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引っ越し

一緒に……!?


3話です

 放課後、部活の始まる(結美が部活に入っている)前に僕達3人は南美に連れられて校舎裏に向かった。


「ここならそんなに人気がなさそうだわ」

「こんな所に連れて来て話って何?」

「そうね、他愛ない話なら興ざめだわ」

「別に貴女達に話はないのだけれど……」

「なんですって!?」

「幼馴染として知るのは当然の権利よ」

「……で、なーちゃん話って?」

「……でも」

「絶対この二人は話を聞かないと、引っ込まないからさぁ。話せる範囲で良いから」

「……分かりました。ではお話します」

「うん」

「元々(わたくし)と光範様は小さい時から親に連れられて遊んで参りましたが、真美子様(光範の母)が亡くらられてからは、なかなか会えずしまいになりました。このままだと私達の“許婚”との関係が怪しくなると思ったので、一念発起してもう一度許婚として光範様と一緒にいる為にこちらに引っ越して参りましたの」

「なーちゃん……」

「それに……純のこと……るし……」

「ん? 何て?」

「だからですね光範様」

「ん?」

「これから一緒に住みますので宜しくお願いします」

「へ……一緒に住むって……?」

「あら、聞いてないんですか? 実は……」

「へ?」


 まだ少しだけ肌寒い夜を迎える時、その頃になると親父が帰ってきて上村家との話で決まった事の顛末を訊いた。


「え!? 僕の部屋で住むことに決まったあー!?」

「あぁ、義文(南美の父)とはそれで話がついた。やはり父親として女の子の独り暮らしは心配なんだろう」

「それはそうだけど……」


 確かにそうかもだが、それじゃあ僕のプライベート時間がなくなるじゃないか!? いくら許婚でもそれは……なかなかにきつい。いやそれより……、


「お義父さん、どうしてそうなるの!?」

「おじさんそれはいくらなんでもどうかと思うわ!」


 部活が終わった時間とはいえ、なんで結美までウチに来て話に入っているんだ?


「だってそりゃあ、家には母さんや留美ちゃんがいるからこちらの内容のを関わらすのは幾分申し訳ない。しかしだからといって折角決意してこっちに来てくれた南美ちゃんを住まわせない訳にはいかない。なら光範の部屋で住まわせるのはどうだろうということになったんだ。まぁ、言ってみれば光範と南美ちゃんのミニ所帯だな」

「いやいや、だからってあの部屋二人は狭すぎないか!?」

「なんだ光範? こんな可愛い女の子と狭い空間にいられて嬉しくないのか?」

「え……それは……」

「光範様、お嫌なんですか?」

「……え」


 なーちゃんめちゃくちゃ涙目になってるじゃん。いや、別になーちゃんと過ごすのは嫌じゃないよ? 嫌じゃないけど、ほら思春期の男子には自分の部屋で色々とやりたいことがあるの!!


「……そういえば転校するまで、なーちゃんはどこで暮らしてたんだ?」

「え? お前を驚かそうと思って少し間ホテルに泊まってもらってた」


 やることがお金あるな……。

 そしてなにやら後ろから気配を感じて振り向くと、留美と結美が震えていた。


「私は大反対! ママはどう言ったか知らないけど、見ず知らずの女と過ごすなんて真っ平ごめんよ!」

「私も反対ね! 一緒に過ごしたことのない女にいきなりミー君を任せられないわ!」


 二人はかなり怒りを露わにしながら、親父に噛み付く。しかも凄い形相になり、まるで夜叉だ。それにしても人の親父を捕まえてよくそこまで言えるものだ。少し感心する。というか彼女達の意見がここまで一致するのは初めて見るかもしれない。


「しかし彼女はほとんど知らない土地に来たんだ。そんな彼女を一人で住まわすのはどうかと思うぞ?」

「うん……それは……」

「……」

「光範はどうだ。お前はどう思う?」

「僕は……」


 そして数日後、南美は僕の部屋から出ることになった。やはり一緒に暮らすのはまだ少し早いという僕の結論だ。じゃあ彼女は一体どこに住むことになったのか。

 ウチより遠くに住むようになるのは流石に僕も忍びない。だから近くにしようと物件を探していると、なんとその周辺に空いている部屋が見つかった。……というかその場所はウチの部屋の隣の部屋だったのだ。灯台下暗しとはまさにこのことだと思う。


「短い間でしたがお世話になりました」

「うん、また……てか隣だけどね」

「光範様……」

「ん? 何?」

「……どうして引っ越しの時まで結美さんがいますの?」

「さあ、それは僕も訊きたい……」

「そうですか……では私は一旦これにて」


 彼女は軽くペコリとお辞儀をして、旅行用のスーツケースを持って隣の部屋へと向かった。

 ふう、これで部屋には自分だけの空間が出来る。これで数日間の禁欲生活ともおさらばだ……そう思っていた。


「で、なんでなーちゃんがまだ僕の部屋にいるんだ!?」

「許婚ですもの。基本的に夜以外は一緒に過ごしたいです」

「それは……確かにそうだけど……」

「それではお茶をお入れしてきますね。今日は玄米茶です」

「……あ、うん。ありがとう」


 はぁ~、折角僕が賢者(一人だけ)になれる時間が出来たと思ったのに~、もう少し辛抱かよーっ!

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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