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救世主現る!

助けます


41話です

「あーーーーー!! もう!!」


 僕は一人公園のベンチで項垂れながら、なんとも言えない苛立ちが出て、ため息をつく。


「まったく……。なーちゃんと許嫁を終えたら、ここまで距離感が出来てしまうとは……」


 一体僕は彼女と今まで何をしてきたんだろうか。テレビの映像が二倍速に流れるかのように思い出を振り返る。


「僕達は結局許嫁の繋がりだけだったのだろうか……?」


 僕は色々と考えたが、何もまとまらずとぼとぼとアパートに戻った。


「ただいまー」

「おかえりー……」

「もう、帰ってたのか?」

「うん……」


 なんだろう、留美のやつやっぱり元気がない。家庭の問題ではない以上、やっぱり……。


「学校で何かあったか?」

「……! ……何もないわ」

「……そうか」


 これは何かあったな。しかしここで僕が無闇矢鱈にちゃちゃを入れる訳にはいかない。さて……、


「結美、話がある」

『なになに、お家デートの誘い?』

「実はな……」


 僕は留美の状況を結美に説明した。


『……なるほど、分かったわ。後輩とかに色々訊いて回ってみるわ』

「ありがとう。助かるよ」

『なに言ってるの。幼馴染じゃない』

「……あぁ」


 そして学校に行く事に結美に調べてもらった話を聞きながら、留美にまつわるクラスの関係性をまとめていった。


「……なるほど、やはりいじめが……」

「そうみたい」

「またか……」


 中学の頃に男子によるイジメがあったが、今回はそれ以上に手荒そうだ。以前のその男子は転校したてで友達が少なかった留美にちょっかいを出していたが、それがエスカレートしてイジメに発展した。しかし今回のは……、


「妬み……かな」

「……」


 留美のあの容姿だ。一年の中でもかなりモテる方だろう。それに自己主張は激しい方ではないから告発したりしないんだろう。


「どんかいじめか分かるか?」

「うーん、上靴の中に画鋲とか、服をゴミ箱に捨ててるって聞いてるわ」

「……そうか」


 表にせずに陰でこそこそするとはなんて卑劣で陰湿なんだ!

 そして留美の陰口を言っているかいつもと違う下駄箱にいる人か朝早くに来ている人のグループを手当たり次第当たってみた。すると目撃証言が出た。


「じゃあ、このグループが怪しいな」

「ふむ、なるほど…」

「とりあえず明日の朝から見張ってみるよ」

「分かったわ。頑張って」


 これは慌ただしくなってきたぞ!


「……」


 それから翌日になり、僕は早朝6時に学校へと向かった。そして留美の靴箱の奥には小型カメラを設置し、学校の近くのファストフード屋で待機した。

 それから1時間半経っただろうか。そのグループと思しき女子の一人が留美の靴箱に昆虫を入れていた。僕は急いで学校に急行し、彼女のクラスに行った。


「おい!!」

「な、なに!?」


 そいつはびくっとなりながら、僕をジロジロと見る。


「お前、岸田留美の靴箱に昆虫を入れただろ?」

「!?」


 彼女はビクビクしながら不安げに僕を見る。


「な、なんのことだかさっぱり……」

「証拠は掴んである。これを先生にバラす」

「え!? そんな……」


 彼女はみるみる顔面蒼白になる。しめた。


「バラされたくなかったら、昼休みに体育館裏へグループで来い。話がある、分かったな?」


 彼女は物凄い勢いで首を縦に振る。そして時間があっという間に過ぎて昼休み、僕は一人体育館裏に行く。少し待っているとパリピなグループが来た。

 あいつが頭か。

 トップと思しき彼女は少し身長が低いが、茶髪に染めてすごいクルクルと巻いて、集団の真ん中を歩いている。


「なによ、私を呼んだのはあんた?」

「そうだ。岸田留美をいじめてるのはお前のグループか?」


 彼女はへっと笑う。


「いじめてるなんて大層な。ただからかってるだけよ?」

「からかってるだけで画鋲を入れたり、服をゴミ箱に捨てたりするのか!?」

「……」


 彼女はきっと僕を睨む。


「あんた……あの子のなんなの?」

「僕はあいつの兄だ」

「へぇ~。彼女とは全然違う顔のあんたみたいな凡庸な兄がいるのね」


 周りはクスクスと笑う。


「で、私を呼んだ理由は何? 呼ぶだけじゃあないんでしょ?」

「あぁ、今後留美にいじめをしないことが条件だ。そしたらさっき撮ったデータを削除する」

「はいはーい。もうしませんよ~」

「本当か? もう靴に画鋲を入れたり、服をゴミ箱に捨てたりしないか?」

「えぇ、もちろん」

「このグループのみんなもしないと誓えるか?」

「えぇ、ねぇ。皆?」

「はーい」

「分かった。削除しよう」


 そして僕は靴箱に仕込んでおいたビデオデータを削除した。


「やったわねっ。そらーっ、かかれ!!」


 彼女は仲間に突然叫んで、このグループが僕を囲む。


「お、おい何して……」

「あんたをここでシメるのよ!!」


 そして僕をぼっこぼこと殴り、蹴ってくる。

 ドカ、バキッ、ゴッ!!

 なかなか攻撃慣れしてるのか、良いパンチが炸裂する。結構痛い……!

 くそ、我慢だ我慢っ。このままいけば、こっちのもんだ……!

 そして僕はダンゴムシのように体を丸め込むが、横腹、背中を攻められて結構だるい。

 くっ、まずい……。呼吸がしんだくなり、意識が朦朧として……、

 とその時、

 ヒュッ…と人が宙を舞った。


「きゃっ!」


 どてっと地面に落ち、その子はあられもない姿でこけた。そしてバッタバッタとこのグループのメンバーが倒れていく。その倒していく剛気な女の子の姿を見て僕は驚いた。

 ま、まさか……、


「な、なーちゃん……??」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

もうそろそろで終わりそうなので、今までの応援ありがとうございます!

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