第十一話 再出発
早い戻りに早い再出発です。
これだけ頼りない上司も珍しいですよね。
でも、そんな上司も可愛いですよね。
「じゃーね、リンネ君。クロエちゃんには宜しく言っといてね」
「ありがとうイミル。クロエの事は守るさ。あと、次は俺の幼馴染も連れてくるよ」
「あら、リンネ君にも幼馴染がいたんだね。じゃあ期待してるね」
そう言ってイミルは俺に軽く手を振って店に戻っていった。
俺は購入したテントをアイテムボックスにしまい、第十宮廷魔法師団に向かった。
それにしても、クロエの幼馴染のイミルも、別の意味で衝撃的だったな。
クロエは単純に見た目に中身も子供な29歳で、はっきり言って年上に見るのは無理だ。
イミルは見たこそ若く見えるが、中身はしっかりしていて雰囲気は大人の女性だ。
しかもあのスタイルもあって、なんだか抱きしめられると落ち着いてしまうところもあり危なかった。
ちょっと俺と団長の関係を誤解しているようだが、まあそんな事にはなるハズも無いから気にしなければいい。
俺はイミルに関して色々と考えながら歩いていると第十宮廷魔法師団に到着した。
そしてそのまま中に入るとそこには副団長がいた。
「おかえりなさい、リンネさん。リンネさんのおかげでこの一日で第十宮廷魔法師団の皆さんの保有魔力と魔力付与値が上がってますよ。この練習法があれば、第十宮廷魔法師団からも何名か特級魔法師が生まれそうですよ」
「それは良かった。って言うか保有魔力も上がってるのか?」
「はい。そう言えばリンネさんは保有魔力∞でしたので気付かなかったんですね。魔力を限界まで使う事で、その後の回復で保有魔力が底上げされるみたいですよ」
「それは嬉しい誤算だな。ところで団長は団長室か?」
「はい。団長室で待っていますよ」
「ありがとうな副団長さん」
「いえいえ」
副団長は挨拶を終えると、第二訓練場と書かれた扉に入っていった。
おそらくはそこで、リフレとエルシーの訓練をしているのだろう。
俺は副団長を見送ると
「団長、入りますよ」
団長室へノックをし、扉を開けて中に入っていった。
中は相変わらず紙が散乱しているが、ぱっと見クロエの姿が見えない。
しかし、耳を澄ましてみると微かにクロエの声が聞こえた気がした。
「リ…………ンネ………………………く…………ん………………………た………………………すけ………………………て」
微かな声が聞こえる方、団長の机がある方に向かうと、机の横でスカートが捲れてパンツ丸出しになっている団長が倒れていた。
まあ、俺の教えた練習をして魔力が尽きるまで魔法を使ってたんだろうな。
さすがに見るに堪えない姿をしていたので
「小回復」
回復の魔法を使い、クロエを回復させた。
クロエは回復すると元気よく立ち上がり
「ありがとうっすリンネ君!ちょっと魔力を使い過ぎて死にかけたっす!」
「やっぱり団長はアホですか?」
「アホとは失礼っす!リンネ君が遅いから例の練習をしてたっすよ!」
「待たせたのは悪かったよ。団長の幼馴染のイミルって人の店だったみたいで、少し掴まってたんだよ」
「イミルちゃんの店にいったんすね。じゃあテントは良いのがあったすね。それにしても遅くないっすか?何をしてたっすか?」
俺は一瞬、あの豊満なボディに包まれたことを思い出しかけたが、そんな事を話すわけにもいかない為
「イミルに団長を支えてくれって頼まれたんだよ。団長が頼りないからな」
「なんですと!頼りないなんて失礼っすね!」
「現に今、死にかけてたろ?回復の事も考えておけよ」
「その節は大変お世話になりましたっす」
そういってクロエは綺麗な土下座をした。
いや幼女に土下座させる趣味なんてないからやめて欲しいんだが。
いや、実年齢は29歳だから…いや、たとえ年上の女性だとしても女性に土下座をさせる趣味なんてない。
「団長、俺は土下座なんて見たくないのでやめてくないか?」
「オッケーっすよリンネ君!じゃあ、さっそくダンジョンに向かうっすよ」
「切り替えはやいな、本当に」
「グダグダ悩んだり迷ったりなんて時間の無駄っす!さあ行くっすよ!」
こうして、俺とクロエは幻影魔法に関係するダンジョンに向け、二度目の出発となった。
今度の移動はテントもそれぞれが準備した為、非常に順調に進むことが出来た。
日課となっているのが、一日の終わりにクロエが光魔法を限界まで使用して俺が回復させると言う練習だ。
ぶっちゃけ、魔力付与値1000万になってからは全く上昇が無くなったので、俺としては日課の練習はするが必須と言った訳でも無い。
しかし、まだまだ上昇中のクロエに関しては、練習すればするだけ上がるので、毎日繰り返し行っている。
初日に行く前に一回死にかけたのと、その日の夜にもう一回やろうとしたが、夜に魔力を使い切った際に完全にトリップしてしまい、小回復で回復してもしばらく回復までに時間がかかり、この練習自体は一日一回が限界だろうという事になった。
そして、今日が三日目の夜なんだが、クロエがいつの間にか光の特級魔法「聖煌」を取得していて、たった数日で光の特級魔法師になっていた。
「団長はいつの間に特級魔法を使えるようになったんだ?」
「私は色々と研究してたっすよ。魔法に関しても全属性で特級魔法は知ってるっす。今までは魔力付与値が足りなくて使えなかったっすが、今なら魔力付与値もたりてるので練習したっす。そしたら、二日で覚えれたっすよ」
「天才かよ。たとえ魔力付与値が到達しても、特級魔法なんて覚えるのに数カ月が普通だろ」
「術式の構築は前々からしてたっす。なので、それを実現させるだけっすから、そんなに難しいもんじゃないっすよ」
「その術式の構築が普通事前になんて出来ないんだが…やっぱりアホの子でも天才なんだな」
「アホの子とは失礼っす!それじゃあ、今日も限界までやるんで、回復は任せたっすよ」
「ああ、回復なら任せておいてくれ」
そういって、今日の夜もクロエは限界まで魔力を絞り出して、倒れていった。
そして俺はそんなクロエを介抱し回復を施していた。
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