はしがき
まず最初に僕は今まで異世界転移をしてきて魔王を倒した勇者であり現在は小説家のシュウと名乗っていたが、僕の本当の名前はツシマシュウジだ。でも僕はこの名前が大嫌いだから、今後も僕の事はシュウと呼んでほしい。
さっそくだが僕は今、遅効性の毒を飲んだところだ。これを飲んだら絶対に死ねると確信を持って言える毒を用意したからおそらく僕は死ぬだろう。
ではなぜそんな状態でこんなものを書いているのかというと、僕は僕の小説を書きたかったからだ。私小説であるし、暴露本ともいう。
暴露内容は実に単純で作家としては致命的なものだ。君は本屋で僕の名義で出された本を読んだかい? 君が文学に少しでも興味のある日本人、または日本の義務教育を受けていたら気づいただろう。日本人以外でも気づくかもしれない。
シュウ名義で書かれた『夫婦善哉』も『こころ』も『ドリアン・グレイの肖像』も『刺青』も『金色夜叉』も全部全部、僕の元の世界で僕よりも偉大な方々が書いたものをそのまま盗作しただけなんだ! 僕自身の意思で書いたものなんてほんの少ししかないんだ!
ああ、スッキリした。実に愉快で爽快な気分だ。僕はこれが言いたかったんだ。
これを読んでいる君は日本語が読める転生または転移者だろうからこの文字が読めるのだろう。でも、この世界の住人はこの文字が読めないんだ。だから、これからの話をこの世界の言葉に訳して本当の暴露本にするもよし、このまま焼却するもよし、好きにしてくれたまえ。死んだ者には主張する権利はないからね。
さて、今までのたったの500か600文字ぐらいの暴露を書いただけでは死ねない程度に遅効性の毒らしい。なので、僕の事とこの世界に来てからの事を書いていこうと思う。僕が僕の事を書きあげるのが先か、僕の命が尽きて未完になるかのチキンレースだ。