第四十九話 第三皇女
「わらわは、ハイエノール国第三皇女のルナ・ツー・ハイエノールだ。そしてこやつは第三近衛騎士団団長のメイだ」
「メイ・トゥーランだ。姫に手を出せば私が許さんからな!」
「こらメイ、元々は監視していたわらわ達に非があるのだぞ。そんなに睨むでない。それでだな、えっと」
「俺はリンネ・アルフィードだ」
「私はリフレ・ウォーランドですよ」
「リンネ殿にリフレ殿だな。それで、今回貴殿らを監視していた理由だが、単純に我がハイエノール国にとっての脅威かどうかの確認だ。数日前から急に、ハイエノール国付近の森に異常な魔力を感知したもんでな。ハイエノール国で一番の魔法師のわらわが見に行くことになったのだ。メイは付いて来ると五月蠅かったので連れてきただけだ」
「そう言えばさっきから疑問何だが、ハイエノール国ってのは何なんだ?」
「そうか、貴殿らは人間であったな。ハイエノール国とはわらわたちエルフの国だ。そしてそのハイエノール国の第三皇女がわらわという事だ」
「ちょっと待て、近くにエルフの国があるのか?」
「そんな事も知らずに、ここまでハイエノール国に近付けたのか?ここは既にハイエノール国が張る結界の内部。そう易々と近づける場所ではないはずなのだが」
「そうは言っても、リフレが何となくこっちな気がすると言った方向に進んでただけだからな」
「リフレ殿は何か特別な力でもあるのか?迷いの森の中を迷わずに進める人間などいないはずだが」
「私に特別な力なんてないですよ。ただ何となく、あちらの方から呼ばれている気がしただけですよ」
リフレは永遠と続く森の先を指さしてルナの疑問に答えていた。
しかし、その回答にルナもメイも驚愕の顔をして
「待て!まさにその方角にハイエノール国があるのだぞ!わらわ達エルフはハイエノール国の位置が自然と分かるが、人間には全くわからないはずだぞ」
ルナは驚愕の顔のまま、今度は俺の顔を見てくる。
「安心しろ。俺には全くわからん」
「そうなんですかリンネさん?では、いったい何なんでしょうね?」
「理由はわからんが、どうやらリフレ殿はわらわ達同様にエルフの国を探知することが出来るようだな」
「そうなんですね。昔から一定の方角が気にはなっていましたが、もしかしたらずっとエルフの国が気になっていたのかもしれませんね」
「ふむ。それで、貴殿らに一つ聞きたい事があるのだがいいか?」
「なんだルナ?」
「おいお前!姫様を呼び捨てにする等失礼だぞ!今すぐ言い直せ!」
「かまわんぞメイ。すまんなリンネ殿。メイはずいぶんと頭が固くてな。リンネ殿もリフレ殿も気軽に名前で呼んでくれ」
「ああ、わかったぞルナ。それで聞きたい事っていうのは何だ?」
「貴殿らはエルフの国に目的はあるのか?」
「どうなんだリフレ?」
「私は何となく行ってみたいだけですよ。何となく呼ばれている気がしたので」
「エルフを攫ったりする気は無いのか?」
「攫う?何で俺たちがそんな事をしないとダメなんだ?」
「迷いの森はエルフの力で作られた結界なんだが、元々人間がエルフを攫う事が多かったから作られた結界なんだよ。エルフは人間に比べると誰もが美しく長命。そして若い時代が非常に長いんだよ。わらわもこう見えて200歳だ。人間では考えられないだろ?」
「俺はてっきり俺たちと同じ十五歳ぐらいだと思っていたぞ」
「エルフの見た目は人間と同じ速度で十五歳ぐらいまでは成長するんだ。そしてそこから約五百年ぐらいかけて、人間でいう二十歳ぐらいの見た目になる。そこにいるメイも100歳ぐらいだぞ」
「ふん!年上を敬うんだな小僧が!」
「メイはもっと丁寧に話すんだよ。すぐに喧嘩腰にならない」
「うぅ、申し訳ありません姫様…」
「それで続きなんだが、そんないつまでも若いエルフを攫って性奴隷として人間は売買をしてるんだよ。だから私たちは人間に見つからない様に、結界を張って森の中で暮らしているのだ。だから、迷いの森に入った人間は監視が必要で、特に貴殿らのような巨大な魔力を発している人間は最重要監視対象なんだよ」
「まあ、それは酷いですね。でも私たちは違いますよ。エルフを攫う気も揉める気もないですよ。ねっ、リンネさん」
「ああ。それに俺たちは宮廷魔法師だしな。むしろ、宮廷魔法師として、そんな人間関係を見過ごせないな」
「ふむ。貴殿らは大丈夫そうだな。わらわの目でも貴殿らに嘘は見えんからな」
「ん?嘘が見えないってのはどう言う事だ?」
「わらわは少し特殊な目をしておってな。真実の眼と言って、相手の感情などが見える。それで、その者が嘘をついているのか大体ならわかるんだ」
「それはまた、随分と特殊な能力だな」
「エルフの中でもここまで特殊な目は数百年に一人だからな。それはそうと、このままだと貴殿らなら普通にハイエノール国についてしまうが、それでは不法入国になってしまう。どうだ?わらわと一緒に来てみないか?これでも第三皇女。貴殿らとしてもエルフと揉めたくは無いだろう?」
「まあ、エルフと揉める為に来てるわけでもないからな」
「では決定だな。では、わらわについてくるがいい」
こうして、ハイエノール国第三皇女のルナに連れられて、俺たちはハイエノール国へと向かう事が決まった。
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