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仮面をつけた王宮魔道師団の長  作者: 叶奏
未知探査@海空迷宮
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七十一 水というより、もはや海

お久しぶりです。


お待たせしてしまい、申し訳ありません。

ようのやっと時間に猶予ができたので、毎日連載再開します。



 あれから『かかかのか』と『せせせのせ』と『みみみのみ』が飛んできた。

 全てテニーチェ団長が対処したのであった。どれも一瞬の手の振り声なき声で消してしまったもんだから、他の団員が何かをやる暇なんてなかった。


「いやぁ……団長、すごいっすねぇ……」


 実は割とすんごい速度で飛んできていた文字へ瞬間的な対応を見せていたテニーチェに、イグール・アトリボナが感嘆の声を洩らす。


「俺らなんか、避けるので精一杯だったかんなぁ」

「イグール、燃やしてみようって意気込んでたのに、結局ヒィヒィ言って逃げてただけだもんね」


 ケラケラっと軽快な笑い声を上げたヒュドア・ウィルフィーア。彼女は元から諦めていた――というより、無理だろうという算段がついていたらしく、団長テニーチェの背後をうまく使って隠れていた。

 イグールに関しては一度だけガチの超至近距離から文字列が現れたことがあったために、避ける必要があったのだ。それ以外の人は、何らかの対応を見せようとする前にテニーチェによって消されてポカンとするような状況でもあった。


 そうして第七団員たちから尊敬あるいはそれに近しい視線を向けられているテニーチェ本人は、至って表情を変えることもなく歩を進めているのであったとさ。

(注:表情変えてないのは仮面のせいで他のみんなには伝わっていなかった!)


 一行はさらに深くへと攻略を進めていく。

 周囲の風景は相も変わらずスマートなデザインを保ち続けていた。白を基調とし、ランダムに青や黄色い光が流星のように流れていく。

 特に何らかの攻撃(今のところは文字列攻撃のみ)とは関係のない周期で動いているから、そういうデザイン面でも凝られている、という意味なのだろう。さすがは仮称:藍の世界の技術をぎゅっと纏めた場所と誇るだけある。

 どんな技術技巧も、ユーザーからは気にもなんないくらいに細かすぎるとこまで詰めているものに良いものが多いらしいことは、数少ないテニーチェの友人との世間話で得た知識だ。

 友人の作った機械に魂を入れておけば会話もできちゃったとは、かつての話。



「ぅお!? 今度はなんだ!??」


 ビクゥッとして立ち止まったイグール。

 彼の視線の先には、なんかすごい波があった。

 言うなれば、高潮、或いは津波のようなただの水というよりかは海の大波。それはそれはすっごい勢いで迫ってきている。


 テニーチェが、文字の時と同じように口を開こうとする。


「――えっへへへへへへへ!」


 テニーチェ は みかた に こうげき された !


「ちょ、パートイーサさん!?」


 みかた は ロコ・パートイーサ だった !


 藍の世界に来てからというより、仮称:紫の世界を出てからくっついてこなかったってんのに、まさかのここにきてくっつき虫再燃であった。しかも背後からくっつかれたもんだから、大波に気の取られていたテニーチェ氏、ロコのことを避けることができなかったのである。


「えへへへっ、ロコロコにやらせてほしいんだよっ、えっへへへへ!」


 横から伸びたロコの視線が、大波に向かい、ついっと細められる。


「えへ、だんちょー、だめかなぁ? えへへっ」

「……それでは、お願いしてもよろしいですか?」


 最悪、あの大波も消してしまえばいい。

 幸いなことに、文字のと同じく魔力が全く籠っていなさそうだから、とテニーチェは考えを巡らせつつも構えを解かずに返答した。


「えっへへへ、まっかせてよ! えへへへへへへへへへへ」


 団長の腹から、ロコの片腕が外される。


「えへへ、――収集上昇分散定義、発射☆ えへへへへへッ」


 握りしめられてから、再度開かれる左手。どうやらロコは左利きのようだ。


 その利き手から放たれた光が、ずっと小さな、目に見えないほどの細かさを持つ粒に分かれる。

 瞬きすらする前に動き出したそれらの光粒らは、塊の如く蠢いては大波に襲い掛かる。

 光の波――というよりかは、光の壁だった。だというのに、光らが水の塊である大波に触れた瞬間、(ほど)け煌めき、絡みつく。


「えへっ、()()♪ えへへっ」


 テニーチェがちらりと下に視線を落とすと、ロコの表情が映り込んだ。

 紫の世界では一度として見たこともなかった、背筋がハッと冷たくなるような笑顔を浮かべている。


 ――海が、水を通り越して透明となった。


 瞬きを続ける光の粒を、大波だった水の一粒一粒に絡みついた光を、加速することによって温度を上昇させ、水そのものを蒸発させたのだろうか。


「え、これマズくない……?」


 呟いたのは氷属性の魔道を得意とする少女、ヒュドアである。


「水が消えた……つまり、蒸発して水蒸気になって……ボクの予想が正しければ、このままだと……っ!」

「えへ、収集減速……そう、ここは……わかってる、移動減速解放、えへへっ」


 ヒュドアの焦燥感をよそに、さらにロコが魔道を使用していく。

 光たちは壁に薄く張り付くと、音も立てずに消えていった。


 壁に残ったのは、触れてみないとわからないくらいの氷の膜。ひたりと色もなくただそこに存在している。


「……すごい」

 感嘆の声を洩らしたヒュドア。

 同じ第七団員であるはずなのに、どうすればここまでの技術で魔道を行使できるのかがわからないといった表情を見せていた。だって本来なら水蒸気として気体になることで莫大に膨れ上がった体積によって、元々通路を埋め尽くさんと迫り来ていた波が今度は非常な威力を伴った爆弾に早変わりしているはずなのだ。


 つまるところ、実際にロコは水を水蒸気に変えていない、ということで。


「えへへ、だんちょー、ロコロコすごい? すごいすごい?? えへへへっ」

「水を、離散させたのですか? 威力を殺すために」

「えへ、そーだよ! えへへ」

「なるほど、さすがパートイーサさんですね」

「えへへっ、でしょ!! えへっ」


 団長からの褒め言葉に、ロコは心の底から破顔した。



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