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仮面をつけた王宮魔道師団の長  作者: 叶奏
合宿@四季魔境
23/95

二十三 天候変化



 固定砲台役の方はひとまず放っておこう。

 なので先に遊撃役の攻略法を考えることにした。


 さしあたっての問題といえば、無論、姿が見えないこと。五人の属性が既にわかっていることから、闇か水であると考えられる。氷属性の可能性もなきにしろあらずだが、たしか姿を隠すのにも属性的特徴で辺りの空気が冷え込むはず。今の天気はサンサン太陽の真夏の晴れ晴れ昼間。温度の調節がわりと難しいらしい氷属性での姿を隠す魔道はないと判断してよさそうだ。

 そうすると、やはり水か闇かのどちらかになる。水は空気中の水分量を、闇は周囲の景色の具合をと、双方ともにクアットホワライ魔境の移り変わる四季の中においては通常とは違う難しさを秘めている。


 戦いながら探るのもひとつの手だが、と考えたところでふと思い至った。

(両方を使っている可能性は?)

 ない、とは言いきれなさそうだ。

 水分量を操れば自分の姿だけでなく、周囲の景色を変えることも出来る。そして意図的にあらかじめ決めてあった通りに変えるなら、闇属性で周囲に体を溶け込ませるのも格段にやりやすくなると簡単に予測できた。


(でしたら)

 魔力の残量を確認しつつ、テニーチェは飛んできた魔道を消す。

(天候を変えてしまうのも、一つの手ですね)

 思えば天気にあまり変化がない。四季魔境で三十分も真夏の太陽が続いているなんて、おかしい。

(全体訓練が始まる前から団員たちで天気をすでに変えていたのでしょう。維持だけならば、練習さえしてしまえば一人でも可能でしょうし)

 逆にいうと、雨でも降らせちゃえば隠れている団員も炙り出せる。


 魔力もここら一帯の天気を変えられるくらいなら全然残っている。もちろん、その後に戦闘で魔道を惜しみなく使えるくらいに。

 攻防の手は休めないように、テニーチェは魔道を練り始めた。空気中の水分量をすぐに変えられるような雨を。テニーチェの使える魔道の中からだと急激に冷やすことで雲を作り結果的に雨を降らせる、というものになるが。あまり冷やし過ぎたら今度は氷属性で隠れられるかもしれないから、雪にはしないでおこう。


 イメージが固め終わると、すぐに発動の準備に入った。

 闇属性の魔道を使っていた右手を対象先の空に伸ばすと、口を開く。

「――――」

 声なき音。

 眩い太陽が、瞬時にして曇天に隠される。


 その間も油断すること無く周囲に目を配っていたテニーチェの視界に、人影が映り込む。一人、二人、三人。残りの四人目と五人目は見当たらない。予測通り、地面に潜って隠れているのだろう。

 ザアァァァ、と冷たい滴が零れだした。仮面にへばりつく前髪と横髪は放置したままに、テニーチェは姿を現した三人の団員を狩るべく地面を蹴る。


 突然のことに驚き固まっている団員に、闇属性の魔道で殴りかかる。少年は慌てて氷属性の魔道で対処しようとするも、テニーチェの方が断然速かった。ごグッと重い音に軋めきながら、団員は顎にアッパーを喰らう。

 イグール・アトリボナやアウウェン・トルス=ブロントロスの時と同じように、トドメの闇属性魔道は忘れない。痙攣した後、気絶したのを確認できた。


 あと、四人。

 先ほどの団員が氷属性であったことをしっかり念頭に置きながら、次の攻撃に移る。

 さすがの団員たちも立ち直ってきたのか、止んでいた攻撃がまた放たれ出す。避けて、時に魔道で消して。次に狙っている団員は闇属性の使い手らしく、見るからに当たれば状態を崩しそうな弾をバンバン撃ち込んでいた。


 残りの一人は、ヒュドア・ウィルフィーア。

 水属性の魔道使い。


 この二人を叩ければ、遊撃役は全滅と考えてよさそうだ。

 気を抜かないようにと息を吸い込むと、テニーチェはまず闇属性の団員に衝撃を与える魔道を発動させながらの掌底を繰り出した。



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