九十二 自由を束縛されるということ
……えっと、その、お久しぶりです。
投稿止めていて申し訳ありませんでした……。
「あら、ロコ?」という声は、確かにこちらに向けられたもので。
テニーチェは食べ串を空間の魔道で別の空間に飛ばしてから流れるように振り向いた。
そこにいたのは、ハッとするほどに静かな微笑みを浮かべた一人の女性と、それに似通った雰囲気を醸し出す、普段の様子とは全く違う少年だった。
「奇遇ですね、お母様」
「そうねぇ。ふふっ、そちらにいらっしゃる方はロコの同僚の方々かしら」
「はい。テニーチェ=ヘプタ団長より休日の買い物に誘っていただけたため、それを受けお供しています」
「まぁ! いいわね。団長さんは……」
「こちらです」
……はて。
この少年は果たしてロコ・パートイーサなのだろうか。第七団長さんはそう思ってしまったのでしたとさ。
けれど、と過ぎる。
ロコがテニーチェに対してくっつき虫になったのは、割と最近のことだ。
なんなら合宿の頃なんて、全くもってくっついてきていなかった。そもそも彼の方から喋りかけてすらきていなかった。
考えてさえみれば、不思議なもので。
じゃあなんでロコはくっつくようになったのかって、それは本人に問いただしてみないことには本当のことはわからないけれど、やはり彼の中で何かがあったからこそくっつくように――或いは、くっついても大丈夫であると判断したのかもしれない、なんてことにまで思考を飛ばしてみたりしたテニーチェさん。
「初めまして、団長様。うちのロコがお世話になっております」
ふふっとたおやかに微笑みかけられて、現実に意識を沿わせた。
「初めまして。こちらこそいつもパートイーサさん……ロコさんには助けられております」
「あら、そうでしたの。ロコも活躍しているのね」
「ええ」
「よかったわ。親として誇らしい」
けれど、と女性は続ける。
ロコはいつものえへえへしているロコロコからずっと遠く、静かすぎるほどの笑みを浮かべたままに佇んでいた。
「危なくはないのかしら? ほら、王宮魔道師団といえば危険なところへの遠征もあると聞きますし」
「大丈夫ですよ、お母様。私は元気にやっていますから」
「そう? うちは別に魔道系の家系でもないから、違う仕事についてもいいのよ?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
「親として当然のことよ。
それじゃあ、またね。団長様も、よろしくお願いします」
「はい」
「お母様、お気をつけて」
「ええ、ありがとう」
テニーチェに向け軽く会釈をしたロコ・パートイーサのお母様。
そのゆったりとした雰囲気のまま、去っていった。
どこか遠い目でそれを見送るロコ。
見えなくなって、ようやくテニーチェに視線を向けた。
「急にごめんなさい、だんちょー。まさかこんなところにお母様がいらっしゃっているとは思いもしなくて」
「いえ。それにしましても、パートイーサさん、貴族だったのですね」
「……変でしたか? それとも、普段から『私』のロコロコでいた方がいいですか?」
ロコの表情を見て、ああ――とテニーチェは思う。
多分この問答は、これからのロコとテニーチェの関係性を捻じ曲げかねないものだ。
「どちらでもいいですよ」
だからテニーチェは、その判断をロコ本人に投げつける。
「これまでのくっつき虫のようなパートイーサさんも、きっと貴族で在るパートイーサさんも、光属性の魔道を操る第七の一員であることには変わりありませんから」
何がロコにとって『ロコロコ』を見せても良い基準になっていたのかは判ぜない。
だってくっつき虫になったのは本当の本当に急なことで。
だからと言って、たったの数分にも満たないこのやりとりでロコが『私』を使うロコになったとしても、それはロコの決断だ。
他人から強いられる決断がどれほど辛いものかということは知っていたし、自分で選択することを赦されなかった期間すらあるテニーチェからすると、自由の赦される第七にしたかった。
「……そうですか」
テニーチェからの言葉を受けて視線を落としたロコの顔には、ほんの少しの安堵が浮かんでいた。
「えへ、貴族じゃなくていいって言われたの、初めてかもです。えへへ」
じゃあ第七にいる間は、ロコロコでいます。そうロコは、ヘラリと笑った。
できる限りで投稿再開していきます。




