第十二話 ワタシムシキライ
やっぱり女の子は虫が嫌い。
そのぐらいの方が良きですよね。
まあ、田舎娘なら虫ぐらいは平気そうですが。
四日目も順調に進んでいると、森によく出現するゴブリンが現れた。
ゴブリンはFランクモンスターで、魔法師でなくても大人なら普通に対処出来るレベルのモンスターだ。
群れになったり、上位種のゴブリンキングなどは、最大でAランク程度まで上がるが、単体のゴブリンなど特に危険視することも無い。
そして俺たちの目の前に現れたゴブリンに対し
「炎石」
クロエが火の初級魔法、炎の石をゴブリンに向け放った。
クロエの放った炎の石はゴブリンの額を貫通し、その一撃でゴブリンは絶命をした。
そして絶命したゴブリンの心臓部分から魔石をはぎ取り、肉塊はクロエの火の中級魔法「炎」で焼き尽くした。
モンスターを倒した際には必ず魔石をはぎ取り焼き尽くす必要がある。
魔石を残したまま放っておけばアンデット化の危険性があり、肉塊をそのまま残しておけばそこにモンスターの群れが寄ってくる可能性があるからだ。
それに、魔石は魔法具の材料にもなる為、クロエにとってはどれだけあっても困らない物だ。
「団長、魔石は俺のアイテムボックスに入れておけばいいんだよな?」
「お願いするっす!私のは魔法具でいっぱいなので、そこまで余裕がないっす!」
「そんなに沢山持ち歩いてどうするんだ?」
「戦闘はもちろん、普段の生活にも使えるものが盛りだくさんっすよ。ほら、毎日料理に使ってるコンロや、湯あみ用に使ってる湯沸かし器とかっす」
「そういえば、野営をしてるのになんでも揃ってるな」
「泥臭い野営の時代は終わりっす!清潔に楽しくっすよ」
「そう言う魔法具を作れるのは素直に尊敬出来るんだが、普段の行いがな」
「何が言いたいっすか。それより暗くなってきたので、今日はこのぐらいにして、ここで野営をするっすよ」
「ああ、じゃあ野営の準備でもするか」
俺のテントも団長のテントもボタンを押せば簡単に設置出来る為、テントの設置は完了した。
俺はアイテムボックスにアイテムは入ってる食材を取り出して料理を始めた。
料理と言ってもパンとサラダと簡単なスープ程度だ。
途中でモンスターじゃない動物を狩ることが出来た日は、そのままその肉を食べるが、今日は無いので干し肉を取り出しておく。
そして、俺が料理の準備をしている間に、クロエが湯あみをすることになっている。
基本的な役割としては料理が俺で、片付けがクロエだ。
それで、それぞれが作業している間に湯あみをすることになっている。
俺が半分ぐらいの準備が終わったところで
「リーーーーーンネくーーーーーん!!!!!!!」
そう言って、タオルで身を隠した状態のクロエが全力でこっちに向かって走って来た。
タオルで身を隠しているが、全身濡れているのでおそらく湯あみの途中だろう。
つまりはそのタオルの下には何も来ていないという事になる。
「ちょっと、どうしたんだ団長。それにその恰好はさすがにどうなんだ?」
「今は恰好なんてどうでもいいっす!なんなら見られても平気っす!そんな事より虫っす!!」
「見られても平気って、本当に大人の女の発言か?ん?虫?虫がどうしたって?」
「虫に比べれば、全裸を見られるぐらいとうって事ないっす!!湯あみしてるところに虫が出たっす!!」
「団長は虫が苦手なのか?」
「虫は駄目っす!キモいっす!無理っす!早くどうにかして欲しいっす!」
そう言ってクロエは、その場でじたばたしたりクルクル回ったりと、軽パニックを起こしていた。
虫の退治ぐらいは別に構わんが、そんなに暴れまわると身体に撒いてるタオルが落ちそうだから動かないで欲しい。
「わかった。駆除してくるからとりあえず落ち着け。そんなに暴れると…」
「暴れるとなんだって言うんすか!!」
俺の言葉を遮りじたばたしながらクロエが聞いて来るのだが、地団駄を踏んだ瞬間にその身体に撒いたタオルがはらりと落ちてしまい、完全に全裸をさらしてしまった。
「ちょっ!団長タオル!」
俺は急いで後ろを向くのだが、一瞬クロエの身体を見てしまった。
しかしクロエはそんな状況も気にすることなく
「全裸がどうしたっすか!!良いから虫をどうにかするっす!ほら行くっす!」
「わかったよ」
俺はおそらく全裸のままで指示を出しているクロエの方を向く事も出来ず、とりあえず湯あみをしている所に向かった。
そして俺が去っていくのを確認するとクロエは
「ヤバイっす!やらかしたっす!ハズイっす!リンネ君に見られたっす!今まで誰にも見られた事ないっす!平気そうにしたっすけど無理っす!ハズくて死にそうっす!戻って来たリンネ君にどんな顔で会えばいいっすか!あぅあぅっす」
クロエはその場にしゃがみ込んですぐにタオルで身体を隠し、顔は真っ赤になって身体をくねくねさせながら、今の恥ずかしい状況と今後について考えが纏まらない。
「リンネ君は顔はカッコいいっす。それにとっても優しいっす。初級以外の魔法あ覚えれないっすけど古代魔法を覚えれるかもしれないっす。それにあの規格外の保有魔力に魔力付与値っす。じっさい、凄く頼りになるっす。ん?あれ?リンネ君って凄く良くないっすか?え?ちょっ!?ん?私ってリンネ君の事が好き?いやいや、私は29歳でリンネ君は15歳っすよ。好きなんてそんな、ないっすよね?」
クロエはアイテムボックスの所に行き、中からライト付きの手鏡を出した。
そして自分の顔を見てみると
「なんすかこの顔?え?真っ赤っすよ?それに誰っすか、このだらしない顔の女は?あっ、私っすか!え?マジっすか?マジで私がリンネ君を…」
「団長、戻りましたよ。虫は駆除しといたから、もお大丈夫だ」
「っはにゃ!?」
「どうしたんだ団長?」
「はえ!?にゃんでもないっすよ!大丈夫っちゅ!」
「本当に大丈夫か?顔も赤いし呂律も回ってないし、熱とかないか?」
そう言ってリンネはクロエに近付き、おでこを合わせて熱の確認をした。
「にゃにをするっす!離れるっちゅ!」
「熱はなさそうだな。でも冷えるのは良くないから早く湯あみを終わらせて戻って来いよ」
「あぅ~わかったっしゅよ~」
色々な事に思考が追い付かなくなったクロエはオーバーヒートし、一旦頭を冷やすためにも湯あみへと戻っていった。
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