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南美の想い

さて南美との関係は……?


36話です

 ピピピピッッ!


「おはよー! ミー兄ー!!」

「あ、おはよう……」

「……」


 留美はキョロキョロと周りを見る。


「……どうかしたか?」

「あ、いや……南美さんいないなーと思って」

「……あー、なーちゃんは……」


──ちゃんと……私のことに気づいて下さいよ……()()さん


「……」

「……まあ、いいわ。ミー兄ごはん食べよ~」

「え? おう…」


 こうして僕は家族とご飯を食べ、どきどきしながら玄関を出ると、結美と佳純と幸い南美もいたが、なにやら少し気まずい。


「あ、おはようミー君」

「おはよう」

「おはようございます……」

「……おはよう」


 そして5人で登校するのだが、南美がいつもより一歩ほど距離を感じる。そして登校中、いつもと違う空気を感じてか、あまり喋らない、ただ一人を除いて。


「だからね姉さん、真鍋が~……。あの時のさー、優子ったら~……」

「えぇ、えぇ……」


 佳純は南美の腕を組んで楽しそうに話し、逆に南美は優しく佳純の話を聞いていた。つまり配置的には留美、僕、結美空間と南美、佳純空間に分かれた状態になった。留美や結美はちらちらと僕を見てはあまり話をしないし、僕もただ前を見て歩いているだけだった。


「どうかしたか相棒?」


 優二がぼ~としている僕に気づいてか、2限目の休み時間に僕の席に来る。


「いや別に…」

「別にって顔じゃないぞー? どうしたコ○ナか?」

「馬鹿、ちげーよ」

「じゃあ、なんだよ? この優二様に言うてみそ」

「……なーちゃんとケンカした」

「ケンカーねえ……」


 南美の方を見ながら、しかし優二はなにか納得いってない顔だった。


「誤魔化すな。なんかいつものケンカ中と違う感じだぞ?」

「……」

「さぁ、言っちまいなって。このままじゃあ修復どころか元に戻れなくなるかもしれないぞ?」

「……優二」


 僕は親友の友達想いの言葉を受け、小声で優二に殊の顛末を話した。


「…なるほど、妹ちゃんにはなにかあると思っていたが、そういうことだったのか」

「なに? お前なにか気づいてたのか?」

「まぁ、薄々な~」

「……」


 さすがは優二。だてに50人の女をはべらせてないな。


「それよりお前の言動が情けない!! これじゃあ愛想つかれるのも当然だぞ!」ビシッッ!

「!」

「今からでも遅くない。ちゃんと南美ちゃんのこと見てやれ」

「……」


 そう言った彼は笑いながら、この場から去って行った。

(ちゃんと見てやれ……か。他の人にも言われたような……)


──その子のことをちゃんと自分の目で見て、それから彼女のことを考えてあげなさい


 あぁ、そうか。そうでしたね瀬戸先生……。

 それからと言うもの、僕はしばらく二人のことをよく観察した。毎日どの時間に授業中も、休み時間中も、友達と話している時も。


「ミー君」

「結美」

「南美のこと見過ぎ。そんなことすると周りから不思議な目で見られるよ」

「え? そうか?」

「…………それよりさー」

「おーい、光範~」

「!?」

「ん? どうした優二」

「あ、なんか話してた?」

「なんでもないわよ、馬ー鹿。ふんっ」


 結美は颯爽と友達のところへ行く。


「…で、どうした?」

「ん? いや、観察して何か分かったかなーと思って」

「んー、普段学校での二人は意外と違った感じでいるからな~。違うのは分かるんだけど……」


 優二は頭を振りながら、ため息をつく。


「まだまだだな~。一体彼女と今まで何してたんだか」

「……」

「このままだと時間の問題だな。許嫁の愛情もここまでか…」

「……」


 キーンコーンカーンコーン……、放課後のチャイムが鳴り、学生達の閉鎖された集団空間から解放された声が聞こえる。


「あー、終わった~」

「どこか寄り道するか」

「私部活~」


 そんな他愛のない声を聞きながら、僕は教科書類をカバンの中に入れていると、佳純を呼ぶ南美の声が聞こえる。


「佳純帰るわよ」

「うん、姉さんっ」


 嬉しそうに言って南美の後を追う佳純と目が合い、彼女は僕を見ながらニヤっと笑う。

 僕はため息を吐きながら、一人とぼとぼとと家に帰る。そうしたら後ろから声が聞こえた。


「光範く~ん」

「! 君は……」

「やだな~、佳純ですよー」


 僕はその名を聞いて怪訝な気持ちになる。確かに彼女の持っているカバンは佳純のカバンだ。だが一緒に帰ったはずの南美はいない。またなにか企んでいるつもりか?


「やだなー、そんな怖い顔してー。何もしませんって~」

「本当に?」

「はい、それでですね~、少しあそこの喫茶店に行きませんか?」

「……」


 彼女を知る上で持ってこいと思った僕は彼女に誘われるまま、近くの喫茶店『ラ・ムール』に寄る。


「で、話とは?」

「姉さんの話です」

「なーちゃんの?」

「はい、姉さんは許嫁という関係についていたく悩んでいます」

「!」

「彼女は光範……君にとって許嫁は親が勝手に決めたことで、貴方が彼女のことを本当の意味で愛してないのではないかと思っています」

「!? まさか、そんな……」

「ならどうして他の子にうつつを抜かすのですか!?」


 彼女はキッと睨む。


「……」

「許嫁というのがもしかしたら光範君にとって負担になっているのではないだろうか、という話です」

「……」

「一度貴方を自由にさせようと」

「つまり、許嫁関係を終わらすと……」

「作用です。…さて、光範君どうしますか?」

「それは……」


 僕はどう答えたら良いかと思った時にふと彼女の顔を見た。そして目の前にいる彼女のその目はどこか寂しく、どこか慈悲のある目だった。そう、それはまるで……、


「……なーちゃんか?」


 彼女は目を開く。


「ま、まさか、何を言ってるんです!? 私は佳純ですよ、彼女な訳……」

「いや、そんな目をしてくるのはなーちゃんだろ?!」

「~~用事を思い出したので、この辺で失礼します!」


 彼女はカバンを持って、急いで喫茶店から出て行った。


「あ、おい、なーちゃ……」


 僕が声をかけた時には既にカランカランとドアの寂しい音だけが店内に鳴り響く。その場に僕は立ち尽くしながら、彼女の言葉を思い出し、気持ちを考える。


 なーちゃん、今の話は一体どういう気持ちを示して……?

ちゃんと光範が代金を支払いました

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