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仮面をつけた王宮魔道師団の長  作者: 叶奏
合宿@四季魔境
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十五 紙吹雪の舞う中で

 今日少し短めです。



 虹がかかっていた。かと思ったら、雲が立ち込めてきた。さすがは四季魔境、普通では考えられない天気の移り変わりにも慣れてくるスパンでの天候変化である。

 雨が降ってくると読んだテニーチェはすぐさま魔道を傘代わりに繰り出す。直後に降ってきたのは、雨じゃなくて雪だった。体感気温がそこまで低くないからてっきり雨だと考えていたのだ。寒くないのに雪が降るのは初めてかもしれない。


 しんしんと舞い出した白雪。淡い風になびかれ踊るそれらはなんとなくにも綺麗だと感じてしまうもので、ほぅ、と息を吐いてしまう。呼気の色はほんわか白銀色。たぶんこれは寒いからじゃなくて、テニーチェの魔力が混ざっているからだ。合宿が始まって以来、起きている時は基本魔道を使っているせいだろう。普段より増し増しで魔力が体内を循環しているのだ。

 季節でいえば秋の中頃くらいの、ちょっとばかし冷え込んだ、けれども気持ちのいい涼しさが辺りを流れている。宙に浮いたテニーチェはその気温に心を委ねつつ、正面向かって三時方向と五時方向に攻撃の魔道を放った。片方は空を飛んでいた鳥を狩るための機能性に特化したもので、もう片方は絶賛訓練中のアウウェン・トルス=ブロントロスたちに向けたちょっと威力控えめだが簡単には防げないように工夫したものである。アウウェンはとても楽しそうにテニーチェからの魔道に向き合い、いなしきれずに当たっていた。団員たちもまだまだ成長の余地は残されているみたいだ。


 柔く散る紙吹雪のような雪をくぐり抜けながら、今度は地面を駆けていた白い兎を狙い撃つ。今日の夕食は鶏肉じゃなくて兎肉でもいいかもしれない。鶏肉は冷めても美味しい唐揚げにでもしてもらおうか。そんなことをつらつら考えつつ、さらに二撃の魔道をヒュドア・ウィルフィーアとアージュスロに向けてぶっ放した。なんだか念話越しに竜もどきが文句を言ってくるが、だったら訓練なんかに参加しなければいい話である。バスの中で一番に声をあげて喜んでいたことを、テニーチェはまだはっきりくっきりと覚えていた。

 とはいえご飯を食べる時用の半分仮面が壊れるのは困るので、どうしても気が向いてしまったとかじゃないなら、アージュスロに魔道を撃つのはやめておこう。ちなみに今のテニーチェは顔全部を覆うタイプの仮面を着けている。美味しすぎる豚の唐揚げを食べていた時は半分仮面を着けていて、今着けている全部タイプが竜もどきな形を取ってアウウェンたちと戯れていたのである。


 ぐっと伸びをする。

 今日は合宿二日目。バスの中も入れたら、一週間と二日目だ。明日は昼から点呼と全体訓練がある。


 合宿前に練っておいた計画を今一度反芻しておこうかと考えつつ、テニーチェは三発の魔道を団員二人に向けて発動したのであった。


 気付けば雪は止んでいて、快晴の蒼空が広がっている。



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