第二十三話:カバ丸刀
さて、愛刀ごっちゃん丸は最大の攻撃手段であり、防御にも優れる。
比べて、手元に残ったもう一振りの剣、カバ丸君は切れ味が悪く強い敵を一撃で仕留める事が難しい。
当然被弾も多くなり、危険が増す。
なぜそんな大切な刀を見ず知らずの女に貸したかと問われると、弱そうだったので俺が休んでいる間に身を守れるようにと気を廻した心算だったのだが、全く油断していたしか言いようが無い。
女の言った事は正論だ。デストレインみたいな迷惑行為をする人間を安易に信じない方が良い、いやこれからは積極的に疑って行く事にする。
直ぐに街に戻って騎士団に相談しようかとも思ったが、今日は未だ狩りたらない気分だ、「馬鹿力」と「バランス+13」のスキルが付いたカバ丸刀でもう少し頑張ってみる事にする。
翻って迷宮の奥へ進むと又もや青いヒーローデーモンに出くわした。
負のオーラに当てられては面倒なので、先にチョッキに隠した短剣で出足を挫き、敵が戸惑った所へ急襲した。カバ丸刀の良い所は多少偏った姿勢で突っ込んでも剣筋に乱れが出ない事、さらに踏ん張りが効かない体勢からでも力任せの攻撃が出来るところである。
ヒーロースーツが破け血が噴き出し、確かにダメージが入っている。何故だ?
こいつらのスーツはカブットでいう所の固い外皮に当たる。柔軟性と切れにくさを併せ持つ奇妙な素材で、稀に落ちるヒーロークロスは防具素材として高値で取引されるくらいだ。高が馬鹿力如きで容易く貫通出来る訳が無い。
その時、気づいた。俺の手が僅かに光を発している事に。スキルだ。
実は先ほど拾った「断鉄」のスキルが発動していたのだ。
不慣れな所為か効果はごっちゃん刀に全然及ばなかったが、助かった。これで全然戦える。ヒーローデーモンはパンチを繰り出してくるが、リーチは刀を持つ此方が有利だ。
右、左、左、右のフェイント。
距離をおいて躱すと、敵は距離を詰めて来た。そこへ刀を合わせると、敵の右肩に深々と突き刺さった。
ガードが下がった顔面に蹴りをいれると、抜いた剣で首を狙った。
攻撃は決まり、黒い塵となって蒸発した後には紫色のスキルカードが。
この色は確か魔法スキル、カードの鑑定は専門家で無いと出来ないので又もや試して見る。
カードを使用して意識を集中させると手のひらの上に光の球が浮かび上がった。
試しにそれを壁に向かって投げて見ると、光は手から離れずに伸びた。
ビシッと壁を打つ光のロープ。
ふむ、質量を持って居る?これは使えそうだ。
更に奥へ進むと、グリーンヒーローデーモンが居た。しかも右手に木の棒を持って居る。
手のひらに意識を集中するとそれを投げつける。光のロープが敵の棒に絡みつき奪い取る。
だが、敵の手から離れた木の棒は垂直に地面に落下し、突き刺さる。ロープを引っ張るが、重くてロープが解けてしまった。木に見えたが金属で出来ているかのようだ。
グリーンヒーローデーモンは棒を拾うと突進してきた。
今度は足元を狙ってロープを投げる。両足に絡んだロープの所為で敵は派手に転んだ。
その隙を逃さず刀で後頭部に切り込むと、ビクビクッと体を震わせたっきり動かなくなった。
霧となった後には何も残されて居なかった。
その後、街に戻るまで15体のヒーローデーモンを倒し、街に戻った時には日は暮れていた。
翌朝、店が開くのを待って武器屋を回る。すると3軒目でごっちゃん刀を見つけた。売値は驚きの1億クレジット、全財産の100倍近い。
「こりゃあ何年かかる事やら。」
ルルと一緒に拾った極品、取り返したいがどうしよう。
取り合えず昨日拾ったカードを道具屋へ持って行った。
店の店主はカードを広げるなり細縁の丸眼鏡の位置を直すと叫んだ。
「こりゃあ、凄い。炎系の魔法スキルが2枚・水系の魔法スキルが3枚・剛力のスキル・斬鉄のスキル・硬皮のスキル。」
「高く売れるのか?」
「斬鉄のスキルは1000万、他は1枚200万で買い取ろう。」
うん、良い値段だ。俺は斬鉄と被っている魔法カードを売ると宿に泊まり、主人にマーモットを預けると翌日も迷宮に向かう。




