい全身びしょ濡れになっている。昨夜がそんなに暑かった記憶も無いが……朝一でシャワーを借りる羽目になった。
「この島に来てから何か色々おかしいなぁ……一体どうなってんのぉ……?」
一方、体調はすこぶる良かった。なぜだろう……? 朝食の後、その疑問を島守の女性に尋ねてみると説明してくれた。
「……ええ、それは恐らく一つ前の島で、あなたの身体の中に良いエネルギーが流れ込んだためです。それで、元々身体の中にあった老廃物や淀んだ気が押し出される形で体外に排出されたんですよ」
「……つまり、デトックス作用みたいなものですか……?」
「……はい、同じような状態になった方はこれまでにも沢山いらっしゃいました。どなたも体調の方には問題無く、非常にスッキリしたと喜んでおられましたよ」
「なるほど……」
言われてみれば、そういうものかも知れない。女性は言った。
「それでは、この島の遺跡にご案内いたしましょう」
「そう言えばまだ聞いていませんでしたね。ここのはどんな遺跡なんですか?」
「いわば『自身を探求する路』です。これは取り組む事によって、そのまま次の島への途になります」
「どういう事ですか?」
「実際にご覧になっていただければ解りますよ。さあ、こちらへ……」