彼女をデートに誘う
果たして光範は違いを見つけたか?
34話です
僕は南美と一緒に学校近くのデパートへと向かった。しかしこの時の自分は買い物よりも考えの世界に没入していた。
「光範様見て下さい。これ可愛くないですか?」
「え? うん、そうだね~」
「これもいいですねー」
「う、うん……」
外の音を聞き流して考えているものの、夜散歩した時や一昨日の僕の部屋に来た南美が南美じゃないと言い切れるものがなかなか確証にまで至らない。
情けない、許嫁なのにそんなことも分からないとかと落ち込まざるを得なかった。
「……光範様、ちゃんと聞いてます?」
「え? あ、うん聞いてるよ?」
「本当ですか?」
「え? うん……」
「じゃあさっき私はなんて言いましたか?」
「え? それは~……」
すぐに答えられない僕をじ~っと見ながら、彼女はむーと言いたげな表情でぷくーと頬を膨らます。
「久しぶりのデートなのに、光範様が上の空では少々寂しいです」
「ご、ごめん……」
そうだよなー。考えに耽って、なーちゃんの今の気持ちにすら気づけてないし、夜の散歩だってこっちの彼女は知らないはずなんだから ……ん?
「じゃあ逆になーちゃんにとって久しぶりっていつぶりだ?」
「え? それは夏休みが終わる前に近所を朝早くに回ったのが最後でしょ?」
「……じゃあさ、生徒会を手伝ったあの日ってどこまで学校にいたんだ?」
「そうですねー、あの時は結構忙しくて、学校を出たのが19:30は回ってましたね」
「お、おい……。それは確かか?」
「えぇ、そうですよ。お気にになるなら、生徒会の方々に聞いてみてくださいよ」
「……」
んん、それなら夕方に会った時の南美から既に彼女じゃなかったということになる。じゃ、じゃああの南美はやっぱり……?
「そういえば……」
「?」
「あの日の20:00前に佳純がどこか部屋から出て行ってましたね……」
「そ、それは本当か!?」
「うろ覚えですけど、確か……」
「……」
それじゃやっぱり彼女は佳純……なのか? い、いやしかし状況的にはそうでも、確固たる証拠が……。それが分からないと、なーちゃんのこと……。
そして僕はまた自分の考えの世界に入り、懸命にあの時の彼女の仕草や言動を思い出す。だが一向に確かな違いが見つけれない。
なにかヒントでもあれば……。
「光範様、光範様ってば!」
「は、はい……?」
「この前から変ですよ? お体の調子大丈夫なんですか? 熱とかないですか?」
彼女は僕の額に手を当てて、心配そうにこちらを見る。
あ、そうだ……もしかしたら……。
「あ、ありがとうなーちゃん。分かったよ! これで大丈夫なはずだ!」
僕は両手でギュッと彼女の右手を握り、気づけた嬉しさのあまりつい南美をじっと見つめる。
「え、いえ……、お役に立てたなら、良かったです……」
彼女は僕から少し目をそらしながら照れた表情をした。そして学校の用事を済ませた後、アパートに戻って通話チャットアプリの方で彼女に連絡した。
『この土曜日、デートしないか?』
そして僕はどきどきしながらしばらく待っていると、返信が来る。
『いいですよ~♡』
よっしゃ!
そして学校で体育祭、文化祭の準備をしていると、瞬く間に土曜日となる。僕は予定時間まで玄関から出て外で待っていると、隣のドアがガチャッと開く。そこには白のワンピースを着たおしゃれな彼女が出てきて、そっとドアを閉めた。
「おはよう」
「おはようございます」
「……やけにそっと閉めるね」
「え? あ、そのn……佳純に気づかれないようにするためです」
「そうか。じゃあ行こうか」
「…はい♪」
こうして僕はあることを確かめるためにこの彼女をデートに誘ってみたのであった。
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