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え? なーちゃん?

なにやらひと波起こる予感?


32話です

「サツマイモプリン?」

「あら、南美さんは知らない? 結美さんとも話してたんどけどさ、今週号の雑誌の特集に載ってた記事なの。あっ、佳純さんはどう思う?」

「そうね。確かに佳純ちゃんの意見も気になるわ」

「うーん、そうねー……」


 登校中にきゃっきゃと彼女達の女子会トークが花開く。佳純がこっちに来てもう3週間近くが経つ。

 転校しだちの時の彼女は僕達とは一線を引き、ほとんど絡むことなく、静かに学校生活を送っていた。しかしここ最近はこの学校での友達が出来たみたいで、そのグループにいるのを見かけるし、その上初めは距離をとっていた留美と結美とも仲良くしている感じだ。

 まあ、僕とは数人で固まっている時に話すぐらいで、二人きりで話したことはなく、まだ少し距離を感じている。

 まあけどこいつらとは仲良く出来てそうで良かったと、僕なりにはほっとしている。


◇◇◇


「え? 頼まれごと?」

「はい、どうしてもと山瀬さんに頼まれまして……」


 南美はときどき生徒会副会長の山瀬さんに頼まれる。元々南美は生徒会に興味を持っており、転校したての頃から時々生徒会の手伝いを行っている。そしてそこで知り合った山瀬さんとは一学期の時から懇意にしている仲で、彼女たっての約束ともなれば無下には出来ない。


「申し訳ありません光範様。今日は一緒に帰ることが出来ません」

「そうか、分かった。それなら早く行ってきな」

「はい。ありがとうございます」


 そして僕は南美と学校の廊下で分かれ、一人下校する。だんだんと日が暮れるのも早くなり、空はもう青から少し赤に染まる夕暮れ時になりつつあった。

 一人で新鮮な空気を吸いながら、とぼとぼとアパートに帰っていると、後ろの方から声が聞こえてきた。


「光範様~」


 この声は…南美だった。


「え? どうしたの、なーちゃん。生徒会の仕事は?」

「はあはあ。予想より早く仕事が終わったので、急いで走ってきました」

「そうか。それはお疲れさまだね」

「はい♪」

「……ところで佳純さんは?」

「さぁ、知りませんね。友達とどこか行ってるんじゃないですか?」

「そうか……じゃあ、久しぶりの二人きりか」

「……はい」

「その……一緒に帰る?」

「! ……はい!」


 そうして南美と一緒に帰ることにした。久しぶりの二人きりの帰り道、僕は少しときめいた。そしてある衝動に駆られる。

(手を繋ぎたい……)

 僕は彼女の手をチラチラと見ながら、そろりそろりと手を近づける。そして彼女の手の甲を触る。

 今だっと思って彼女の手を握ろうとしたら、


「うーーん」


 と彼女がいきなり伸びをしたものだから、スカッと手が外れる。


「え? どうしましたか?」

「いや、何でもない……」


 僕は渋々自分の手をポケットにしまい込んだ。そしてしばらく黙って歩いていると、彼女が言う。


「あの…もし良かったら、佳純が部屋にいる時にこっそり夜二人で少し散歩しませんか?」

「えーと、それは良いけど?」

「では20:30にシカウマ公園の木の下で待ってますから~」

「あ、おい…!」


 そして彼女はさっさとアパートの方へ走って行った。


「なんだ、一体……?」


◇◇◇


 そして夜20:20頃にシカウマ公園に向かうと、その公園の木の下で彼女は黒のTシャツにホットパンツというラフな格好で立っていた。


「お、寒くないか?」

「この気温なら、まだ大丈夫ですよ」


 そして少し公園でブランコしたり、その周りをぶらぶら散歩したりと楽しく二人で過ごす。


「で、どうした急に。こんな時間に遊ぼうなんて」

「なかなか二人きりの時間がなくて。少しの時間でも良いので、光範様と……」

「なーちゃん……」


 手をモジモジしながら下に俯き、そう言ってくれる彼女を見て僕は非常にドキドキする。

 抱きしめたい。今とっても抱きしめたい。

 僕は少しずつ彼女に歩み寄り、手を伸ばそうとする。


「あ、そうそう光範様」

「え?」


 彼女はいきなりムードとは違った感じのあっけらかんとした表情で思い出した様子で言う。


「……な、なに?」

「あのですね、ラ○ンが使えない時に困るので、予備としてこっちのチャットでも私のIDを登録して頂けませんか?」

「え? あー、それは別に構わんが…」


 そして別の通話チャットアプリで彼女のIDを登録した。


「はい、これでもう安心です♪」

「それは良かった…」

「じゃあ偶にはこっちでも連絡するので、それでは帰りましょうか」

「え? もう帰るの?」

「はい。佳純に気づかれるとうるさいので」

「わ……分かった」

「だから佳純には内緒にしといて下さい」

「うん、分かった」


 そしてアパート近くまで一緒に歩き、彼女が先に自分の部屋に戻る。


「ではまた明日ですね、光範様♡」


 そう言った彼女は僕に投げキッスをして、階段を上がり、部屋へと戻って行った。

 な、なんか不完全燃焼だな~…と思いながら渋々部屋に戻った。

 翌日、


「起きて(下さい)~、ミー兄(光範様)~」


 といつものように留美と南美が起こしに来る。


「……おはよう、南美、留美」

「さあ、早く起きて、さっさとリビングに行こう」

「では私は佳純がいるので、部屋に戻りますね」

「あ! なーちゃんっ」

「あ、はい、何ですか?」

「あの……ちょっと耳を……」

「?」

「えーっ!? 二人だけの話、ずるーい!」

「……昨日の夜の散歩さ、なんか物足りなかったから、また別の機会にどっか歩かないか?」


 僕がそう言った後、南美は怪訝な顔をしながらこっちを向いて、普通の話す距離になり不思議そうに喋る。


「一体なんの話ですか?」

「……え?」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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