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俺のアンチはお前かいっ!?  作者: 白桜有歩
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誕生日に交わした約束32

「ほな」


 一宮は友達を引き連れて買い出しに向かった。


「言うてもなー、説得なんて」


 幼い頃からの知り合いだから分ってはいたが、緒美は一度決めたら考えを変えたりはしない。


 虐められてから何度か説得したが、一宮たちも考えを変えようとせずに彼女と仲直りはしなかった。


 説得もなんも思いつかんし、あいつらがやればいいんじゃ無いか?


 それとなく聞いてみるか? 彼女を探してもこいつをどうにかせんと彼女に何言うか分らんし・・・・・・。


「愛生? 緒美が帰ってきても何もするなよ?」


「するなよと言われたらするのが日本人だよ?」


「芸人ののりはやめろ!」


「追いかけるかー・・・・・・どこ行ったやろか?」


「考えんと走っていったからな・・・・・・」





緒美は景色が、すっかり変わった街を歩いていた。


 何年も引き籠もった部屋から出た街の景色は、想像以上に変わっていてゆうくんたちから逃げるんじゃ無かったと後悔していた。


 引き籠もった部屋を、飛び出したら迷子になるとか最悪だ。


 クラスのみんなと過ごせたら良かったのだが、あたしは彼女たちから離れた。


 クラスの子たちはみんな一緒の歩幅で歩む。あたしは部屋に籠もり毎日退屈な時間を、時計の針を眺めては溜息を零して、あの頃に戻れたらこうしてた、と嘆いて暗い部屋で過ごす。


 日々は流れてあたしを置いていく。時間の流れは誰にも止めることが出来なくて逆らえずにあたしを置いていく。自分から動き出せば何もかもを掴むことが出来た。本当は仲直りしたい――


 ――いちたちと。でも、取り戻すことが出来なくなっていた。会うのが怖い。不安は増すばかりで重くのし掛かる過去の自分。また人を傷つけるのでは無いだろうか? それが怖かった。


 でも、逃げると選択して言い訳して逃げようとする。自分でもダメだと想うのだが、過去の自分に戻るんじゃ無いだろうか、と仲直りが出来ない。


 自分が怖い。また同じ事をしそうな自分が。彼女たちとこのまま離れていった方が彼女たちのためになる。そう信じて仕方ないのだ。逃げると選択して自分の弱さを隠す。逃げるが自分を隠す手段。生きるは歩むこと。歩みを止めるのは努力を諦めて進む意味を忘れたこと。


 人は帰ることが出来るが、その前に考えてしまい出来なくなるのが、過去の行いをまたするんじゃ無いだろうか、と一歩目を踏み出せないのだ。


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