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仮面をつけた王宮魔道師団の長  作者: 叶奏
未知探査@海空迷宮
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七十五 謎のアレ

遅くなりました。ごめんなさい。



 真っ白いワンピースが、周囲の壁に溶け込むようにひらめいた。いや、実際に溶け込んでいる部分もあった。

 風の吹いていないはずの屋内で、暴風とまではいかないもある程度の強さの風が巻き起こっているくらいにはためいているワンピースの布の先は、不安定な電波で送られてひずめいているテレビ画面の如き揺らめきを見せている。


 そして少女の乗っている謎のアレは、姿形がしっかりと見えるようになっても謎のアレのままだった。

 何がって、とりあえず謎は謎でアレなのだ。



 だって『謎のアレ』は『謎のアレ』という文字の形をしているんだもの!



「海空様ご本人、という認識でよろしいでしょうか?」


 そうして謎のアレが『謎のアレ』であっても大した驚きようも見せず冷静な質問を投げかけられちゃうテニーチェ団長。

 アージュスロでさえ『謎のアレ』に乗っている少女という構図に対してなんともいえない感情を催しているらしいのに(by念話を繋げっぱなしでアージュスロの思わず脳内で呟いてしまった感情がダダ漏れになって聞こえてきてしまっているテニーチェさんより)。


『はい、わたしが海空です。あ、えと、本当の名前はまだ思い出せてないんで、テニーチェさんにつけてもらった仮称で海空って呼ばれている者です』


 ついで、少女は海空さんらしい。

『……あの、声、変じゃないですか?』


 声なんてものはどうだっていいから『謎のアレ』は一体なんなんだと思ったアージュスロである。

 ちなみに第七団員たちの大半は、『謎のアレ』が何かしらの強い攻撃手段やらまだ見ぬ何かを秘めている何かしらではないのかという期待に胸を高まらせていることが、急にワクワク浮たった雰囲気を纏い始めた彼らや彼女らから読み取ることができた。


「大丈夫ですよ。きちんと海空様の方向から聞こえております」

『あ、よかったです!』


 だから声よりも先に気になっていることがあるんだってば。


『わたし自身の完全な現像化、もうちょっと待っててください。急ピッチでプログラムを書いて待機状態にあった機能を使ってどうにか仕上げた体なんで、調整する時間が足りなかったんですよね』


 少女、海空さんの着るワンピースはまだ端々がノイズがかり宙を激しく漂い続けている。それでも先ほどまでよりかは動きも落ち着いてきているように見受けられた。


『えと、話すだけならこのままでもできるんですけど……でもちょっと恥ずかしいですね。本当ならテニーチェさんたちがわたしの中枢があるところに辿り着くまでに完成させておく予定だったんです。……マスターさえ出てこなければ、間に合ってたはずなんだけどなぁ……』


 海空さんはムッと頬を含めて口をとんがらせる。

 感情は細やかに表現することができるようだ。或いは、人間らしさにこだわりすぎたせいで、体の形自体の調整が間に合わなくなってしまった可能性もありそうだ。


『んー、でも、動かないわけにはいかないんですよねぇ。マスターのメカがいつ起きるか分からないので』

「と、いうと?」


 海空さんのぼやきに、テニーチェは首を傾げる。

「動力となるエネルギーは全て消し去ったはずですが」


『マスターのことですからね。自家発電用の装置を搭載していてもおかしくないんですよ。なので、さっさと回収できるうちに回収してしまいたいんです』

「自家発電……エネルギーを作り出せる、ということですか」

『そういうことです。しかもいろんな方法でできるようにしていると思います』


 そうこう話しているうちに、ついにワンピースの波立ちが収まりつつある海空さんの体。



 ところで。

 『謎のアレ』の用途をそろそろ教えてほしいアージュスロであったとさ。



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