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シルバライ  作者: ゴスマ
強さを求めて
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第二十話:地竜

 人気の無い道を選んで進むと、やっとドラゴンに遭えた。


 ワニの様な長い口、トナカイの様な雄々しい角、トカゲの様な躰と四肢、しかいデカい。正面から見るだけでも通路の半分以上を塞ぐ大きさだ。


「竜の鱗は堅いって言うけど、ごっちゃん刀で切れるかな?」


 手持ちの武器の内、最も攻撃力が高く最も使い込んだ刀を抜くと構える。


「来た!」


 のっしのっしと近づいて来たドラゴンだったが、突然大口を開けたかと思うと物凄い勢いで突進する。左に逃げるか、右へ躱すか?上は開いた口が大きすぎて飛び越せない、下は無理だ。


「くらえっ!」


 テビーは正面から突進すると、上顎の付け根から頭蓋に向かって突き刺した。


 竜の口が激しく開閉し、体を捩って暴れるとテビ―の体は喉の奥へ転落した。


 しかし、騒ぎが収まり竜の体が崩れ始めると、中から無事なテビ―の姿が現れた。


 愛刀を拾い、現れた拳大のピンク色をした結晶を拾うと、再びテビ―は獲物を求めて歩き出す。


 ◆


 迷宮から戻ったると真っすぐに鍛冶屋へ向かう。


 鍛冶屋の主人はテーブルに出された魔石の数々を見て腰を抜かしそうに驚いた。


「お前、何処で盗んで来た?」


「え?盗んで何て居ないよ?」


「そうか、じゃあ買って来たんだな。済まなかったな疑って。何せ一つのパーティー3カ月分の魔石を抱えて持って来たから、つい。」


「ふうううん。そう言えばドロップ率悪いみたいな事を聞いたね。」


 俺は興味なさげ手元の魔石を弄ぶ。


「そうさ、一流のパーティーでも1日に討伐出来るドラゴンは2~3匹。だが、そんな激闘を毎日は出来ないから月の討伐数は30も有れば上位ランキングに乗る。」


「ええと、その3カ月分がこいつらって事は、90匹狩って10個しか取れない?」


 それは詰まり約10匹に1個しか落ちないという事だ。1日で15匹も狩った事は秘密にした方がよさそうだが、2回に1度以上のペースで魔石をドロップした事は言っても信じて貰えないだろう。


「そうさ、魔石は貴重なんだ。ゴーレムには1個あれば十分だ。でも2個使うと高性能なゴーレムになる。3個はこのボディーには収まり切れないから、のこりは持って帰ってくれ。」


「うーん、じゃあゴーレムに2個使って、ゴーレムが出来たらヘブンに戻ろうと思うから、1個だけ手元に戻して残りは今買い取ってくれると助かるんだけど。」


「マジか?買値より安いとか文句いうなよ?」


 鍛冶屋は可成りのクレジットをカードに振り込んでくれた。


ゴーレムは明日までに仕上げてくれると言う。宿に戻り飯を食うと暇だった。


 こう言う小さな宿では風呂はおろかシャワーも無かったりして、厨房に行ってお湯を分けて貰いタオルで体を拭くのが関の山である。


 厨房に降りると女将さんがコンロを覗き込んで困っていた。


「困ったわ、魔石が切れたのかしら?」


「魔石?それ魔石で動いているの?」


 気に成って声を掛けると、女将さんは立ち上がって微笑む。


「ええ、この街じゃ何でも魔石で動いているの。だから他所と比べて物価が高いんだけど、それでもここは魔石が出るからなねえ。」


 ポケットを探ると、冷たく角ばった手触り。取って置いた魔石を提供し、大げさに感謝されながらお湯を貰うと冷めないうちに部屋で体を拭く。


 翌日、予定外だったが、早朝からもう一度だけ迷宮に潜る。


 昨日は地下3階迄探索したので、今日はその先を進んだ。


 地下4階は明るいドーム状の広大なエリアで、鬱蒼と草木が広がる平地エリアだった。


 天上の蒼色光苔は明るく、思わず外に居るような気分に浸る。


 大きな音が遠くでした。


 地鳴りの主は巨大な竜だ。中小の竜を従え縦横無人に駆け回るその姿は、正にこの空間の覇者。


 追われて、十人に近い冒険者が巨竜から逃走していた。


 装備に統一感が無い。幾つかのパーティーが巻き込まれた様だ。


 俺は両脇の剣を抜くと両手で構える。


 雄たけびを上げ走る俺の姿を巨竜の巨大な瞳が捕らえ、大きな顔がグルンと振り返ると、続いて巨体が進路を曲げる。


 先頭の巨体が口を開けると、地獄の蓋が開いたかの様に真っ赤な口蓋が見えた。鋭い大中の牙が死を誘うかの様に縁を埋め尽くす。


 次の瞬間、巨竜は小さな獲物の姿を見失った。


 勢いのまま走り去るがキョロキョロと辺りを探し進路もふらふらと定まらない。


 後ろを走る子分竜達が追い越して行く。


 その時、巨竜は腹部にチクリと痛みを感じ驚いた。


 俺は巨竜に飲み込まれそうになった時、咄嗟に地面との隙間に滑り込み、ごつごつした腹にしがみ付いていた。


 そして周りの竜達が前に行ったのを見て、この固い体に剣が通じるのか試したのだ。


 突き刺さった剣にぶら下がる様に体重を掛けると切り口が進む。


 その時、咆哮と共に巨竜が身を捩ったので剣もろとも振り落とされてしまった。


 幸い巨竜はそのまま叫びながら走り去ってしまった。


 逃げていた冒険者達の姿も見えない。


 「ふう~。何処かに群れて居ない竜は居ないかな?」


 ゆっくり探索していると、水飲み場に小型の竜が数匹居るのを発見した。


 そっと近づき、それぞれ一刀の元に切り倒すと、少し小ぶりだが魔石を3つゲットした。


 満足した俺は、そのまま茂みに腰を落ち着けた。


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