第三十九話 エルシーのママ
いったい何者なんでしょうね。
王国最強騎士より強い女性。
カッコいいですよね。
「お疲れ様っす、エルシーさん」
「お疲れ団長。一級宮廷魔法師ってあんな程度なのか?ちょっと手応えが無さすぎなんだが?」
「あの変態メガネは一級宮廷魔法師の中でも、かなりギリギリっすからね。上級だった頃の私が魔法具無しでギリ負ける程度だったんで、まあその程度っすよ」
「他の一級宮廷魔法師はもっと強いんだよな?」
「当然っすよ。バウトと私を除くと、あと八人っすけど、誰もが得意とする魔法で抜きん出た力を持っていて、みんなちゃんと強いっすよ」
「そっか!明日からも楽しみだな!所で団長と副団長は知ってるみたいだが、あの黒フードは強いんだよな?今日も団長に勝ってたんだよな?」
「あーあれは人外っすよ。私じゃ逆立ちしても勝てないっすよ」
「団長に無理ってことは、やっぱり私も無理なのか?」
「どうっすかね?あれもエルシーさんと同なじで速く、あと狡賢いっす。心理戦されると勝てないっすから、あれの言葉は聞いちゃダメっすよ」
「そうか、そんなに速いのか!すっごい楽しみだ!」
「エルシーさんは、本当に戦うのが好きっすね」
「パパもママも、三度の飯より組手だったからな」
「そう言えば、エルシーさんのお父さんは伝説の騎士帝、剣聖と呼ばれてた人っすよね。やっぱりお父さんが目標っすか?」
「いや、私の目標はママだぞ。パパが現役時代に唯一勝てなかったのがママらしくって、ママに惚れたパパが騎士を辞めて田舎に来たらしいからな。我が家の家訓は《ママの言うことに逆らえば死》だったからな」
「待つっすよ!剣聖ってたしか、現騎士帝の数倍強かったって聞いてるっすよ?そんな剣聖が勝てない女性なんて、本当にいるっすか?」
「そうは言ってもな、ママが本気で戦ったのなんて数回しか見たことないけど、あれは人間を辞めてるからな。最後に見たのは五年ぐらい前だったけど、デコピンでブラックドラゴンの頭を吹き飛ばしてたからな」
「それはちょっと、人間辞めてるっすね。魔法で強化とかしてる訳じゃないっすよね?」
「パパもママも魔法は全く使えなかったから、完全に素の状態だな。私も二人の特訓で何度も死にかけたぞ」
「それで、その娘は剣技に武術も身につけて、魔法は全属性特級魔法師っすか。化け物一家っすね」
「私なんて、パパやママに比べれば全然弱いからな。まだまだ強くなるぞ私は!」
「そうっすね、頑張るっすよ、エルシーさん」
クロエな苦笑いしか出来なかった。
こうして本戦一日目も終わり、俺とクロエとエルシーは同じベッドで寝ていた。
寝る前には、二人とも日課の練習をして、俺が回復をさせて寝ることになっている。
二日目~七日目までは魔法スポーツや魔法武術を行い、一日につき一つの団体が脱落して言った。
八日目になり、残る団体は三つとなっていた。
第一宮廷魔法師団
第十宮廷魔法師団
裏魔法師団
以上の三団体で、八日目の準決勝を行う事となった。
ちなみに二日~七日目までも、裏魔法師団は黒フードだけで勝ち上がっていた。
八日目の今日はシルビアン王国の中央にある闘技場にて、各団体代表者二名、合計で六人によるバトルバトルロワイヤルだ。
そのバトルロワイヤルで最初に二人共が脱落した団体が敗退となり、勝ち上がった二つの団体で明日の決勝を戦う。
第一宮廷魔法師団からは団長のランスと副団長のアラン。
第十宮廷魔法師団からは団長のクロエと団員のエルシー。
裏魔法師団からは黒フードと、もう一人胸の大きな赤フードがリングに登ってきた。
勝敗は非常にシンプルでリングから落ちたら敗退。
禁止事項は飛行と時空間移動。
ルールはたったそれだけだ。
しかし、それによりクロエは竜化での飛行は出来なくなった。
「エルシーさん、今回は逃げに専念して貰ってもいいっすか?」
「私は正々堂々と正面から戦いたいぞ!」
「それは分かってるっすが、この狭いリングではエルシーさんの力を十二分には発揮出来ないっす。スピードを出し切れなければ決定打にもかけるっすよ。なので今回はエルシーさんは逃げがベストっす。それに今日勝ち上がれば、第一の団長ランスか黒フードのどちらかと一騎打ちが出来るっすよ。だから今日は我慢っすよ」
「そうか!明日に残れば一騎打ちか!わかった、全力で逃げるぞ!」
「お願いするっす。私は出来る限りで、第一を落とせるように頑張るっすね」
「第一を狙うのか?第一は宮廷魔法師団で一番なんだよな?」
「あの黒フードに比べれば、まだマシっす。じゃあエルシーさん、お互いに頑張るっすよ」
「おう!分かったぜ団長!」
こうして、本戦準決勝のバトルロワイヤルが開始した。
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