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シルバライ  作者: ゴスマ
強さを求めて
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第二十一話:ペタ君

 夕方、鍛冶屋へ行くと青光りする金属製のマーモットが居た。


 鍛冶屋の主人は万感の笑みである。


「どうだい、この出来栄え。素晴らしい仕事だろう?」


 一方、鏡など見た事も無いが、恐らく俺は困惑顔をしていた事だろう。


「なんか、小さくても、強そうな感じになるのかと思っていた。」


「何言ってるんだ、大事なのは実際に強いかどうかだ。見た目よりも力持ちなんだ。荷物運びに役立つぞ?」


「ふううん。まあ、オクタンの街に帰るから荷物を持って貰う事にするよ。」


「インゴットの街にか?じゃあ、インゴットが溜まったら又ゴーレムを作りに来てくれよな。」


「うーん、行きたい街があって方法を探している途中なんだ。」


「何て街だい?」


「城塞都市ビギン。無理ならセカンの街でも良い。」


 道具屋は首を傾げて両方聞いた事も無いと言う。


 その反応には慣れている。気落ちする事も無く、青いマーモットを連れてトラベラーサービスへ行くとカードを差し出す。


「オクタン迄戻りたいのだけど。」


「はいよ。あれ、お客さんは2度目だね。成るほど。なら、お連れさんと一緒にあっちのサークルに入って。」


 台帳を捲りながら、視線を落としたままクレジットを返した店員は奥を指差した。


 転送され光が収まると、女性の店員がにこやかに迎えてくれる。


「ようこそ、スキルの街ナイへ。」



 また知らない場所に来てしまった。


 あの店員、気を利かせた積りか、トラベラー向けの転送陣に案内しやがったな?余計な事を。


 でも今回は一人じゃない。コイツがいる。


 俺は傍らの青い頭に手を置いた。


「プププ。ゴシュジンサマ。」


「テビ―で良いよ。君の名前を決めなくちゃね。ほっぺたが柔らかそうだからペタ君ってのはどうだい?喜んでる?よし、ペタ君。行こう。」


 ペタ君は短い両手を上げると周囲をくるくると走り回る。


 先ずはカードを使える様にしなくてはいけない。


 そう思い交換所を探していると、見知った姿を見かけた。以前より少し痩せて、肌が若返った感じだが、確かにステインさんだ。


「ステインさん!」


 黒服に身を包んだスラリとした立ち姿に思わず声が出た。


「えっ?君何処かであったかな。急いでいるんですまんね。」


 行ってしまった。


 唖然としていると、ペタ君がパタパタと店影に向かって走り出した。


 慌てて追いかけると先ほど通りを行ってしまった筈のステインさんが隠れていた。見分けが付かない。


「ステインさん?!」


「しい~。俺に見つかると面倒なんだ。大声を上げないでくれ。」


 俺に見つかる?


 俺って俺?それともステインさん?


 眉を顰めていると、ステインによって店に引き入れてしまった。。


 其処は丁度探していた交換所だった。


「いいか、さっきお前が話しかけた俺は過去の俺だ。今の俺は言わば未来の俺」


「そんなのおかしいよ。瓜二つだっだし。」


「それが理なんだ。俺達トラベラーは自らが存在した時代に飛ぶ時はその年齢になる。気を付けろよ?老衰する直前に飛んだら、死んじまうぞ。」


 なんだって?


「じゃあ、自分が死んだ後の時代にトラベルすると如何なるの?骨になるの?」


「その場合は大丈夫だ。とにかく過去と未来は出会っちゃいけない。もし出会うと…」


「あっ、思い出して来た。ドッペルゲンガー!死んでしまうんだね!?」


 ドッペルゲンガー。何処で聞いた言葉だっただろうか?


「いや違う。死にはしない。あと、噂だが二回目以降は平気らしい。だが、最初が良くない。絶対にダメだ。何方かが大変な目に遭う。」


 死なないのか?


疑わし気な目つきでステインを見ていると察したのか、急に話題が変わった。


「所で、久しぶりだな。元気にしていたか?俺達の行き先は風まかせ、気分まかせだからな。同じゲートをくぐっても出口が一緒とは限らない。」


「せめてその事実だけでも教えておいてくれたら良かったのに。ケチですよね、ステインさんって。」


「まあ、そう言うな。本来知るべき時期が来る前に余計な事を知ると、大きな流れが変わって良くない。それはそうと、折角スキルの街に来たんだ。たっぷり鍛えると良い。俺は用事が有って付き合えないが、その刀があれば大丈夫だろう。ただ、ここはちょくちょく盗人が現れるから注意しろ?じゃあ、またな。」


 ステインさんと分かれると祈祷所へ並ぶ。マーモットは長袋に入れて隠した。


 一人で並んでいると何回かお誘いの声を掛けて貰ったが、今日は様子見で早く戻る積りだからと言って全て断る。


 薄暗い迷宮の地下2Fで、マーモットを開放すると突然前方に駆けだしたので走って後を追うと、魔物が居た。特撮ヒーローの様な全身スーツのデーモンである。スーツの様に見えるのは皮膚なのだろう。


 驚いた事にマーモットは俺とモンスターの間を行ったり来たりする上に、双方へ威嚇を繰り返していた。


 よくよく観察すると光沢のマーモットに埋め込まれた二つの魔石の内、一方が赤黒く光っている。


「だから、誰もゴーレムを迷宮に連れて来ないのか?鍛冶屋の奴、教えてくれれば良いのに。」


 どうやらゴーレムは魔物に感化されてしまうらしい。うちのマーモットは偶々魔石を2種類積んでいたので影響が半分で済んでいる見たいだが、これでは戦闘補助は当てに出来ない。


 仕方が無いので暴れるマーモットを袋に仕舞い、デーモンを一刀の元に切り捨てる。


すると、1枚のカードがドロップした。


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