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嫌な目線

佳純はまだ距離をとってる状態です


31話です

「起きて(下さい)ー、ミー兄(光範様)~!」


 目覚まし時計の音が鳴り響くと同時にいつものように留美と南美か起こしに来た。


「う……うん、おはよう、なーちゃん、留美……」


 そして留美は訝しみながら周りをキョロキョロする。


「……どうした留美?」

「え? いや……、佳純さんは?」

「あの子は朝起きるの苦手だから、まだ寝てるはずだわ」

「ふーん~……」


 すると留美はニヤニヤし始めた。


「な、何よ…?」

「それなら佳純さんの面倒みないといけないんじゃない~?」

「ご心配なく。もう佳純の分のご飯も用意してあるわ」

「…チッ」


 留美さん、心の声が漏れてますよ…?

 そして起きた僕は二人と一緒にリビングに向かうと、佳純がもう制服に着替えて、そこにいた。


「…あら、佳純? もう起きていたの?」

「え? うん。そうよ」

「……そう」


 南美は目をぱちくりしながら目線をおとす。一方留美は自ら住む家に突然やって来た見知らぬ人へ吠える犬のような感じで問いかけた。


「なんで貴女がここに!? 何しに来たの!?」


 佳純は一瞬目を見開いたが、しかし彼女は穏やかな声色で言う。


「いえ、姉さんが部屋にいなかったから、こっちに訪ねてきただけよ。それよりこの状況は何?」


 彼女は眉間に皺を寄せた表情でこちらを見てくる。そして留美が返事を返す。


「南美さんと私でミー兄を起こしに行ったのよ!」

「……え? たったそれだけ?」

「えぇ、そうよ!」

「……」


 佳純はこちらをじろじろと見て、しばらくキョトンとする。


「…そう、分かったわ。それで姉さんは今からどうするの?」

「え、……もう登校するまでは自分の部屋にいるつもりよ」

「そう、なら部屋に戻りましょう」

「え、えぇ……」

「さ、行って行ってっ」


 留美は煙たく言って、南美と佳純はこの部屋から出て行く。そして僕はちらっとその方向を見ると、佳純と目が合った。しかし彼女のその目はさっきのじろじろと見た目とは明らかに違う、なにやら煮えたぎる怒りのようなものがある目だった。

(なんだったんだろう。あの目は……?)

 そしてご飯を食べた後に服を着ながら、脳裏に焼き付いた佳純の目を思い出す。


 なにか前にもあんな目を見たような……


 しかし一向にどこで見たかを思い出せない。う~ん、と悩んでいると、ドアの向こうから留美の声が聞こえる。


「ミー兄、何してるのー? 早くしないと遅刻するよー」

「え? あぁ、分かった」


 そして服を着替えて、外を出ると、結美、南美、佳純がまだこの日差しの熱い中、汗を垂らして待ってくれていた。


「もうっミー君、お・そ・い!」

「そうですよー。年頃のレディを日差しの強い所でこんなに待たせては日焼けにさせてしまいますよ」

「あらあら、光範君。これではダメですね」


 僕は急いで3人に謝り、そして4人一緒に登校した。男1人に女4人、一見羨ましいように見えるかもしれないが、周りからの目線や、南美、留美、結美からの好意の圧に囲まれて、もう僕はかなり萎縮している。


「あら、佳純どうしたの? そんなに距離をとって?」

「ん? いや、それは気にしないで」


 近くから南美の優しい声を耳にしながら、ミンミンゼミの羽の音が微かに聞こえる。


「で、昨日はどうだったんだよ?」


 席に着くと、開口一番にそう言ってくる腐れ縁の優二がニヤニヤして僕の机の上に座りにくる。


「なにが?」

「とぼけるなって。上村・妹のことだよ」

「別段、何もなかったが……」

「……ふーん、そうか。つまんね」


 そう言い放った親友はそそくさと自分の席へと向かった。

 なんだ、一体?

 そしていつものように授業を受ける。退屈だな~と思いながら、しばらく窓から外を覗く。もう夏も終わりだなと思い耽っていると、なにやら目線を感じた。ふいっと周りを見たが、誰とも目が合わなかった。

(気のせいか…)

 そして昼休みになり、今日は久しぶりに優二と二人で飯を食べながら話をする。


「え!? また振った~~?」

「おん」

「これで何人目だよ?」

「んー、いちいち数えてない」

「まじかよ」

「おん」


 そんな親友の告白されまくり話を聞きながら、二人で話が盛り上がる。


「ったく、これだから優二は……!?」


 そしてまた誰かの目線を感じ、僕はすぐに周りを見回した。しかし授業の時と同じで誰とも目は合わなかった。


「ん? どうかしたか?」

「いや……、別に……」


 なんだろう。少し疲れているのか?

 そして放課後になり、僕は南美と佳純と一緒に帰る。


「……佳純、貴女部活は入らないの?」

「それより姉さんこそ部活はどうなの? 向こうの学校にいた時は、剣道部に入っていたでしょ?」

「今の私は……、光範様と1秒でも一緒にいたいから……」

「……」


 南美は少し目線を落として、照れながら言うから、僕まで恥ずかしくなる。


「ふーん、そう……」


 佳純の少し寂しげ声が後ろから聞こえてきた。

 なんだろう。なんかカオスな空気になったな。何か話さねば……、あっ。


「そう言えば今日、授業中や昼休みの時になんか誰かの目線を感じたんだ」

「え?」

「けど振り向いても誰とも目が合わなくてさ、気のせいなのかな~なーんて」

「…ヤダッ。……気づいてたんですか?」

「え?」

「実は私、ちらちらと光範様のことずっと見てました……」

「え? そうなの?」

「はい。なんかボケ~としてまったく気づいてなさそうでしたが、ちゃんと気づいてらしたんですね」

「なんだ~、そうだったのかー」


 良かった~。てっきり疲れてたのかと思ってた。

 僕はそう思い直し、すっかり安心しきっていた。

久しぶりの投稿です。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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