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仮面をつけた王宮魔道師団の長  作者: 叶奏
合宿@四季魔境
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十六 全体訓練、そのに……?



 二回目の点呼かつ全体訓練の時間だ。


「それでは点呼を開始します」


 第七王宮魔道師団、全員揃っていた。さすがの彼ら彼女らも第七を辞めさせるのは嫌らしい。テニーチェもいきなり辞めろと言われたら困る。

 たぶん団員たちが辞めたがらない主な理由は、各々の目的のための魔道探求を実質好き勝手にやれちゃう第七とかいう居場所を失いたくないことなのだろうが。

 テニーチェが辞めたくない理由は、単純に美味しい第七のご飯が食べられなくなるからだ。まぁ、辞めてはならない理由もあったりするけど。


「今回の訓練では、全員で協力して三時間、決められた範囲の天候を同じものに保つことです」


 内容は、普通ならそこまで難しくもない、時と場合によってはやること無しで終わる可能性だってあるもの。四季が選り取りみどりなクアットホワライ魔境ならではの訓練である。

 今回の合宿にあたって、全体での訓練は協力しなければならないもので計画している。第七の一番の弱点は協調性にあるからだ。


「天候は無難に晴れ。気温は春相当で、大気の流れも穏やかなものでお願いします」

 ちなみに今の天気は猛吹雪。晴れと真逆と言ってもいいくらいに荒れちゃってる。


「魔道による天候操作は、最悪魔力で圧しきればどうにかなるでしょう。皆さんもそれはご存じかと思います。故に先ほども申し上げた通り、三時間という時間を設定させていただきますね。ここにいる全てで協力しあい、しっかりと成功させてください。

 一度でも指定の天候から外れた場合、一からやり直してもらいますので」


 つらつら説明していくテニーチェの前で、団員たちは皆一様に虚ろな目をしていた。どうしても成功するビジョンが見えなくて。

 一度言葉を切ったテニーチェは、そんな第七団員の様子を眺め、そっと息を吐いた。


「今回は以前の集団魔道とは違い、私がなにか構想を練っていたりはしません」


 何も映していなかった瞳たちがさらに光を失っていく。

 ですが、とテニーチェは声を張る。


「どうすれば晴れを作れるのか。つまり、どうすれば春のような気温と湿度を保てて、全くの青空な快晴ではなく適度に雲を空に浮かべられて、風も程よく吹かせることができるのかを考えればよいのです。

 上記を満たせるような様々な原理について、ここにいる誰か一人は知っているはずです。一つのことに対して興味も含め特化しすぎたせいで魔道師団としての協調性を見失ってしまった皆さんのことです。裏を返せば、一人ひとりの持つ知識もバラけているはずですよね?」


 大人数で組織魔道すら使える第一王宮魔道師団なら、集団魔道を使って天気を操ったかもしれない。

 少数精鋭ながら協調性のある第二王宮魔道師団なら、一つの方向性に固めた単体魔道による相乗効果で晴れの状態を保ったのかもしれない。


 けれどもここにいるのは、三十人足らずで協力しあうことを苦手とする第七王宮魔道師団。


 なら、第七は第七らしく、他の団には出来ない方法で春の暖かみを作り出せばいい。


「私も含め、今から十五分間で全体訓練を成功させるための話し合いを行います」


 突拍子がなくてもいい。

 非常識に包まれていたっていい。


 第七の団員たちの瞳には、確かな希望の灯火が宿っていた。


 討論では、やはりテニーチェの言っていた通り、様々な知識に基づく色とりどりな案が飛び交った。途中何度も行き詰まったが、その度に思ってもみなかったところから解決策が提案される。

 世界破り以降、協力して何かを成すことなど全くやってこなかったが、団員たちは皆楽しそうにしていた。


「空はこれで大丈夫そうだね」

 水属性のヒュドア・ウィルフィーアが目を細める。


「おうよ。気温もこんなやり方で変えられっだな」

 火属性のイグール・アトリボナが軽快な笑い声を上げる。


(わたくし)、ほっん番ではやることもそうあっりませんけど、トルス(かみなり)の名を持つ伯爵令嬢とっして、お役に立ててうっれしいですわぁっ」

 雷属性のアウウェン・トルス=ブロントロスが満足そうな笑みを浮かべる。


「さぁ、皆さん。準備はよろしいですか?」


 二回目の全体訓練が、始まる。



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