三十六 こういうのを腹黒というのだろうか
パッと見手っ取り早そうなのは、石像を消しちゃうこと。そうすればエクスファラン草の栽培部屋へ行くことは出来るのは間違いないだろう。考えることは石像を消す為の魔道イメージをしっかり固めることだけだし、思考的労力の面からすると一番楽だ。
まぁけど、その分魔力の消費量もエグい。つかデカブツ石像さんをまるっと消そうなんてしたら、たぶん、今の魔力量的に枯渇する。こっからエクスファラン草を採って王国まで帰るのに使う魔道のことも考えると、脳筋的方法には頼れなさそう。
と、いうわけで。
テニーチェは石像の核を狙って消すことにした。
ちなみにどこにあるのかは知りません。当たり前だけど。
普通の人なら即死級な魔道を受け流しながら、テニーチェは駆け回っている。時折魔道を使って攻撃しているのは、万が一にもアージュスロへ敵の焦点があわないようにする為だ。大方こういった機械的な攻撃しかしてこない相手というのは、的を体温の動きで捉えるか攻撃してくる魔力を分析してその魔力の持ち主に集中砲火するか、手当たり次第に攻撃をぶっ放すかのいずれか。ものによって違いはあるだろうけど、だいたい大まかに分類すればこんな感じになる。
この中だと二個目のがわりと高めの技術を必要とされていて、おそらくこの石像もそんな感じの機能を有していそうだ。現に逃げ回って時々テニーチェに援護の魔道をかけてくれるアージュスロじゃなくて攻撃ばっかしてくるテニーチェを狙ってくるという事実からも、この推測が正しいだろうことを示していた。
思考力のある人間なら、おそらく、回復や援護系の人員を最初に叩くことが一番効率的だと判断するから。
さてさて石像を動かしている動力源、人間で言うところの心臓部分はどこかな、なんて飛んできた魔道に反撃で答えながらテニーチェは周囲を見渡す。魔力の一番多いところという単純明快な答えで済めばいいが、どちらかといえば確信寄りでそれはないだろうと考えている。
テニーチェは知っている。ここエクスファラン草栽培施設を要塞化した人がどんな性格をしているのかを。
裏表なさげに見えて、実は全部計算づくとかいう悪魔の所業を笑顔でこなし続けていた彼女のことを。
そんな要塞設立者の性格的に、なんでもなさそうな部分に石像を壊すための核が隠されているのだろう、ということも容易に想像が出来た。じゃあどこかと問われれば、流石に指さして答えることは出来ないが。
そうっぽいところを片っ端から魔道で消してくのもありだが、核が見つかる前に魔力が底をつきそうだ。だったら石像そのものを消したほうが速かったんじゃないの? なんて結末にはしたくない。
また頭使う仕事かぁ、と僅かにげんなりしつつ、しかしこれが仕事というものかと頭を切り替えて、テニーチェは最終守護の部屋探索を続けた。




