第二十六話:レインボーカード
レインボーカードを拾った。簡易鑑定不能。戻って鑑定しよう。
「おい、帰るぞ。剣を返せ。」
二人で足早に帰路につく。
道具屋で鑑定を依頼すると、店主が目を丸くした。
「こんなスキルカード見た事も無い!鑑定…かっ鑑定出来ない。」
「おいおい、プロが鑑定出来ないってどういう事だよ。」
「済まない。私の能力では鑑定出来ない様だ。イーレブンの街に天才と言われた鑑定師が居る。そこへ行けば分かるかもしれない。ギョギョという名前だ。」
そう言われても、こちとらトラベラー体質で行きたい場所に飛べるとは限らない、というか行きたい場所に行けた試しがない。ちらりと隣も見る。駄目だ、この女は持ち逃げする。100%断言できる。それに、この女もトラベラーっぽい。飛ぶともう二度と会えないだろう。
そこで思い出したのがゴーレムのマーモット君だ。
彼に手紙を持たせお使いをさせればどうだろうか?
問題は支払いだが、クレジットは本人以外持てない。いや、確か家族カードと言うのが出来た様な。
「へえ~、道具屋さんって薬だけじゃなくてスキルカードの売買もしてるんだ~。沢山あるんだねぇ」
「何だいお嬢ちゃん。こんなに多くのスキルカードを見るのは初めてかい?そっちの奴は安い生活スキルだ。戦闘のレアスキルなんかはとても高値だから奥の金庫にしまっているのさ。なんたって、スキルカードのドロップ率は1パーセントを下回る。その中でもレアとなると更に1パーセントの確率とも言われているのさ。」
「へえ~そうなんだ~。で、パーセントって何?」
残念な女だ。1パーセントであれば100体に1枚、その更に1パーセントって事は1万体倒して1枚でるかどうかって事。あれ?俺、全然法則を無視して居ないか?
恐らくチョッキに縫い込んだ運を上げる指輪達が関係していると思われるが、それだけでは確率の相違が離れすぎている。若しかするとドロップ率は階段状なのか?ある程度運が高いと劇的に増加するとか?
そんな事を考えながら、店のおっさんとリンカとぎゃあぎゃあ話しする内容を聞いて居ると、ふと思う。
ここで稼いで於くのも悪く無いな。
将来起こるべきオーバフロー、モンスターの大発生に対応するには俺自身が強く成る事も猶更、強い武器防具を集めるという事も大切だ。残念ながら武器の街に戻れていないので新たに製作は出来て居ないが、ここで武具の購入費を稼ぐとするか。
そうなると、もう一人程仲間が欲しい。
というかリンカは足手まといなのでマジ要らない。
という事で、祈祷所内に有る斡旋窓口を初めて訪ねて見た。
普段利用者を見た事が無いが。
「まあ!仲間をお探しですね?どの様な方をお探しですか?お隣のお嬢さん見たいな子が良いのかな?」
受付の若いお姉さんが身を乗り出して来る。一瞬、色気にたじろいでしまった。
「ええと、こんな弱っちい奴じゃ無くて、ヒーローデーモンと戦える強い人を探しています。」
背後からリンカが異論を唱えて来たが、振り向かずに左手で口を塞ぐ。
「痛っ」
リンカが俺の指を噛んだ。湧き上がる怒りを何とか抑え込んだ。
話を戻すと紹介して貰えるのは二人らしい。明日順番に面接形式で対話して最終的に決めるという。だが、お互いに合意しないと駄目。片方でもNGを出すとチームは組めない。
案内された部屋で待機しているとドアが開き、人外の者の姿が見えた。
なんと言うか、人でない探索者って存在するのか?
「済みません。失礼ですが、人間…ですか?それとも…」
「私は自立型ゴーレムです。安心してください、自立型なので迷宮に操られる事は有りません。」
「いや、うちのマーモット君もダブルコアの自立型だけど、行ったり来たりだったよ?」
「私は8コアなので問題ありません。」
「あっそうですか」
いや、しかしなあ~。見た目がねえ~。
「済みません。資料を拝見すると実力に文句は無いのですが、その見た目ですと目立ってしまいますよね?せめて全身鎧を纏っていただくとかは?無理ですよね~」
「問題有りません。トランスフォームー!」
全身銀色のアンドロイドが獣耳の少女に変身した。肌艶にどことなく光沢を感じるが人間の皮膚の色。そして真っ裸。
「あの~、そんな特技があるなら何故今までそんな目立つ銀色で?パーティー組めないでしょう?あと、その姿の時は服を着た方が良いですね。」
「なんと!そうなのですか?!」
あっ、こいつもポンコツだわ。一人でヒーローデーモン討伐可能な実力はあるのに残念。
だが、8コアか...
つまりマーモット君も体をサイズアップし、色違いの魔石のコアを増設して行けば、魔物に引き寄せられる影響を低減させる事が出来るという事か。
あれっ?
8色って…
赤、青、黄、緑にピンク。
此処までがヒーローデーモンの色。先日のレインボーは特殊として、俺が知っているデーモンの色は5色だ。つまりあと3色も種類があるのか…これは研究のやり甲斐がある。
「取り合えず、パーティーを組ませて下さい。お名前は…」
手元の紙に視線を落とすと硬直してしまう。
「白銀の閃光と言います。」
こいつ、ネーミングセンスも壊れていた。




