南美と結美、南美と留美
ケンカはしませんが……?
7話です
昼休みになると今まで僕は優二と二人で昼飯を食べていたが、南美がこっちに転校して来てからは3人で食べるようになった。
「おし、もう3人揃ったからもう食べようぜっ。俺はもう腹が減って減って」
「お、おう」
「そうですね。食べましょうか」
そして我々は各自準備した弁当を食べ始めるのだが、僕は南美のことで最近気になることが出来た。それは彼女がまだ女子のグループにどこにも属してないことだ。
転校した当初はまだこっちにきて慣れてないから特に気にならなかったが、もう1週間ぐらいになると気になり始めた。
「ん? どうかしたか光範? やけに陰気な顔して?」
「え? いや別に?」
「光範様、何かお悩みでもあるんですか? 相談事なら私がお訊きしますよ」
なーちゃんのことで悩んでいるんだけどな~と心の中で思いながら、いや、なんでもないと二人に返事をした。
「あ、今日は光範様が好きな甘めの卵焼きを少しだけ作って参りましたの」
「え? そうなのか?」
「はいっ」
「お、こんな可愛い女子から手料理を作ってもらえるなんて、光範君に妬けるね~」
相変わらず優二がにやにやしながらからかってくる。確かに許嫁が僕の為に好きな料理を作ってくれるのはとても嬉しいことだが、とはいえ他の生徒達がいる所でそういうことをするのは少し照れくさいものだ。
「はい、光範様口を開けて下さい」
「ん? くーくぁ(こうか)?」
「はいっ」
僕の大きく開けた口の中に彼女は卵焼きをひょいと入れる。ぱくっと食べた僕は少し生っぽいがふわっとした食感を噛みしめていると口の中に砂糖の甘みがじゅわ~っと染み出てくる。
「美味しいですか?」
「うん。美味しい」
「もう一つ、あ~ん」
「……いや、流石にこれ以上ここではやっぱり恥ずかしい」
「むー」
「はい、ミー君、こっちもあ~ん」
「へ?」
「!?」
なんでか南美の反対側で僕の隣の席に結美がいた。
「な、なんで結美が……?」
「もう二人を見ていたら我慢が出来なくて」
確かに結美のいつもいるグループを見ても彼女はいなかった。それに結美の友達連中はこっちを見てやけににやにやしている。
「じゃあ、ミー君あ~ん」
「あっ、ずるいっ。はい、光範様あ~ん」
二人が口元まで押し付けてくるから仕方なくそれぞれの料理をぱくりと食べた。
結美のは唐揚げで、南美のは卵焼き。一応僕の好みに合わせているので、やはり好きなのは南美の卵焼きなのだが、どちらも美味しい。
「私の唐揚げ美味しい?」
「あぁ、もちろん美味しかったよ」
「私のも勿論美味しいんですよね?」
「え? あぁ、それはさっきも言った通りだよ?」
「……」
「……」
なんだろう、両方を褒めたのに二人ともやたら険しい顔をしている。
「……どっちも美味しくて良かったわ」
「えぇ、そうですね……」
なにやら機嫌が悪いが、これ以上の悪化にはならずに済んだ(相変わらず優二はにやにやだ)。そして放課後になると(結美は部活の為不在)、僕と南美で留美のクラスに向かう。ケガをした留美と一緒に帰るためだ。
「あ、ミー兄!」
「おし、帰るぞ」
「来てくれたんだ。嬉し……あんたもいるのね……」
「それはね。同じ帰り道だし」
コツコツと松葉杖を地面に突く音を聞きながら留美のペースに合わせて、3人で一緒に歩いて帰る。話は弾まず皆そろって黙ったままだ。
(なにか話題を作らないと……)
「……脚はどうだ? まだ痛いか?」
「え? うん。やっぱりまだ痛い」
「……そうか」
「けど大丈夫。これくらいで弱音を吐いていたら、勝てるものも負けちゃうわ」
「……」
「それに~」
留美は僕の肩に頭をそっと優しく沿わしてくる。
「ちょっ!?」
「る、留美!?」
「これだけミー兄に甘えられるのは今のうちだしーっ。……なに? 今弱ってる私に何か文句あるの? 許嫁さん?」
「~~~!!」
そうしているうちにうちのアパートに着いたが、残念ながらエレベーターがない。だから留美の肩を僕が持ち、松葉杖を南美が持って階段を上がった。登って留美から離れようとしたら、彼女は駄々をこね始めた。
「もう少しそのままが良い~~」
だから仕方なく僕はうちの部屋の玄関までこの体勢で連れて行く。
「じゃあミー兄、次は靴を脱がせて」
「はえ?」
「お願い♡」
「……」
「……はぁ、仕方ないな。大分脚が良くなるまでだぞ? はい、脱がせた。……あ」
留美が少し股を開いていたものだから、スカートの中から白の布が見えた。僕は急いで目線を反らしたが、手遅れだった。彼女はにやにやしながら、
「ミー兄のH♪」
「いや、だってこれは偶然の賜物で……」
「……光範様」
「は、はいっ!?」
慌てて南美を見ると、彼女は軽蔑のような目でこっちを見る。少し背中が冷やっとする。
「他の女といちゃいして喜んで……。光範様のスケベ……」
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