その他
シュウさんの作品の幅は広すぎる。彼にはいったい何が見えているのだろうか。我々が必死に売れようと作品を作っているのに、あっという間に我々の作品の上を行く。いくつもの登場人物や物語が思い浮かぶまさに天才なのだろう。
けれど、彼本人に会うととてもそんな天才には見えない。作家仲間の何人かがシュウさんと手紙でやり取りした事があるけれど、手紙の文面は普通でとてもあんな多種多様な作品を書けるような人とは思えない。まるで、複数の異なる人がシュウさんという人の体を借りて作品を書いているようだ。
そんな作家達と誰が一番上手い作品を書けているか競う動きが合った時、シュウさんの作品からそのことを賞を決めると呼ぶことにした。すると、シュウさんは人が変わったかのように賞を欲しがった。地位も名誉も金も才能も持っているというのに、なぜ賞なんて欲しがるのだろうか?
「あなたの存在は大きすぎるのです。新人を育てなければ小説の未来はありません」
正直にそう伝えた。それほどシュウさんの人気は強すぎた。それから数日後、一緒に暮らしていた男と心中未遂をしたらしい。いったい、シュウさんはなぜそこまで賞と欲しがったのだろうか?
【小説家から見た小説家シュウについて 著:ライアン より引用】
彼ほどの才能を持った人物を私は見たことがない。
いくつもの作品を世に出してそのほぼすべてが民衆にうけた。最初の初歩的な冒険ものや恋愛ものからの急成長に驚きを隠せない。
ただ、たまにある傷のような面白みのない作品が実に惜しい。面白いといえば面白いのだが、他の作品に比べれば見劣りするものをたまに書く。
それがなければ完璧すぎる人間になってしまうのでそれも良い所だと私は思っていたのだが、彼を嫌う評論家はその傷のような面白みのない作品に過剰に反応するようになっていった。そんな作品があるとシュウ先生の時代は終わりかもしれないなどと常々言うのだ。そんな作品が出ないか待ちわびているような評論家を私は好かない。
【作家シュウの天才性と評論家の姿勢 著:アイリー より引用】
「そうだわ、今日はシュウ先生の新作発売日よ!」
「朝に買って読んでみたけれど、今度のは私はあまり好きじゃないわ。前回の『赤毛のアン』の方が楽しいから好きよ」
「あら、『星の王子様』とか面白かったじゃない」
「最近は暗い作品が多いわね。でも、『斜陽』はとてもすごかったわ」
「でもやっぱり、最初の『夫婦善哉』が最高よ!」
「シュウ先生の作品は外れが少ないから楽しみね」
【本屋前の学生の会話】
「へえ、これがこっちで読まれている本なんだ。俺はラノベしか読まないから詳しくないけど、なんか学校の教科書で似たような話を見たことがある気がする。世界が変わっても似たような話はあるもんだな。え、この作家さん自殺したの? どんな人だったんだろう」
【異世界転移者の流行本への感想】