光範と睡眠薬
佳純にとって最大の山場です!
39話です!
僕は午後の授業を使って、一つの結論を出した。
(よしっ、彼女に告白しよう)
そして放課後になって、クラスのみんなと文化祭の準備をしながら彼女に告白するタイミングを見計らっていた。
しかし……、
「タイミングを逃した~……」
今日の僕が出来ることはすべて終えてしまい、一方で彼女は別の用事に取りかかっていた。僕はしょぼんとなりながら、自分のアパートへと戻って行った。そして部屋に戻って、しばらくのんびりしていると、ノックの音が聞こえる。
「はーい」
「光範君……」
「君は、か……」
いや待て待て。ここで間違ってしまってはいけない! そう思った僕は正しく二人を見分けるためにじっと彼女を見たが、彼女はふっと目を逸らしてしまい、彼女と目が合わない。
「……あの、取り急ぎ話したいことがありまして……」
「……なに?」
「……少し込み入った話なので、私の部屋へ来てくれないでしょうか?」
「……」
目を合わしてくれないから、どっちかが分からないが、……その話はもしかしたら例の『許嫁の件』かも知れないので、とりあえずここは指示に従っておこう。
「……分かった。行く」
「……」
そして僕は彼女に誘導されて、久しぶりに上村家の部屋に入った。南美が相変わらずちゃんと整えている部屋の装飾が和風のしつらえになっており、ゆったりと落ち着く。
彼女は無言でお茶を机に置く。僕は少しいぶかりながらも、彼女を目で追いながらズズッと差し出されたものを飲んだ。動作する仕草が少しぎこちない気がした。
もしかして……。
彼女は僕の対面に座り、頭を下げながら僕に言う。
「この前はごめんなさい。遊園地で怒鳴ってしまって、少し血が上りすぎましたわ」
「いや、いいよ別に。気にしないで」
どうやら本物の佳純のようだ。
「それで話というのは許嫁の話です。姉さんから訊きました」
「!」
「私も賛成ですね。一度許嫁を解消すべきと思いますね」
「……」
僕は彼女の話を聞きながら、ぐぐっとお茶を飲む。
「君はどうして賛成なんだ?」
「単刀直入に言うと、姉さんと貴方とでは釣り合いが取れてないという点ですね」
「……というと?」
「例えば姉さんは美人で成績優秀、スポーツも出来て、家庭的。それに引き換え貴方はぼんくらでぐーたらで優柔不断できちっとしていない」
「…………まあ、確かに」
「とくに妹としては他の女子に優柔不断なところが許せないわ。姉さん一筋ならいざ知らず、あっちにほいほい、そっちにほいほい」
「……」
「それに貴方には勿体ないほどの義妹と幼馴染がいるのだから、姉さんとの許嫁関係を解消し、二人のどっちかで手を打てばどうなのかしら?」
僕はぐいっとお茶を飲み干して、彼女の目をしっかりと見ながら言った。
「…………それはないな。もう僕はどうするか決めたから」
「……ふーん、そう。そうなんだ……。それなら試させてもらうわ」
「? ん!? ……何……を……!?」
僕は急に睡魔に襲われる。
……な、なんだこの眠気は……急に眠たく……。
「あら、効き目が来たみたいね」
「……なに……を…しこ……」
彼女はにやけたのを最後に視界が暗くなる。
「おやすみー。光のり…………」
◇◇◇
「光範様、お早くー」
「待ってよー。なーちゃ~ん」
「どうですか。ここの川は?」
「うん。とっても綺麗だよー」
「水遊びしましょ~。それー」
「あっ、やったなー。それー!」
「きゃっ、冷たいです、光範様~」
「あはは、……わっ!!」
僕は何かの力で背中を強く押され、川にダイブする。
「光範様、光範様ー!?」
「……ぶはっ!! 溺れるところだったー……」
そして僕は背後を見ると、そこには僕達とよく似た歳の子が憎悪の目をして立っていた。あの顔は……、
「!?」
僕ははっと目を覚まし、まっすぐ正面を見ていると視界の脇に影が二つあって、
「あら、ミー君目が覚めた?」
「あ、おはよう。ミー兄~」
「んえ!? お前らがどうして僕の隣に……!?」
よく見たら布団の中にいるし! 僕の布団じゃない、一体誰の布団……。
そして右側からパシャパシャと音が鳴り響く。見るとスマホをこちらに向けて、笑っている女子がいる。
「ふふふっ、あははははっ!! どうよ、光範今の気分はー!?」
「佳純……なのか!?」
「そうよー? これが本当の私なのよ!!」
そして僕は南美と遊んだ頃にいたもう一人の少女のことをフラッシュバックするように思い出した。
僕を川に突き飛ばした少女、南美が転んだ時に僕を非難した少女、他にも隅っこの陰から僕に嫌な目を向けていた彼女を思い出す。
「そうか……。あの時にいつも怪訝な表情を見せていたのが君だったのか……。…けどあの頃の佳純は確かあまり外に出ず、部屋に籠もってなかったか……?」
「そうね、あの頃は確かに部屋に籠もりがちだったわ。でもね、それをしなくなったのは姉さんのお陰なの」
佳純は南美への想いを吐露した。
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