七十七 わっかんねぇんだってば
お久しぶりです。
……続きが難しいこの日頃です。
パッと見た感じ、ガチで海空さん、何がなんのこっちゃかわかっちゃいないらしかった。
だってぽけぇっとした顔で首を捻っちゃってるんだもの。誰がどう見たって意味わかってねぇなぁ……と思う表情であったとさ。
第七副団長たるリーラス・ライラクスさんその他第七団員たちが押し黙っていたのは、海空さんという新たな存在に強者の可能性を感じてワックワクしていたから、ではなかったらしい。
いや海空さんは、リーラスによると、どうも彼ら彼女らの元の団長だったらしいから、強者に対するワクワク度は高かったのかもしれないけれど。
テニーチェは、前団長のことについての情報をほぼ持っていない。
というか、前団長について国王陛下からすら何も聞いていない。テニーチェが気にしたことなかった、っていうのもあるかもしれないが。
唯一分かるのが、王宮魔道師団の団長につけるだけの実力を兼ね備えていたくらいで。
テニーチェも第七の魔道師団長をやっているが故に、まぁきっとこれくらいなんだろうなってのが推測つくってだけのお話なのだ。
そういう面で見れば、確かな情報なんてものは全く持っていないとするべきなのかもしれない。
本当の本当に一つだけ、これが情報と呼べるかも分かんない代わりに正しい事実として挙げることができるのは、第七の元団長の辞任がテニーチェの来る一年ほど前だった、ということのみだったりしていて。
そういうわけで、現段階では一番情報的に遅れている現団長ことテニーチェ=ヘプタさん。
とりあえず質問を投げかけることにした。
「ライラクスさんは、なぜ、海空様のことを元団長であると判断なさったのですか?」
テニーチェ的には二つほど思い当たる節があったりはするのだが、正しい解答を得るには聞いてみるのが一番なのである。
「判断理由、ですか。二つあります」
果たして返ってきた答えは、やはりテニーチェの想像通りのものであった。
「一つ目が、見目からしてワタクシたちの前団長と酷似していたからです。背格好も含めて、ワタクシの知る彼女の姿に似ていたのです」
一つ前の王宮魔道士団の団長さんは非常に若い見た目をしていたらしい。さすがは他の団より少し(かなり?)外れた第七ではある。
だって他の団の団長たちは皆、それなりに歴戦を積んできたんだろうなって見た目をしている……はずだもの。現在のテニーチェが面と向かい合って接したことがあるのは、第二の魔道士団長とその他幾らか程度しかいないため、第七以外にも実は幼い見た目をした団長さんもいらっしゃるのかもしれないけれど。
にしても、副団長の告げる前の団長さんは、あの国王陛下に、何歳であると届け出を出していたのだろう……?
「二つ目は、ワタクシがまだ名前を告げていないにも関わらず、彼女がワタクシの名を口にしたからです。当然ではありますが、ワタクシの名前は前団長もご存知でしたから。何せワタクシは、前団長が団長であった頃から副団長をやっていた身でございます故」
そして明かされる副団長のちょっとした職務歴。実はテニーチェも知らなかった事実である。
国王陛下に尋ねれば聞けたのかもしれないが、聞いていなかったものだから知らないのだ。
テニーチェが第七の団長として就任するにあたって、ちょっとばかし他のことに気を配れるほどの余裕がなかったこともあったけど。
『……あの、ごめんなさい』
ふと紡ぎ出された機械の言葉に、話し込んでいたテニーチェと副団長リーラスは海空さんの方へと視線を向けた。
『わたし、えと……その』
あわわわわ、と肩を震わせる海空さん。
挙動不審にあちらこちらへ揺らめいている瞳から、ものすごく動揺してらっしゃることがよく分かるようであった。
『リーラスさんの言っていることも、その、よく分かるんですけど、……わたし、前団長? では、ありません。
えと、なので、他人の空似だったりしませんか? あの、たしかに、リーラスさんの名前がポロッと出てきちゃったのは、わたしにも、よくわかんないんですけど、その、冗談のつもりでしたし……』
「海空様は、虹の世界のナミスシーラ王国における第七王宮魔道士団関連について、何もご存知ではないと?」
『そう、ですね。なにも知らないです』
ふむ、とテニーチェ。
正直なところ、何が何だかわっかんねぇ状況であったとさ。




