第四十四話 最高の甘い夢
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甘美な夢に掛かったジーナは、全身を火照らせていた。
時々身体を振るわせながら、全身からジワリと汗をかいている。
表情は時々苦悶の表情にもなるが、基本的には幸せそうな顔をしている。
クロエの時の状況とは異なり、特に悶えたり身体を触ったりは無いが、時々見せる極上の笑みは少し狂気染みたところもあり、その笑みを見ていると背筋が寒くなってしまう。
クロエの時は五分程度で危険を感じてやめておいたが、ジーナは逆に今やめる方が危険と本能が訴え、約十分程度の時間甘美な夢を見ていた。
甘美な夢を解くとジーナは
「すごいよリンネ君。こんな幸せな体験初めてだよ」
「どんな夢だったんだ?」
「夢の中で私は私と命のやり取りをしてたんだよ。今まで私と互角にやり合える子なんていなくって、正直退屈してたんだよね。でも夢の中の私は私と全く互角で、少しでも間違えれば命を落とす、それは至高の体験だよ」
「それは甘い夢なのか?」
「私にとっては最高の甘い夢だよ。他には体験した子はいないの?」
「覚えて直ぐの時に、試しに団長にはかけてみたぞ」
「その時のクロエちゃんは、どんな感じだったの?」
俺はその時のクロエの状況をジーナに説明した。
ジーナとは違い悶えたり顔を赤くしたり、口からよだれも出て全身を自分で触ったり、寝言でキスや欲しいと言ってたりなど、その時の状況を話した。
その話を聞いたジーナは
「ん~そう言う事ね。甘美な夢はその人にとっての甘い夢。だから私は満たされない心を満たしてくれるために私と戦う夢だったんだね。それでクロエちゃんは全く違う夢だったんだね。でも、クロエちゃんもそうだったなんて、楽しくなるね」
「団長の見た夢が分かるのか?どれだけ聞いても教えてくれなかったんだが」
「まあね。何となくは想像出来るよ。ほら、年の甲ってやつかな。それよりさ、この魔法はあまり使わない方がいいよ。相手に害を与えるわけじゃないけど、甘い快楽は人を堕落させるからね。私みたいな欲望を持った子は少ないし、どっちかって言うとクロエちゃんみたいな夢を見る子の方が多そうだから、そうなるとその夢に溺れる可能性が高いからさ」
「甘い夢ってのは、そんなに危ないのか?」
「甘い夢ってのは、一番人間が溺れやすいからね。辛い現実から逃げたい、絶対に手に入らない幸せが欲しい、全部を忘れて快楽に溺れたい。だからこそ、そういう意味で危険な魔法だよ、それは。古代魔法ね、確かに今は再現は難しいかもね」
「そうか、甘い夢って聞いてたから、ただ幸せになるだけかと思ってたんだがな。それはそうと、今は表彰式をやってるけど魔法師帝がここにいていいのか?」
「そう言えば表彰式には参加するように言われてたかも。まあ、私なんていなくても進むんじゃない?あと、私には定期的に甘美な夢をかけて欲しいな。私のは快楽よりもストレス発散に近いから、快楽に溺れるって事は無いからね。現状じゃ私と対等にやり合える子もいないし、そんな子が育つまでで良いからさ」
「ジーナはどっちかと言うと、エルシーみたいな戦闘民族なんだな」
「そうね。でも私と対等な子がいなくてつまんないのよ。クロエちゃんの所に、何人か将来が楽しみな子はいるけどね」
「まあ、エルシーはまだまだ上を目指せるだろうからな」
「君の将来も楽しみにしてるんだよ、リンネ君」
「俺は基本的に新しく魔法は覚える事が出来ないから、特に成長もないと思うぞ?」
「そう言えばさっき、イミルと初級魔法しかどうとかと言ってたな?」
「ああ、俺はちょっと魔力付与値が高いだけの初級魔法師だぞ」
「でも、ちょっと魔力付与値が高いだけの初級魔法師を、あの魔法大好きっ子のクロエちゃんが規則を破っても入団させるなんて、何か裏がありそうね。どう?今から私とやってみない?」
ジーナが少し不気味な笑顔を向けてくるが、その時急に人がやって来て
「ここに居たんですか魔法師帝!あなたが何か表彰式で発表するから時間をくれって言ってたじゃないですか!もお、表彰式もほとんど終わるんで早く来てください!」
「あーごめんね。すっかり忘れてたよ。すぐに行くから先に行ってていいよ」
「もう、ホントにすぐ来てくださいね!お願いしますよ魔法師帝!」
それだけ伝えると、その人は全力疾走でも会場へと戻っていった。
「君との試合はどうやらお預けね。残念ね、リンネ君。じゃあ、私は私のお仕事に戻るから、君も会場に来てね」
そう言うと、ジーナは一瞬で部屋からいなくなった。
「それにしても、ずいぶんとパワフルな人だな。俺も会場に戻るか」
俺は特に急ぐこともしないで、ゆっくりと会場に戻っていった。
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