第十五話 大金持ち
国で一番の魔法具師。
つまりはそうゆう事ですよ。
どこの世界でも才能はお金になります。
「なあ団長、この腕枕は毎日するのか?」
「当然っすよ!リンネ君も私の寝相は知ってるっすよね?腕枕してないとまた尻で踏むっすよ。それに…」
「尻は勘弁してくれ。あと、それに何だ?」
「えっとですね、前にイミルちゃんの家に泊まったことがあるっすよ。その時に事件が起きたっす!」
「あまり聞きたくないが、何があったんだ?」
「それはっすね、朝起きたら私全裸だったんすよ!何と不思議、下着まで全部脱いですっぽんぽんだったんす。それで、腕枕はどうするっすか?」
「…団長は本当に大丈夫なのか?」
「リンネ君が見たいって言うなら、それも仕方ないっすね。では離れて寝るっすね」
「いや、腕枕を頼む。いくら見た目が幼女みたいでも、実際は大人なんだからな」
「幼女みたいは余計っすよ。ほらコッチに来るっすよ(これで毎日リンネ君の匂いが嗅げるっす!)」
「ああ、分かったよ」
結局、これから調査が終わり第十宮廷魔法師団に戻るまではクロエの腕枕で寝ることになった。
別にクロエに抱きしめられて寝るのも、何となく落ち着くから構わないんだけど、その何だか子供扱いされてる気がするんだよな。
こうして幻影での1日目も終わり、二人とも深い眠りについた。
「よく寝たっす」
「そうだな。今日は寝たままの向きだったし、これからも気をつけるな」
「だから、キスしたことなんて気にしないっすよ。それより、今日は25階層を目指すっすよ」
「昨日一時間でここまで来れたし、道も覚えてるんだから簡単に行けるんじゃないのか?」
「そんな事ないっすよ。ダンジョンは基本的に下に行くにつれて広いっす。なのでここから25階層までは昨日とは比べ物にならないぐらい広いっす」
「そうなのか。とりあえず今日も抱えていくが、昨日と同じでいいか?それともおぶった方がいいか?」
「そうっすね。指示もしやすいし体勢も辛くないっすからおぶって下さいっす。あと匂いも…あっ、違うっす。リンネ君が私の尻も触り放題っすからね」
「何か後半馬鹿な事言ってるが、おぶった方がいいんだな。じゃあ、早速先を急ごうか」
こうして、俺はクロエをおぶる形でダンジョンを進んで行った。
クロエの言った通り、今日は一時間で3階層しか進む事が出来なかった。
道は迷うことなく進めているが、とにかく広い。
おぶってるので全力では走れないが、それでも道は分かり速度も普通の人間の10倍ぐらいは出している。
それでも一時間で3階層だ。
途中の休憩を考えると頑張ってギリギリ25階層に行けるからしい。
昼まで休憩なく走り続け、何とか20階層まで進めた所で、一旦は昼休憩にした。
「団長、ずっとおぶってたけど、疲れてないか?」
「大丈夫っすよリンネ君(道の説明には影響ないっすけど、リンネ君を嗅ぎ放題最高っすよ)」
「じゃあ、とりあえず簡単に昼にでもするか?」
「そうっすね。休憩に栄養補給は大事っす」
そうして、昼はアイテムボックスから取り出した料理を食べることにした。
アイテムボックス内は時間が止まってるようで、料理入れればそのままの状態が維持できるらしい。
「なあ団長。このアイテムボックスを作ったのも団長なんだよな?」
「そうっすよ。私が作る前にもアイテムボックスはあったんすよ。でもそれは沢山物をしまえるだけで、中の時間は進んでたんすよ。そうなると、これみたいに料理も運べないっす。それに素材入れると腐敗して臭かったっす。そんなのは勘弁なので時間が止まるアイテムボックスを作ったっす」
「作ったって簡単に言ってるけど、実際はかなり凄い事なんだよな?」
「そうなんすかね?まあイミルちゃんとこでも卸してもらってたり、それなりには売れてるらしいっす」
「それなりって、それだけでもかなり売れてるだろ?それにシルビアン王国でNo.1の魔法具師だったよな?団長って実は金持ちなのか?」
「そうなんすかね?私はお金に適当なんで、大体貯金してるっすよ。素材を買ったりはしてるっすが、お金に困ることは無かったっすね」
「マジか…こんな幼女が金持ちとか…」
「幼女とか失礼っす!でも貯金も白金貨50枚位からは見てないっすよ」
貨幣の価値としては
白金貨1枚=大金貨100枚
大金貨1枚=金貨100枚
金貨1枚=銀貨100枚
銀貨1枚=銅貨100枚
このようになっていて、庶民の月の収入はおおよそ銀貨50枚程度だ。
つまり見なくなった時点でも、すでに庶民の100万ヶ月、おおよそ8.8万年分の収入だ。
ちなみに、国の大きな事業でも白金貨1枚程度なので、クロエの資産に関してはシルビアン王国の国家予算を超えている可能性が高いのだ。
というか、白金貨なんて現実に所持している個人などあり得ないレベルなのだ。
「マジか!?白金貨なんて個人で所有するもんじゃないだろ?」
「ちょっとは見直したっすか、リンネ君?」
「ちゃんと団長の事は尊敬してるぞ、見た目以外は」
「失礼っすよ!私のこの顔の何処が不満っすか!」
そう言うとクロエは、俺の襟を掴んで自分の目の前に俺を引き寄せた。
確かにちんちくりんで幼児体型だが、顔だけ見ればリフレやエルシーにも劣らない程の美人だ。
そんな顔が目の前にあり、少し動けば色々と接触しそうな距離にあればドキドキもしてしまう。
しかし目の前にいるのは団長だ。
ちんちくりん幼女の団長なのだ。
「顔は確かに今まで見た中でもトップクラスに美人だぞ。それに金持ち。団長は結婚とかしないのか?」
「結婚っすか?研究ばっかりっすからね。貴族王族からのアプローチはあったっすけど、全部断ったっすよ」
「団長も来年で30歳だろ?そろそろ考えた方がいいんじゃないか?」
「ん~でも基本は研究ばっかの生活っすからね。そうだ、なんならリンネ君が貰ってくれてもいいっすよ。リンネ君なら魔法に関しての理解はしてくれそうっすからね」
「そう言うのはちゃんと好きな人に言ってくれ。そんな適当に選ばれても答えれないぞ」
「あちゃー。リンネ君に振られちゃったっすね。こんな美人な金持ち振るとか、どうかと思うっすよリンネ君?」
「俺の事子供と思ってるくせによく言えるな?でも団長は魅力的だし探せば選り取り見取りだろうな」
「まあ、リンネ君はうちの可愛い団員っすよ。困ったことがあれば私に何でも言うっすよ」
そう言うとクロエは背伸びをして、満面の笑みで俺の頭を撫でてきた。
正直、その笑顔を向けられると心が引かれるからやめてほしいんだがな。
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