四十九 発光回折回折選択拡大→照射!
アージュスロ曰く、暫くすれば顔の紫はどうにかなるらしい。というかそのことはテニーチェにも分かっている。ヘプタの名を授かるときに貰った白銀色のマントによる反射的解毒魔道が働いたのであろうことは。
毒、あるいは体に非常な害を及ぼすものを食べたときに、いくらかの間顔が紫になる代わりに解毒の助けをしてくれることは知っている。なんせ以前、本当にそうなのかを試してみたくなっちゃった出来心によって紫な顔になったことはあるから。ちなみにテニーチェは第七だから紫らしい。確かに制服も紫だが、貰ったマントは白銀色。ここら辺の仕組み、もしかして代々与えるマントの色によって解毒魔道の色を変えるのが面倒だったから、紫になったのだろうか。
第二の団長もこの木の実食べれば、顔が橙色になるのだろうか。確か第二の制服は橙色だったし。
昼食の保存食、ビーフジャーキー味の栄養棒を食べたテニーチェはもう五杯くらい水を飲んで立ち上がった。ビーフジャーキーと木の実の味が絶妙に混じって口の中はちょっぴし荒れていたけど、自己責任で木の実を食べたのだからと無理やり納得させている。
「すみません、ウィルフィーアさん。もう一杯水を頂いても宜しいですか?」
「あ、良いですよー」
ヒュドア・ウィルフィーアは良い子。そうテニーチェの中に刻まれた。
アージュスロ産の亜空間から出て、更に探索を進める。時折ロコ・パートイーサにくっつかれながらも、主たる事件もなく日が暮れていく。紫の世界の太陽は、虹の世界のものと同じく黄色にオレンジを混ぜたような白色の光だった。
「だっん長様、そろそろ灯りを出っさなくてはならないのでぇはぁ?」
出っさがダッサに聞こえてすぐに出っさに変換し直したテニーチェは、そうですねと頷く。
「俺、火ぃ点けよぉか?」
一同が背負っているナップザックからランタンを取り出したところを見、イグール・アトリボナが提案した。
「ホント? じゃ、お願い」
真っ先にずいっとランタンを差し出したのは、水属性のヒュドアだった。そこから五人分のランタンに火をささっと灯し終えるイグール。王宮魔道師団に入れるだけあって、とても手早かった。
「えっへへぇ、えへっ」
そしていきなり、ロコが右腕を空高くに振り上げる。
「パートイーサさん、何を――」
「えへへへへへっ、発光回折回折選択拡大、えっへ♪」
「――…………、あ」
遅かった。
ロコの右手が振り下ろされる。
「えへへ、照射! えへへへっ」
ランタンなんて要らなかったんじゃねとツッコみたくなるくらい眩い光線が、音も立てずに紫の木々を消し去った。
「あ、あの、パートイーサさん……」
「えへっ、まだいるの? えへへっ」
再び暗闇に戻った紫色の森の中。
「✓`、€¥=……」
「✓`、€¥=……」
よくわかんない言葉を発した二人組が、五つのランタンの先に現れた。




