佳純、四人と邂逅す
佳純が4人と関わります
ついに30話です!!
「じゃあ、上村はあそこの空いてる席に行ってくれ」
「はい」
教卓から降りた佳純はお淑やかな動きで席に向かった。そして僕はふと南美の顔を見ると、ただ茫然としているだけだった。
朝のSHRが終わると、生徒からの恒例行事が始まる。
「上村さんってやっぱり上村南美さんの双子なの!?」
「上村さんって彼氏いる!?」
「やっぱり貴女も岸田君の許嫁!?」
「いえ、私はー……」
クラスのみんなの止めどなく続く質問に彼女も大変だろうが、出来る限りしっかりと答えてあげている感じだ。
なんだ……、なーちゃんの話からかなり警戒していたが、それなりに良い子みたいじゃないか。
「み、光範様……」
南美がかなり声を震わせながら僕の名前を呼ぶ。
「どうしたなーちゃん?」
「どうしたのでしょうか佳純は……。何か悪い物でも食べたのでしょうか……?? 全然あの子らしくないです……。前までは明るく元気だったんですけど、急に大人っぽくして一体どうしたのでしょう……?」
「まぁ、人は何がきっかけで変わるか分からないものさ」
「それはそうですが……」
そして僕はその人の集まりの方を見ていると、ふと佳純と目が合った。そしたら彼女は僕に優しい笑顔を向けて、僕はドキッとする。なぜならその僕に向けてくる笑顔がまるで……、
「…どうしたんですか光範様。そんな驚いた顔して……?」
「え? いや、別に……?」
……南美そっくりなのだ。
さて昼休みになり、集まりが少し落ち着いてきた時に南美は佳純を例の人がまったく通らない1階の外を通る廊下の死角場所に呼び出す。
「どうしたの佳純? そんなにきっちりして? 貴女らしくないわよ。何かあったの?」
「ん? いや、大したことじゃないから、そんな深刻そうな顔しないで?」
「……」
「それより、光範君……ですよね? 久しぶりですね、私のこと覚えてますか?」
やはりこの質問が来た。彼女に対して記憶や面影はあまりないが、しかしここで覚えてない……と言ってしまったら失礼だろう。
「お、覚えているさ」
「え? そうなの……?」
「え?」
なんだ? 少し驚いた顔をしたような……。
「いえ、光範様は貴女のことこれっぽっちも覚えてなかったわっ」
えー!? なーちゃん、何言ってくれてんの!!? せっかく誤魔化して話を流そうとしたのに! しかもなんかほっぺ膨らましてるしっ。
「……そっ……ですか。残念です……」
佳純はシュンとした顔になる。ほらー、やっぱそうなるじゃん!?
「へー、貴女が佳純さん?」
と、結美に呼ばれてここに来た留美が問う。
「え? 貴女達は?」
「私はミー兄とただならぬ関係の義妹の岸田留美よ」
「え?」
「私もミー君とはもうただならない幼馴染の吉田結美よ!」
「お、おい。お前達……!」
「……」
二人は少し自慢そうに言う。おいおい、お前らことを荒立たせるなっ! ほらー、彼女はキョトンとして…………えっ、いま少しだけ口角上がらなかった……か?
「ふーん、姉さんという許嫁がありながら、そんなことを……。光範君、なかなか隅に置けませんねー」
そして笑顔の顔をした彼女はかがり火のごとく、静かにしかし熱い怒りの炎を奥から燃やしていく。
「で? それよりどうしてわざわざこの高校に転校してきたの?」
南美は佳純に少し問い詰める様子で訊く。
「え? 姉さんと一緒の高校に行きたかったのに、そんなキツく言わないで……」
「佳純……?」
彼女は少し悲しそうな顔をして、下にうつむきながらしょぼんとする。
「……あ、ごめんね佳純。そんなつもりじゃないの。ただ……貴女のあまりの変わりように動揺して、……何かあるんじゃないかと疑ってしまって……」
南美は佳純に近寄り温かく抱きしめる。
「ううん。大丈夫よ、姉さん……」
そして昼ご飯を終え、時間は過ぎ放課後。僕は南美と佳純と一緒に下校する。
「で? なんで昨日はうちに泊まらなかったの?」
「そりゃあ姉さんを驚かそうと思って」
「あ、そうだったんだ~」
二人は笑いながら仲良く話している。驚かそうと考えるなんて、やっぱり双子だな~。考え方がそっくりだっ。
僕は二人の雰囲気を見ながら楽しんだ。
「で、荷物はどうしたの?」
「もう、姉さんのアパートに届いたんじゃないかな?」
「あら、そうなんだ。じゃあ今日からうちに暮らすのね!」
「まぁ、そうね。……ちょっと気になることが出来たしっ」
「?」
彼女は微笑みながらそう不思議な言い回しをして、僕の方をちらっと見た。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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