あとがき
良い感じに毒がまわってきたようで、頭がフラフラしてきたよ。そろそろ締めようと思う。そういえば、どうして僕が毒を飲んだか説明していなかったね。実は、王様が新たな異世界から来た人を発見したらしいんだ。
もし、その異世界転生者が日本人だったら? もし、僕の作品のほとんどが盗作だと皆に知られたら?
そんなことになったら非難は免れないだろう。盗作はバレないから怒られないのであって、創作者にとって立派な悪い事だ。僕は今更それが怖くなった。だから、今度は確実に死ねる毒を飲んだんだ。怒られる前にスタコラサッサと逃げるけれども、ただ逃げるだけでは面白くないので暴露してから逃げたいから今これを書いているんだ。
そうだ、頭の良い君なら太宰治しか書けなくなった僕がさっちゃんをどうするか気になるだろう? 気にならないかな? さっちゃんはね、一緒に死なないよ。さっちゃんは一緒に心中してくれるような善性は持っていない自立した女性だからね。
この暴露私小説は、『人間失格』と『ライ麦畑でつかまえて』の複合版なのかもしれない。結局、僕は僕だけの作品を書くことはできなかったんだ。どうやっても他の作品達の表現が頭をよぎって止まらない。この表現が自分で考えたものなのか、他の人の表現を盗作しているのか、もう僕にはわからなくなってしまったんだ。一度盗作をしてしまうとね、それは麻薬のように甘美で癖になってしまうと同時に思考を蝕んでしまうんだ。
ああ、意識がなくなりそうだどうしよう書きたいことが纏まらない! 僕はつまりね、こう言いたいんだ。
異世界に転移して完全に別人になれたから、僕は小説家以外になれたはずだ。あの馬鹿両親もいないし、誰も小説家になることを強要してこなかったじゃないか。僕は、僕自身の意思で異世界転移した後、小説家になったのだ。
僕はね、自分だけの小説を書きたかったんだ。他の誰でもない僕だけの作品を。そして、その作品を褒めてほしかった。
でももうそれはできない。盗作は、創作者失格だ。僕はもう、創作をしてはいけないんだ。それはとても当たり前な事なんだ。それがやっとわかったんだ。
死にたくない! まだ死にたくないよ。やっぱり一人で死ぬのは嫌だよ。いやもしかしたら、また死ねないかもしれない。そうだ、二回も死ねなかったんだから今回も死なないかもしれない。だって、僕は小説家のシュウじゃなくてただのツシマシュウジになると決めたのだから。このまま自殺なんてしたくなんかない。次は、小説家以外の職に就きたいんだ!
ああ、いしきがおちるおちる。めがさめたらもっとたくさんかんがえないと、そうさくいがいのみちをかんがえないと。つしましゅうじにならないと。
グッドバイ、シュウ。