八十二 団長様は……!
「テニーチェちゃんは、どうしたい?」
「私は……ですか」
「そ。
一応私から言っておくと、テニーチェちゃんほどの人材は暗黒の日うんぬん関係なしに手放したくないとは思っているわ。テニーチェちゃんが第七王宮魔道師団の長に就任してから、第七は格段に集団として動けるようになったと評価しているから。長のいない時期はもちろん、前の長の時期も含めて」
テニーチェちゃんも、今回の任務で前の長の顔貌は見ているんでしょ? と確認が取られる。
「そう、ですね」
「彼女も実力はあったんだけど、いかんせんオドオドしすぎていたことに見た目が若すぎたことと相まって、少なくとも第七の長には合わなかったのよね」
「話の腰を折るようで申し訳ないのですが、一つお尋ねしても?」
「なぁに?」
「第七の前団長の行方を、陛下はご存知なのでしょうか」
「いいえ、知らないわ。
テニーチェちゃんともそうだけど、私と私に仕えている人たちとの関係はあくまでビジネス上のもの。必要でないのなら、プライベートまで踏み込むつもりはないもの」
「そうでしたか。返答頂き、ありがとうございます」
そう顔を下げるテニーチェ。
ビジネス上の云々かんぬんについてはテニーチェもよくよく承知していた。
昨年の暗黒の日から長になると契約を結ぶときも、ずっとずっとあっさりしたものだったから。
「で、テニーチェちゃんがどうしたいのかについて、すぐに答えを出せとは言わないわ。でもそうね」
揺れる闇色のヴェールと。
そして期限は言い渡される。
「ちょうど一週間後に答えを聞くわ。代わりに一週間、休暇をあげるから」
通常業務、例えば第七の団員たちの鍛錬については第二に任せるから、と国王陛下は告げる。
「かしこまりました」
「次の任務については、一週間後の謁見でまた伝えるから」
そうして テニーチェ団長様は 休暇を 手にした!
やったね!
……たぶん。




