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深山真央のプロローグ

はじめまして、黒田あきと申します。文章が拙いところがあると思いますが、何卒応援していただけるとありがたいです。

 春にさしかかった頃の冬、キーンコーンカーンコーンと、機械音が学校を覆い尽くした。

 「……では、授業を終わります。一年間長かったですが、ありがとうございました」

 数学の教師は、早々に別れの挨拶をし、出ていってしまった。

 「……はあー!」

 この小山高校、三年一組のクラスメイトは六時間目が終わった喜びからか、もうあと少しで卒業してしまう未練からか、毎日のように六時間目が終わったあと、大きなため息をつく。そして、ホームルームが終わったあともその感情は残るのか、今までやり残したことを解消するかのように皆学校に残ったり、遊びに行ったりしていた。

 その点私も、この三年間友達はできなかったが、最後の時間を噛みしめるかのように放課後図書室に入り浸り、今までに読んだことのない本を読んだりしていた。

 (……もうこんな時間か)

 いつのまにか時計の針は最終時刻の五分前である十七時二十五分を指していた。そして、私は読み残した本を借り、憂鬱感を胸に学校をあとにする。外はまだ肌寒く、ビューと冷たい風が通り抜ける。

 「……ただいま!」

 白色の年季が入った自宅に帰り、さびがある古びた黒色のドアを開け、わざとらしく大声で言う。しかし、返ってきたのはコンクリートと鉄筋の冷たい音だけだった。オレンジ色のあったかい光が漏れた奥の部屋では、ドア越しに母と父、弟の談笑が聞こえる。

 (……まあ、そうなるよね。今までずっと無視されてるもん)

 私の両親と弟は、腫れ物を扱うかのように私の存在をなかったことにする。原因は自分でもわかりきってる。でも、あとちょっとで私がいなくなるから話してくれるって期待してたのに、現実はその期待をガラスのように砕け散らせた。

 私は二階の自室に行き、内職で貯めたお金で買った総菜を食べたが、今日は特に味がしなかった。総菜を食べ終わったあと、大きいため息と同時に、大粒の涙が頬を伝う。ああ、まただ。突然抑えきれない感情があふれて泣いてしまうことがよくある。子供の頃は普通に愛されてた。だが、私は周りの環境に馴染むことが苦手で、外に行ったり、誰かと話すだけでパニックや癇癪を起こしていた。そんな私に疲れて愛想が尽きたのか、両親は弟を作り、コミュニケーション能力が高い弟を愛すようになった。そして、小学生に成長した私は、次第に運動や勉強が周りの人と劣っていることに気づいた。

 「なんで真央は何もできないの?」

 ある日、幼い頃の弟にそう尋ねられたことがある。反対に文武両道で何でもできる弟はそんな私のことを疑問に思ったのだろう。私は何も答えることが出来なかった。そして、その次の日の朝、偶然朝早く目覚めた私が一階にいったとき、母は幼い頃の弟にぽつりと言ったことを覚えている。

 「お姉ちゃんはね、あなたと違うの、だから、そういうものと思って向き合ってあげて」

 母の顔は、目にクマがあり、青白く、少し眉毛をつり上げていたことを今でも覚えている。そして、次第に母、私に無関心だった父は、私の存在をなかったことにした。弟も、その空気を感じ取り、同調するようになった。私は今でも周りの環境に馴染んだり、誰かと話すことが苦手だ。そのせいで高校でも友達ができなかった。

 (私は他人に迷惑をかけるだけなんだ)

 母のあの顔が脳裏に浮かぶ。

 (どうせ、いないほうがいいんだ)

 突然泣いてしまうとき、いつもこの思考になってしまう。そして、普通のときでも、この思考が駆け巡るときがある。涙が止まらない。どうしたらいいんだろう。突然、眠気が押し寄せた。体が地面に引きつけられるかのようにベッドに倒れ込む。まだ寝ちゃだめだ、まだ、やることが残っているのに…しかし、この睡魔には抗うことはできなかった。

 「……よろしくね、深山真央」

 誰かが私の名前を呼ぶ。景色が真っ白で何も見えない。

 「…ったは、誰!?」

 「………………」

 必死に叫んだが、その人物はそれ以上口を動かすことはなかった。

 「………………ぅ」

 重いまぶたを上げると、知らない天井、知らない部屋が見える。体が苦しい。今何も考えられない、何なの……!? 頭の中で叫ぶが、だんだんと意識は遠のいていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。励みになります。

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