四十五 係員さんはスゴい人
今回は転移での移動となる。
集合場所は王都郊外にある、別界へ転移する為にも用いられている転移門前だ。
「……七、二十八。皆さんお揃いのようですね」
良々と頷いたテニーチェは、転移門を操作する係員さんに第七が全員いることを伝える。第二の方もちょうど全員集合したことを確認出来ていたところみたいで、係員さんは早速転移門を稼働させますと返してくれた。ちなみにこの係員はもちのろんでナミスシーラの王宮から遣わされた人物で、小耳に挟んだ話だと、王宮直属の技術師の一人らしい。かの国王陛下の黒きヴェールの調整もしているとのこと。なんかスゴイ人だった。
静かに並んでいる第二の皆様方と、わっくわくうっきうきな第七の統率の無さっぷり。こりゃあどちらも少数精鋭であるとはいえ、第七が困ったちゃんたちの集まりと言われちゃうのも仕方がない気がする。
「あ、えと、その、す、すす、すみ、ません」
同じ魔道師団のはずなのになんでこんなに違うんだろう、と首を傾げていたら、技術師の人がおどおど話しかけてきた。
「じ、じゅ、準備、でで、できま、した」
「分かりました」
「はいよぉ〜」
返事を返したのは、テニーチェと隣に立ってるムスーミュス=デュオ・クスッタロスだ。
「では、先に第二の方からで宜しいですか?」
「んよ。第七はオイラたちが入った後に来てくれやい」
それから、一分もしないうちに第七が門を潜ることになる。テニーチェは殿を務めるので、最後になるが。
浮足立ちまくっている第七団員たちはそそくさと隣り合わせの別界に入っていく。より強い魔道に出会えるかもしれない的な望みがある故か、なんだか普段よりもずっと行動がテキパキしていた。そんなに一丸となって動けるなら、もっと日常からそうして欲しい、などと嘆息しつつ。
「では、万が一の際と二週間後にまた、お願いしますね」
「が、がが、合点、しょ、承知、でで、です」
技術師に一言挨拶をしてから、テニーチェも転移門に足を踏み入れた。
森だった。
主に紫を主体とした森だった。
所々実がなっているのが見て取れるが、どう考えたって食べたら毒に侵されそうな、そんな紫紫している森だった。
「団長、ここが今回の任務で探索する別界――仮称:紫の世界、ですか?」
「ええ。転移先の設定が間違っていなければ」
ここは紫の世界。ただし名称の前に仮称と付くが。
まだ未探索である以上、探索の結果他の世界に悪影響を及ぼしかねないと判断された場合、この世界は消される可能性も残っているからだ。
国王からは特に主だった事前情報は無い。というかあるなら探索もそう必要ない。情報なんて無いから世界会議レベルでの依頼が為されるのであって。
とはいえ、ここが紫の世界と仮で名付けられた理由だけは聞いている。なんでも、この世界を見つけた人の一番記憶に残っている色が紫だったから、らしい。テニーチェも実際に来てみて思った。そりゃあ紫が記憶に残るだろう、と。だって今見た感じ、どこ見回しても紫で満たされている。せいぜい青紫とか赤紫とか緑紫がちょこちょこ混じっているくらいだ。
「ほれ、注目」
第二団長ムスーミュスは、テニーチェがこの世界に転移してきて門がしまったことを確認したのか、風の拡声魔道を使い話し始める。
「今回の合併任務では、事前の通告通り五人ずつにわかれての作業になるぞ。虹の世界と繋がっている転移門があるこの場所は、それぞれのグループが二組ずつローテーションで見張りをやってもらうからなぁ。
それと、なにかあったら渡されている腕時計から信号を飛ばしてくれい。見張りのうち一つのグループが確認に向かっからな。
オイラからは以上だけん、テニーチェサンからはなんかあるかい?」
いつの間にかムスーミュスの隣にまで移動していたテニーチェは、小さく首を横に振って否定の意を表す。
「特にございません」
「おいよ。ほんじゃ、各自行動を開始してくれ」
拡声の魔道を切るムスーミュス。
「テニーチェサンも、こっから二週間、よろしく頼むぞい」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そんなこんなで、合併任務は始まる。
ようやく場所が決まったので、章タイトルの???を仮称:紫の世界に変更しました。




