八十九 すんごくすんごい
(毎度毎度ほんとすみません……)
「お二方はお昼に食べたいもの、ありますか?」
空間の魔道で荷物なんてサラサラない身軽ぅなテニーチェさんは聞きました。
だって今日付き合ってもらう代わりにお昼とお夕飯は奢るって約束しちゃってるもんね!!?
「えっへへ、えっと、えぇーっと、うむむ……じゃ、じゃあじゃあ、ロコロコ、食べ歩きがしたい!! 食べ歩き!!! えっへへっ!」
「食っべ歩き! いっいですわねぇっ!!」
ロコ・パートイーサの食べ歩き宣言にキャッキャと同意するアウウェン・トルス=ブロントロスお嬢様。
しかしロコさん、割と直感的に色々判断している彼にしては珍しく悩んでらした。そんなに食べたい物があったのだろうかとテニーチェは内心小さく首をひねる。
確かに、他の人に奢ってもらえるという点では普段食べない物が狙い目となってくるのは事実なのかもしれない。
なんて、あくまで想像と妄想の範囲内で思考をまとめたのでありましたとさ。
「食べ歩きですか。分かりました」
世界の一翼担っちゃってる系大国ことナミスシーラ王国王都の商業区域の大通り。
そこは――お昼時になると特に――飲食の類の出店がもうすんごい盛り上がる。
なにがすんごいのって、とりあえずすんごいのだ。
店番の人の呼び込みの声があっちゃこっちゃに飛び交ってる。
そこらかしこに店があるせいでどこにいてもいい匂いがして、空腹さんがぐわぁっと牙を剥いては襲いかかってくる。
ついでそれを知ってる商業区域に店を構えている他の方々やらナミスシーラ王都にお住まいの人々がドッと押し寄せてくるが為に人混みもそれなりにすんごい。流石になんかしらの祭とかやってる時よりかはすんごくないけれど。
そんなわけで、ナミスシーラ王国の王都の商業地区には食べ歩きをするだけでお腹を満たすことができるという画期的な機能が備わっているというわけでした。
ちなみにテニーチェさんはまだ行ったことがありません。
なんでって、忙しかったからね!!
隠れた名店をってわけじゃないけれど、休みの日とかにご飯食べるときは気になっていた飲食店を回っていたりしたのだ。なんで、テニーチェにとっても食べ歩きはいつかしてみたいと思っていた所存であります。
「では、大通りの方へ向かいましょうか」
「えへへっ! やったぁ!!!!! えっへへへへへへへへへ!!!」
「はっい! 行っきましょうぅっ!!!」
大はしゃぎのお二人さんを引き連れつつ、テニーチェは大通りへ向かうべく歩き出す。
ちなみに珍しく(?)ロコは必殺☆くっつき虫(!)を発動していないのでしたとさ。
(ものすごく忙しい時期は乗り切ったので、今週からは最低限日曜には投稿できると思います……)




