四十六 えへへへへへへへへへへへへ
テニーチェは二週間のうち、最後の一日を転移門の監視役として充てている。最初の一日は第二団長ムスーミュス=デュオ・クスッタロスが担当しているから、最初と最後が団長の役目として配置されているのだろう。
そんなテニーチェの組は、テニーチェの他、水属性のヒュドア・ウィルフィーア、雷属性のアウウェン・トルス=ブロントロス、火属性のイグール・アトリボナ、それから光属性のロコ・パートイーサがいる。この編成はムスーミュスと国王陛下の二人が相談したものらしい。当の本人ムスーミュスから聞いた話だと、テニーチェの闇属性と反する光属性ロコは元より入れるつもりで、ヒュドアは国王陛下からの推薦とのこと。そこから、アウウェンはヒュドアとの仲、ヒュドアの水属性に反する属性でヒュドアとの仲も悪くないイグールが選ばれたそうだ。何故ヒュドアが推薦されたのかは、第二の団長様も知らないと言っていた。
「えっへ、えへへへ、だんちょーといっしょの組だぁえっへへへへ」
探索一日目。
開始早々、光属性のロコはテニーチェにひたりとくっついていた。ひっつき虫と名高い何かの草も驚いちゃうくらいの密接度だった。
「団長様、是っ非ともアージュスロ様をぉっ!!」
そして第七の姫ことアウウェンも騒いでいた。くるぶしまで届きそうな金髪の髪をぶんぶん振り回していた。
もしや子守をしているのでは、なんて思っちゃったテニーチェは悪くないはず。というかヒュドアはなぜにこにこ佇んでいる。イグールは、自己申告で素行が悪いとか言ってたから、まだ良いとして。いつかのイグールに礼儀正しくないとツッコんでいたヒュドアが戻ってきて欲しい次第であった。テニーチェ一人じゃ抑えるのが大変大変。
「パートイーサさん、離れてください。トルス=ブロントロスさんは落ち着いてください。髪の毛が紫の木に引っかかったら危ないです」
「えへへへへへへへへへへへへ」
「アージュスロ様をぉっ!!!」
訂正。
抑えられそうにない。
――アージュスロ!
――ぁ? オレ、愛玩人形じゃあ……なんもねぇっす、はい。
「ウィルフィーアさん、アトリボナさん! パートイーサさんを引き剥がすの、手伝ってください」
「はいはい」
「ほいよぉっと」
何故だろう。
何故、テニーチェにとっては初・国からの正式の依頼で成す最初の仕事が、団員たちを宥めることなのだろう。
「アージュスロ様ぁっ!」
「えへっ、えへへっ、えっへへへへ。ロコロコ、だんちょーから離れたくないんだよぉ、えっへへへ」
第七の他の組はきちんと任務をこなせているのだろうかと、今更ながらに強く疑念を抱いたテニーチェだった。




