二十二 知的攻略
少し短めです。
姿を消す魔道といっても、色々な手法がある。オーソドックスなものとして、光属性で周囲の光をねじ曲げる方法、水属性で辺りの水分量を変化させて光の屈折率を変えることで光属性のと結果的には同じような効果をもたらす方法、闇属性で自らを見えるようにしている反射光から風景の色のみを残しそれ以外を暗くする、というのは結構難易度が高い方法だ。
そして手法ごとに解除する手順も変わってくる。アウウェンと戦ってきたときに飛んできた魔道の属性は、氷に水、土と闇、あとは風。記憶の限りだと、少なくとも土や風に姿を消す魔道はない。ただ土属性の魔道には不自然さ無しに地面に潜れるものが、そして風属性の魔道には結構遠く離れた対象への探知が出来るものがそれぞれある。
(協調性)
第七にはほとんどどころか全く無かった概念。
けれども今は、どうだろうか。
脅しと短期決戦の成果とはいえ、集団魔道は使えるようになった。
二つ目の全体訓練では第七王宮魔道師団全体で三時間、クアットホワライ魔境の天気を維持することに成功した。
それから今日まで、あれだけアージュスロと訓練したがっていたアウウェン・トルス=ブロントロスさえも姿を見せなかった。おそらく、いやほぼ十割の確率で対テニーチェ戦に向けて対策を練っていたのだろう。
(主力は最初から姿を消し、残りで私の力を削れるだけ削る、でしょうか)
イグール・アトリボナとアウウェンに近接でケリをつけたことで、多少ながらテニーチェの脳みそは疲れを主張している。姿が見える団員を気絶させる為に魔力も四分の一ほど使ってしまったし、彼ら彼女らの目論みは完璧とはいえないまでもしっかりと効果を発揮していた。
何より今までテニーチェが遠距離での攻撃ばかりしてきたというデータを踏まえ、近接に持ち込まなければ下手すれば負ける、という状況を作り出したのは、間違いなく計画によるものなのだろう。
ならばきっと、他の団員に魔道をかける、という手法も用いている。
この状況下で鑑みると、
土属性の魔道使いが自分も含めて五人を地面に潜らせ、風属性の魔道使いがテニーチェの居場所を知らせ、他の三人と共に攻撃をしているというもの。
あるいは、
闇か水属性の魔道使いが五人の姿を消し、風属性の魔道使いが位置を知らせながらも共に攻撃をしているというもの。
もしくは、その両方。
(固定砲台役と遊撃役とで分けた方が、いずれか一方が潰されても負けにはなりませんからね。それに、今も動き回って攻撃はしていますが、三人しか見当たりませんし)
残りの二人は、どこか地面に潜っている、ということが、可能性としては一番高い。
すると次に問題となるのは、どの属性が遊撃担当でどの属性が固定砲台になっているか、だ。
(ああ、ですけど、こちらに関しては攻防を繰り返しながら、相手からの攻撃魔道の魔力と近くに感知している人の魔力を照らし合わせて探れば良さそうですね)
残りは五人だけと呼ぶべきなのか、まだ五人もいるというべきなのか。
急に思考を廻したせいで気持ち痛みだした頭を軽く抑えつつ、テニーチェはさらなる闇属性の魔道を発動した。




