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シルバライ  作者: ゴスマ
強さを求めて
15/32

第十五話:ルーキー

翌日も朝から祈祷所に並んだ。


 3人の剣士、ゼットとエクスとアールとは待ち合わせをしていたのだが、列の近くに姿は無かった。昨日飲み屋で盛大に飲んでいたので二日酔いにでもなったのだろう。


 酔っ払いの相手に辟易して俺は途中で退散したが、三人は相当酔っていた。


 三人の話の内容から、どうやら彼らは復讐をする為に鍛えているという事が伺えたが、支離滅裂で相手が誰なのかは分からなかった。


 昨日同様一人で列の最後尾に付くと、突然女の声で話しかけられ驚く。


「ちょっとアンタ。私ここ初めてなの。教えてくれない?」


 赤毛のポニーテール。しなやかな躰は凹凸の少ない銀の胸当てにスカート姿。腰に差す細剣はそこそこの物の様だが、防御を蔑ろにしすぎだ。


「俺も二日目で余り詳しく無いんだけど…」


「ボスは倒したのよね?それ。」


 少女は少しだけ黄色付いた俺の鑑定プレートを指差した。


「ああ、でっかい人蛙だった。こっちの剣の性能が良いから一撃だったけど、君の剣は斬撃とか付いているのかい?」


 途端に少女は眉を顰めた。きつめの目尻だが、嫌いじゃない。


「見ず知らずの人間に獲物の情報を渡す程馬鹿じゃあ無いわ。」


 はいはい。じゃあ俺は馬鹿って言われているんですね。


「でも、斬撃なんてレアスキル物、普通は買えないわ。」


 其処は教えてくれるんだ。


「じゃあ、力のボスは厳しいかも。硬いし。あと、スピードのボスはカラシって呼ばれる細身の黄色いタコで、防御力のボスは、陸クラゲ。弾力性が有って攻撃が通り辛いって昨日教えて貰った。」


 知って居る事は全ては成した。だがこれくらい情報を渡せば十分だろう。


「ふん。情報収集した通りね。付け加えるなら複数人の方がボスに会いやすいけど、ボス戦は必ず一対一になるんでしょう。」


 何だ、知って居たのか。教えて損をした気分だ。


「じゃあ…」


「私の名前はエリス。貴方、ボスに会うまで一緒に来なさい!」


「ええぇ…」


 強引に付いて来られてしまった。まあ、ボス戦では分かれる訳だし、二人の方が早くボスに会えるなら良しとするか。


 今日の受付は中年のおっさんだった。おっさんはエリスを見ると鼻の下を伸ばして下卑た笑みを浮かべた。


俺達は思わず顔を見合わせたが、中には居ると気を取り直して探索を始める。しかし岩ガエルに手こづるエリスを見て心配になった。


「なあ、この刀貸してやるから使いなよ。」


「貴方、非常識にも程があるわ!大切な剣をほいほい貸して、取られたら如何する心算?!」

 

 目を吊り上げて怒る様に思わず失笑してしまい。それが又エリスの怒りを買ってしまった。


「俺はこっち使うから、手をだして。」


 借金は昨日返済した。預けていたカバ丸刀のスキルは「馬鹿力」と「バランス+13」


 苦戦はするだろうが、昨日より力は上がっているのだ。


 ボス戦までは2時間ほどを要した。お陰で今日も砂金を沢山集める事が出来た。


 一応都度半分こしてエリスにも渡す。


「貴方、馬鹿正直すぎますわ!絶対いつか騙されて泣きべそかきますよ!」


 戦闘が終わる度に怒られる事にも慣れた頃、再び薄暗い空間に飛ばされた。


 俺はカバ丸刀を正中に構え、大きく深呼吸した。


 昨日は剣の性能で押し切ったが今日はそうはいかない。


 敵の攻撃を食らう事も覚悟の上だ。


 さて、素手の人蛙の攻撃は一体どのような物なのだろうか?


 昨日同様先手を打ち込む。


 胴に綺麗に決まったが、堅く分厚い皮膚に阻まれ1cm程の深さしか傷を付けれなかった。内臓に達して居ない、かすり傷だ。


「ゲコッ」


 人蛙がひとつ鳴いた。


 すると上から岩ガエルが1匹振って来た。


「ゲコッゲコッ」


 どすん、どすんと岩ガエルが降って来る。岩ガエル達は口を開けて脚に噛みついて来る。我慢できる痛みだが、これでは素早く動けない。


 岩ガエルを突き刺すが、カバ丸刀では瞬殺出来なかった。


 そうこうする内に巨大人蛙が目の前に迫り、腕を大きく振りかぶった。


 振り回された巨大な拳を、倒れ込む様に躱すと人蛙の脛を払った。


 しめた、怯んだ。


 前かがみな敵の首元に渾身の力を込めて刀を突き刺した。


 力のボスを倒すと、倒した岩ガエルから落ちた砂金を拾う間も無く広場へと飛ばされる。晴天の下に白いモニュメントが映え、待っていたエリスが駆け寄ってきた。



「何よ、遅かったじゃない。この刀が無いとやっぱり苦戦したんじゃない。」


 押し付ける様に刀を返された。


「明日も貸すから、一緒に潜ろう。」


「何よ、私を弱者扱いしないで頂戴。」


「そんな風には思って居ないよ。ただ俺がエリスと一緒に潜りたいだけなんだ。」


 そういうと、エリスは視線を外し、もじもじと俺の袖を掴む。


「そんなに頼むなら一緒に行ってあげても良いわよ。刀を貸して貰ったお礼に晩御飯を奢ってあげる。だから、貴方の知っている店に連れて行ってよ。」


 まだ昼前だったが、昨日の居酒屋は朝からやっている。


 店に入ると、朝っぱらからテーブルで一人酒を飲む中年冒険者達の視線が痛い。カウンターが空いて居たので座った。


「何よ、汚い店ね。」


「しい~店の人に聞こえちゃうよ、その代わり揚げ物が美味しくて安いから。」


 食事をしながら話をすると、エリスは仇討の為に力を付けにここへ来たと言う。


 そう言えばゼット達も復讐の為に来たとか言っていたな。


「エリスはどこの街から来たの?ビギナ?セカン?」


「ボリス王国よ。ここには特別な伝手を使って来たの。召喚門を通ったわ。貴方は違うの?」


 そんな物見た事も聞いた事も無い。俺は首を横に振った。


「帰りはモニュメントの前でおまじないを唱えろって教えられたわ。憎い仇を思い浮かべながらこう言うの、我積年の恨みを開放し今復讐する。ってね。」


 呪文?いや、言葉の中の何かが転送のキーワードになっているに違いない。


 さしずめ、恨みか復讐って所だろう。


「あー!テビー、手前。俺達との約束破ってナンパしていたのか!」


 ゼットだ。遅ればせながら、彼らも探索を終えて食事に来たのだろう。


「俺は約束通り朝から並びましたよ、このはエリス。エリス、昨日お世話になったゼットと、エクスにアールだ。」


 俺達は一緒にテーブル席に移ると明日は五人で潜る約束をした。


 宿までエリスを送ると、そこは立派な宿だった。


「明日の朝、迎えに来るから。」


「分かった。じゃあね。」


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