八十六 あらあらあらあらあら
禍々しい。
服屋と言われなければ服屋とは思えないほどの、黒と紫とほんの少しの黄緑で彩られた店構え。
アシンメトリーな装飾物らで飾られたそこは、まさに周囲と比べるとどうしても異色であると頷いてしまうような風格を示していた。
まぁ、商業地区に店を構えれるくらいにはしっかりと儲けも出ているのだろう。
家賃含め、ただお店をやっていくだけでも他と比べていろいろ高かったりする一等地でもあったりするのであったとさ。
「あらいらっしゃい」
そうして店奥から出てきたのは、なんかすっごく優しそうな雰囲気溢れ返させたお姉さんだった!
店の雰囲気とはかけ離れているねっ。
「えへへっ、こんにちは、おねーさんっ!」
テニーチェにくっついたまま、ロコ・パートイーサがにっこり笑顔で返答する。
「今日は、だんちょーの服を探しにきたんです! えへっ」
「あらそうなのね。
あらあら、ふふっ、珍しく一人じゃないと思ったら、ロコちゃん、他の人の服を選べるようになっていただなんて!」
「えへへっ、ロコ、だんちょーから頼まれたんですよ! えへへへっ」
「あらあらあら! すごいじゃない!!」
「えっへへへへへっ!」
そしてあらあらしているお姉さんとロコさん、なんか仲良さそうだった。
羨ましい限りである。
会話している二人を横目に、少しだけ周囲を見渡してみるテニーチェさん。
黒くて銀色で装飾のついた革地のコート、黒毛のファー、アクセサリーだと銀色のチェーンだったり金々としたブレスレットも置いてある。
何がって、ちょっとイタいのだ。
すっごく良い言い方をすると、ものすっごくかっこいい系の服飾屋さんらしいということであったとさ。
「パートイーサさん、こちらは?」
「えへっ、この店のてんちょーさんです! えっへへ」
「店長様でっすのねぇ」
ロコの言葉に一つ目をぱちくりとさせるアウウェン・トルス=ブロントロス。
あらあらあらな御方は、どうやらこのロックでかっけぇ店の店長様であられたと。
これまたあらあらの事実でありましたとさ。
毎週日曜+α投稿で参ります。




