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シルバライ  作者: ゴスマ
強さを求めて
16/32

第十六話:エリス

 だが翌朝宿へ出向くと、エリスは既に出かけたと宿屋の主人は言う。


 慌てて祈祷所へ向かうが列にその姿は無かった。


 街中を走った。


 途中何度か宿と祈祷所へ戻るが見つからない。


 ゼット達に事情を話すと、一緒に探してくれると申し出てくれた。


「おーい、受付の綺麗なねーちゃんに聞いたんだけど。」


 アールが叫びながらやって来た。綺麗なお姉さん?綺麗なおばさんなら知っているが。


「人さらいに遭ったんじゃ無いかって。この街、おっさんばっかりだろう?若い女性は結構狙われるらしいんだ。」


「その人さらい達は何処に?」


「まあまあ、テビ―落ちつけ。もし人さらいが攫ったとしたらだ、大金を出してそれを買う奴もいるって筈だ。この街で金持ちと言えば、西の屋敷に住む祈祷所の司祭だな。実際、屋敷には違法な奴隷が囲われているっていう噂もあるくらいだし。」


「じゃあ、今すぐ助けに行きましょう!」


「だから、待てって。司祭と事を構えるのは面倒だ。迷宮にも入れなくなる。だから、上手くやらないと、なっ?」


 俺達は交代で司祭の家に張り込み、夜な夜な司祭がお忍びで出かける怪しい一軒家を突き止めた。


 そこは柄の悪い冒険者崩れが出入りする街はずれの家で周囲は森で覆われている。


 木に登って夜を待つと、窓から中の様子がチラリと見えた。見知った横顔。エリスだ。可哀そうに下着姿のまま縛られている。


 その夜、俺達は襲撃を決行する事にした。初めて人を斬る事に足が震えたが、エリスを助ける為だ。俺は刀を振る決意をした。


 暗闇に紛れ突入し、其処に居た赤ら顔の男達を容赦なく斬った。敵は6人居たが俺は二人殺めた。


殲滅が終わると、ゼットは早く縄を解いてくれと急かすエリスに言い含める。


「エリス、お前は今から祈祷所へ駆け込め。そして攫われていたけど、襲撃があってどさくさに紛れて逃げて来たと言うんだ。そうすれば奴らは逆に手出ししづらくなる。だから、このまま走れ!」


 翌日、祈祷所にはギルドが立ち入りちょっとした騒ぎになっていた。


 解放されたエリスを介抱した受付役の綺麗なおばさんが心配そうに諭している。


「エリスさん、この街は何故か子供が生まれないの。迷宮の影響か、水の所為か原因は分からないのだけど、子供が出来ないのよ。だから若い人が居ないでしょうか?流れ者の街だから若い女の子なんて殆どいない、だから人さらいに狙われ易いの。悪い事は言わない。早く違う街に行った方が良いわ。」


「有難うございます。でも、私強く成らなくちゃいけないんです。どうしても。」


「そう、なら人さらいが手出し出来なくなるくらい強く成らなきゃね。それまでは誰かと一緒に居た方が良いわ。当てはあるの?」


 頷いたエリスを見て女性はやっと安堵した様子だった。



「という訳で、今日からアンタの部屋で暮らす事にしたわ。宿代は半分払ってあげる。節約出来るは、こんな美少女と暮らせるわで、天にも昇る気持ちでしょうね?」


「冗談じゃない!ごっちゃん刀は貸してやるから、せめて隣の部屋を借りてくれ。」


「寝ている間が一番危ないのよっ!」


 そのような訳で今日から床で寝る羽目になった。


 確かに四六時中一緒なので彼女が一人の時に攫われる心配が無くなった。


 数日が過ぎ探索後mシャワー室の前で警護していると珍しくエクスが一人でやって来る。


「やあ、今日もお疲れ様だったな。お前達と潜る様になってからボスが出る迄早くて助かっているよ。」


「でも、その代わり砂金が少なくなるからお金は困って無いのかい?」


「いや、今まで貯め込んだ分の砂金が沢山あるから大丈夫だ。所で、エリスの刀。」


「えっ?刀が何か?あれは貸している刀なんだけど。」


「ああ、それでか。エリスが持つには長すぎるって思っていたんだ。お前にも長すぎだがお前は器用だからな。まあ、何というか俺も剣士だから気に成ってな。一度修理に出した方が良いんじゃないかと思って。」


 確かにごっちゃん刀は痛んで来ている。


 シャワー室から出て来たローブ姿のエリスにその事を相談すると、一度武器屋へ持って行く事になった。武器屋はエクスが紹介してくれた店だ。頑固そうな爺さんが一人でやっている店で、ちらりと刀を一瞥した後に俺達二人をぎょろりと見た。


「どっちの下手くそが使った?」


「何よ!私よ!ボスと戦うのに借りているのよっ!」


 食いつきそうな目で睨み返され、爺さんは日和った。


「そうか、早く自分の剣で倒せる様になると良いな。ひとまずこの刀は研いでやる。あと、金を出せばスキルを刻印してやる事も出来るが?」


 スキルの刻印だと?!


「どんなスキルが出来るんだ?」


「簡単な補助スキルだけだがな。バランスや握力、スピードを少し上昇させる物だ。」


 少しか…だが少しでも上昇するのは有難い。内ポケットからカードを取り出し、残高を見て貰うと、握力を上げる刻印なら打てるというので依頼した。


 それから数か月の時が過ぎ、エリスは無事ごっちゃん刀無しでボスを倒せる様になった。


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