双子の妹・佳純登場す
ついに佳純が登場します
29話です
ピピピピピッ。7:00に設定した時計のアラームが鳴る。そしたらバンッとためらいなく僕の部屋のドアが開き、
「おはようございます(おはよー)、光範様(ミー兄~)!」
南美と留美が元気よく挨拶する。僕はまだ寝ぼけた状態で、もう既に制服に着替えた二人を眺めてから言う。
「……おはよー」
それから家族と朝飯を食べて、制服に着替える。まだ夏服だが僕はもうネクタイを締める。
「よし、行こう」
「ミー兄待って」
「?」
留美が何をするかと思ったら、僕の曲がったネクタイを直してくれた。義妹というより彼女みたいなことをしてくる妹に僕はついドキッとする。
「もう、ちゃんとしなきゃ駄目よー」
「お、おう……」
そして玄関を出ると、相変わらず言い合っている南美と結美がいる。
「だからあんたは……、あ、おはよーミー君」
「おはよー、朝から元気だな~」
「えー、そんなことないよ。小うるさいのがいるだけ」
「誰が小うるさいですって!?」
「まー、なーちゃんも朝からそう言わずに、学校に行こう」
「~~……はい、光範様がそう言うのであれば……」
そして僕達は学校に向かう。なんか4人で登校するとか久しぶりで、ちょっと新鮮な気分になった。配置としては反時計回りに結美が左側、南美が真後ろ、留美が右側付近を歩く。それぞれが僕と絶妙な距離感を保つ。
しかしこの距離感で今までなかった感情が芽生えている。それは3人を女として意識していることだ。ゆえにどうなるか。
嬉しさと恐怖がいりまじった謎の緊張が走る。
例えば結美と手をつないだとしよう。
「結美……」
と言いながらそっと彼女の手を握る。彼女は当然恥じらいながらも喜ぶだろう。しかし後の二人はどうなるか。想像するだけで恐ろしい。チビリそうだ。
「……ねぇ、ミー君聞いてる?」
話どころじゃないのだよ結美君! こっちは死活問題なのだよっ!
「光範様、手が震えてますわよ。何考えているんですか?」
「どうせ、つまらないことじゃない?」
僕なりの生存戦略の話です!
そして学校に着いて留美と別れた後、すっと南美が僕に近づいて小声で言う。
「佳純には気をつけて下さい」
「……」
実は夏休みの朝の散策の時に南美から彼女の話を軽く聞いていた。おじさんからこっちに引っ越すから頼むなという連絡が来たらしい。
「あの子は許嫁というものにものすごい嫌悪感がありまして」
「え?」
「許嫁制度に対して家でもよく父とケンカしておりました」
「そうなんだ……」
「はい。それで『私が許嫁なんだから、関係ないじゃない』って言っても、全然首を縦にふりません。『古い制度だ! 時代錯誤甚だしい』とかなんとか」
「なるほど」
「それに光範様は覚えてないかもしれませんが、子供の頃に彼女は光範様によく意地悪をしたりや難癖つけては突っかかったりしてました」
「そ、そうだっけ?」
「はい。だからおそらくあまり……」
「……快く思ってないと」
「……はい」
そして南美は少し間を置いてから言う。
「そんなに許嫁を嫌がっていたあの子がわざわざこっちに転入するなんて妙なんです!」
「……」
「これは絶対何かあるはずなんです……」
「……」
「だから光範様……」
彼女は僕の手を強く握りながら言った。
「あの子には気をつけて下さい」
◇◇◇
そして僕は自分の席に座りながら回想して今に至る。
「…………気をつけろって言われても何を気をつけたら良いか、まったく分から……」
「何を気をつけろって?」
「わっ! びっくりしたっ。……なんだ優二か。驚かすなよ」
「何に驚いてんだ? おい、それより聞いたか? このクラスにまた転校生が来るらしいぞ」
僕はギクッとする。このクラスに来るのか……?
「その情報は確かなのか?」
「あぁ、信用出来る情報屋から聞いたから間違いない」
そもそもいったい誰だよそいつ。
「それで、お前が言うぐらいなんだから女なんだろ?」
「あぁ、すっげー美人さんらしい。しかもかなり大人びて清楚系らしい」
「清楚系?」
南美の話からだと佳純のイメージにはそんな感じが一つもなかった。
じゃあ佳純ではないのか?
「他に情報は?」
「え? あぁ、なんか上村さんにかなり顔がそっくりとか言ってたな」
僕はドクンとする。
え、じゃあ……、
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン……。
「おーい、席に着けー」
チャイムと同時に担任の松崎がクラスに入ってくる。
「じゃあいきなりだが転校生を紹介する。ほら、入ってきなさい」
そしてガラッとドアが開くと、一人の美少女が入ってきた。教卓に上がる彼女は背中まで伸びた綺麗な黒髪に、目はきりっとしつつもどこか品のある感じだった。それに髪の長さといい、眉毛の長さといい、服装の整え方といい、そうそれはまるで……、
「千葉県から来たそうだ。皆仲良くやってくれ」
「皆さん初めまして、私は上村佳純って言います。宜しくお願いします」
……南美がもう一人いるかのようだった。
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